「お~い! お~い!」階下から健さんの呼ぶ声がする。
寝ぼけまなこで、時計を見たら5時半過ぎ・・・
これ以上ない! と言うぐらい不機嫌な声で
「何?」と聞き返した。
「今は、夕方か? 朝か?」
「はあぁ? 朝よ! 朝! まだ6時前だわ!」
「今日は何日?」とまた、健さんが聞き返す。
「7月1日の朝、6時前!」怒鳴り返すわたし・・・
それっきり、健さんの声は止んだ。
寝ぼけたのか、はたまた昨晩の酔いが残っているのか
それとも認知症の兆しなのか定かではないが
健さんは、夕方の6時前だと勘違いしたようだ。
八新は夕方の6時開店である。
夕方の6時だったら、それこそ大変だ。
ま~ね・・・わたしも昼寝のあとで、勘違いすることが
あるから、今日のところは広~い心で笑って許そう。
お昼前に、滋賀県へ鮎を買いに行こうと誘われて
健さんとお出かけ。
帰り道、新道の「孫兵衛茶屋」でランチをすることになった。
もちろん、今日のランチは健さんのおごりである。
さて、この茶屋には「福滋県境 孫兵衛茶屋」と書かれた柱と並んで
「芭蕉翁と西村家」と題する碑がある。
「おくのほそ道」素龍清書本として知られる、
重要文化財「奥の細道元禄七年初夏素龍書写奥書」を
代々守り伝えてきたのが西村家である。
その「孫兵衛茶屋」の店先や店内には色鮮やかな紫陽花が
並んでいた。
笑って許したおかげで、
おいしいランチと、むねキュン!な紫陽花に出会えて
幸せな午後になった。
笑う門には福来る・・・