
ある雨の日のこと。
僕はにわか雨にあった。
シャッターが閉まったままのお店の軒先を駆りて雨宿り。
5、6分ほどして小ぶりになってきたので、
行こうかどうかと思案していると、
道路を挟んだ向かいの家から初老の男性が現われた。
「雨宿りですか?」
白髪を短く刈り込んで、
大柄で落ち着いた雰囲気の男性だった。
右手で傘を差し、左手にもう1本の傘を持っている。
「これ使って下さい。差し上げますから、どうそ持って行って下さい」
こんなことってあるのだろうかって思った。
「このボタン押したら開きますから」
ジャンプ傘の使い方まで教えてくれる。
「100均の安物やから、持って行って下さい」
返しに来なくていいよってことなのだろう。
僕は何度かお礼を言って、その場を去った。
歩き出して数分で雨は止んでしまった。
その夜、大阪女優の会2014『ヒロシマ』という朗読劇を観劇した。
朗読に耳を傾けながら、
当時のヒロシマのことを思いながら、
なぜか頂いた傘のことを何度も何度も思い出していた。
僕は今ある日常を歌や芝居や短歌にして、出来るだけそのまま綴っていこうと思った。