田中悟の片道旅団

大阪で芝居と弾き語りをしています。

ノルウェイのエガちゃん

2025年01月23日 | 日記
安いなと思った。
それは単純に金額が低いとか可処分所得に対して余裕があるという意味ではない。
完成までの時間、能力、労力、関わった人の数、
流通における営業力、経費、エネルギー、
小売店での販売努力、
などなど。
それら費やされた全てのエネルギーを想像すると「安い」と思ったのだ。
それは書籍に対してである。
スーパーやコンビニなど身近な所で感じる物価高。それに比べて本の適正価格は安すぎるのではないかと思った。とは言えこれ以上高くなると購入を躊躇ってしまうだろう。というか買わなくなるだろう。申し訳ないけれど。

そんなことをあらためて思ったのは、そもそも本を読む習慣がない自分が珍しく書店に足を運び久しぶりに書籍を購入したからだ。先日書いたブログ『知らない街』の中で触れていた「ネットで見つけた面白そうな本屋さん」に行ったのがきっかけだった。
お正月が終わって最初の週末。「あの本屋に行ってみようと」突然思いついて出掛けた。出不精の自分が衝動的に出掛けるのも珍しいことだったし、何より目的地が書店というのが珍しかった。
昨年末より諸事情で生活に少し変化が出て家に居る時間がやや増えることになり「たまには本でも読んでみようかな」なんて思ったのも一因であったがそれだけではない。その書店の店主さんがユニークな方で「こんな本を探してるんですけど」と言うとお勧めの本を紹介してくれるとのことだった。一応これでも多少は恥かしがり屋で遠慮屋なつもりでいるがネットで拝見する限りとても人の良い店主さんに思えたので一度行ってみようという気になれたのだった。
とは言えやはりお店の前まで来ると緊張してしまう。何気なく立ち寄るのではなくそれなりのミッションを自分に課していたからだ。ミッションなんて言うとほんと大袈裟なんだけど。何気なく入って、何気なく本を物色して、やっぱり帰ろうと思えば何も買わず帰ればいいし、欲しい本があれば買えばいいし、話し掛けられそうだったら店主さんに声を掛けてみればいい。ただそれだけのことだった。

「あの、ネットで拝見したんですけど…」
結局、店に入って数秒で店主さんに話しかけている自分がいた。
ネットで拝見したとおり物腰が柔らかく親切な店主さんだった。
本のこと以外にも色々と話をした。
印象に残ったのは、
「うちは話題の書籍や売れ筋の本を扱ってないんですよ。というか扱えないんですよ。うちみたいな個人経営の本屋にはなかなか卸して貰えなくて。町の小さな本屋はどこも厳しいですし、大型書店でさえも今は厳しい時代ですからね」
「だったら売れ筋の物や地域の人達のニーズに合わすのではなく、私が読んで『これは良い本だ』と思ったものを揃えるようにしたんです。そしたら遠方からわざわざうちに本を買いに来てくれるお客様が増えたんです」
という話しだった。まさに自分がその中の一人だ。

本当はビジネス書が目当てだったし、そのこともちゃんと伝えたのだが、
「うーん、お話を聞いている限りビジネス書よりもヒントになるかなと思う本が今3冊思い浮かんでまして…」
と店主さんの解説とともに推してくださったのが2冊の小説と1冊の詩集だった。なんと大胆なセレクトだろうか。こちらとしても店主さんに本を推薦して貰う為にここまで来たのだから素直にその3冊を購入することにした。1冊が単行本で2冊が文庫本。「本を一度に3冊も買うだなんて自分としてはなんと珍しいことだろうか」と思いつつレジで支払うと思ったよりも金額は大きくなかった。そこで冒頭に書いたように「安いなと」思った次第だ。
とは言え我が懐事情からすると「お正月だしたまにはいっか」な感覚だったけど。

単行本は一気に読めたし、詩集もちょっとだけ読んだ。詩集は日々の気分によってページを開きたいという欲求が高まって少しずつ読むことにした。文庫本の小説はまだ読んでいない。今後の楽しみだ。



それから数日立ったある日。
また本が読みたくなった。お正月に買った文庫本がまだ一冊残っているけど今すぐ読みたいという衝動が湧き上がってきたのだった。それはとある2作の小説。ともに発刊されてから数年立っているので近所の本屋さんにあるかな?とかジュンク堂にでも電話して在庫確認や取り寄せをお願いしようかなと思ってみたり。ここでネットで買う選択が出てこないのが昔の人間というか個人的な性格というか本の購入に慣れていない人って感じだと思った。

「そうや、古本屋に行ってみよう」
と思い近所のブックオフを思い浮かべたけれどネットで調べてみたら昨年夏に閉店していた。やはり書店の経営は厳しいということなんだろう。本を買う習慣があまりなかったので今までは気にかけることもなかった。そう言えばなんばウォークにあった本屋さんもなくなったっけ。
(※出版社の「業績悪化」企業 過去最大の66.1% 物流費の高騰が響く YAHOO! NEWS 2025.1.23 )

それでも近所に別の書店がある。営業時間を調べるとわりと遅くまでやっていたので夜になってから散歩がてら出掛けてみることにした。



結局お目当ての小説は置いてなかったが、エガちゃんねるのDこと藤野義明さんの『下品の流儀』の表紙が目に飛び込んで来た。「これは運命!」と思い手に取った。前作『エガちゃんねる革命』 は読んでいない。順序が逆になるがまたいずれ読みたい。

『下品の流儀』を手にしながらもう少しだけ本棚を物色しようと店内を歩いていたら、今度はなぜか『ノルウェイの森』の表紙が目に飛び込んで来た。なぜこの本に自分が反応したのかが分らない。タイトルぐらいなら何となく知っている。『村上春樹』さんも名前だけは何となく知っているというぐらいの認識しかない。知り合いの中に何人かハルキストはいるが小説を読むことのない自分にとっては話しを聞いてもちんぷんかんぷんだし、そもそも誰も僕にそんな話しをしてこない。
買おうかどうしようか考えるよりも先に手に取っていた。不思議だ。こんなこともあるのか。まさか自分が本の衝動買いをするだなんて。結局また単行本1冊と文庫本2冊を購入することに。無駄遣いにならぬようちゃんと読まねば。


それにしてもエガちゃんと村上春樹。
我ながらなんと大胆なセレクトだろうか。






ちなみに下の写真が最初のお店で店主さんに推薦して頂いた本です。






【ちょいだし!こんぶ店長】vol.1 お手紙を書く編~商品の発送に必ず手紙をつける理由とは~


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