2009年1月21日(水曜日)
こちらが演説の全文です。
http://mainichi.jp/select/today/news/m20090121k0000m030175000c.html
【オバマ大統領就任演説:全文】
オバマ米新大統領の就任演説の草稿全文は次の通り。
市民の皆さん
私は今日、厳粛な思いで任務を前にし、
皆さんの信頼に感謝し、我々の祖先が払った犠牲を
心にとめて、この場に立っている。
ブッシュ大統領が我が国に果たした貢献と、
政権移行期間に示してくれた寛容さと協力に感謝する。
これまで、44人の米国人が大統領としての宣誓を行った。
その言葉は、繁栄の波と平和の安定とともに
語られることもあったが、暗雲がたれ込め、
嵐が吹きすさぶただ中で行われた宣誓もあった。
こうした試練の時に米国が前進を続けられたのは、
政府高官の技量と展望だけでなく、我々国民が、
先達の理想と、建国の文書に忠実でありつづけたためでもある。
それが我々の伝統だった。
我々の世代にとっても、そうありつづける。
だれもが知る通り、我々は重大な危機にある。
わが祖国は(イランやアフガニスタンで)戦争状況にあり、
敵は憎悪と暴力のネットワークを持っている。
経済状況も悪く、その原因は一部の人々の
貪欲(どんよく)さと無責任さにあるものの、
我々はその対処法にも誤り、
次世代への準備にも失敗している。
多くの人々が家を職を失い、
ビジネスもひどい状況になっている。
健康保険制度もカネがかかりすぎ、
多くの学校(制度)も失敗した。
毎日のように、エネルギーの使い方が地球を危険に
陥れている証拠も挙がっている。
データや統計が危機を示す。
全米で信頼が失われ、アメリカの没落は必然で、
次の世代は多くを望めない、という恐れがまん延している。
今日、私は我々が直面している試練は現実のものだ、
と言いたい。
試練は数多く、そして深刻なものだ。
短期間では解決できない。
だが知るべきなのは、アメリカは
いつか克服するということだ。
この日に我々が集ったのは、恐れではなく、
希望を選んだためで、争いの代わりに団結を選んだからだ。
この日、我々は実行されない約束や悲しみを終わらせ、
これまで使い果たされ、そして政治を長いこと
混乱させてきた教義などをやめる。
それを宣言するためにやって来た。
我々はいまだ若い国家だ。
だが、聖書は子供じみたことを
やめる時が来たと指摘している。
我々が良い歴史を選択してきた不滅の精神を
もう一度確認する時が来た。
我々は今日、何世代もわたって受け継がれてきた
我々の高貴な考え方と、我々の天から与えられた才能を、
将来に受け継ぐことを再確認するためにも集った。
それはすべての人は平等で、自由で、すべての人々が
最大限の幸福を享受できるという神の確約でもある。
それは心の弱い、仕事より遊びを好み、
富と名声からの喜びのみを求める人々の道ではなかった。
むしろ、リスクを選ぶ人、実行の人、創造の人の道だ。
恵まれた人の場合もあるが、
多くはその仕事については知られず、
長く困難な道のりを歩み、
我々を繁栄と自由へと運んでくれた人々だ。
我々にとって、彼らは、ないに等しい荷物をまとめ、
海を渡って新しい生活を探した人々だ。
我々にとって、彼らは額に汗して働き、西部に住み着き、
むち打ちに耐え、硬い土地を耕してきた人々だ。
我々にとって、彼らは(米独立戦争の戦場の)
コンコードや(南北戦争の)ゲティズバーグ、
(第二次世界大戦の)ノルマンディーや
(ベトナムの)ケサンで戦い、死んだ人々だ。
歴史の中で繰り返しこうした男女がもがき、犠牲を払い、
我々がよりよい生活を送れるように苦労してきた。
彼らは、米国が我々の個人的な希望の集大成よりも
大きい存在だと思っていた。
生まれや富、党派の違いより大きいと思っていたのだ。
この旅を今日、我々は続けている。
我々は今でも地上で最も繁栄し強力な国だ。
我々の労働者は今回の危機が始まった時と同様、
生産性は高い。
発明心に富み、商品やサービスは先週、先月、
昨年と同様に求められている。
我々の能力は落ちていない。
だが、過去に固執し、狭い利益しか守らず、
面倒な決定は後回しにする時代は終わった。
今日からは、我々は立ち上がり、ほこりを払い、
アメリカ再創造の仕事に取りかからねばならない。
どこを見回してもすべき仕事がある。
経済状況は、大胆で迅速な行動を求めている。
我々は新しい職場の創造だけでなく、
成長のため新しい基盤を作らねばならない。
我々は道路や橋、電線やデジタル通信網をつくり、
我々の商業を支え、我々の結びつきを強めなければならない。
我々は科学を本来あるべきレベルに再興し、
技術を高めて医療の質を引き上げるとともにコストを下げる。
太陽、風や土壌を使って我々の自動車の燃料とし、
工場を動かす。
我々の学校や単科大、大学を新たな時代の
要請にあわせるようにする。
これらすべてが我々には可能だ。
これらすべてを我々は実行するのだ。
我々の野望の大きさに疑問をはさむ人もいる。
我々のシステムでは大きすぎる計画は
達成できないという人々だ。
彼らは覚えていないのだ。
彼らはすでにこの国が成し遂げたことを忘れているのだ。
想像力が共通の目的に出合った時、
必要が勇気と出合った時、
自由な男女に達成できることを忘れているのだ。
皮肉屋が理解できないのは、
彼らがよって立つ地面が動いたということだ。
我々をあまりに長期間、消耗させた味気ない
政治談議はもはや意味を持たない。
今日、我々が問うているのは、
政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、
機能しているかどうかだ。
家庭が人並みの収入を得られるよう助けているか、
威厳をもって引退できるよう配慮しているかどうかだ。
答えが「イエス」の施策は継続する。
「ノー」の施策は廃止する。
公金を預かる我々は、説明責任を果たさなければならない。
適切に支出し、悪い習慣を改め、
誰からも見えるように業務を行う。
それによって初めて、国民と政府の間の
重要な信頼を回復できる。
市場が正しいか悪かも、我々にとっての問題ではない。
富を生み出し、自由を拡大する市場の
力は比肩するものがない。
しかし、今回の金融危機は、注意深い監視が
なされなければ、市場は制御不能になり、
豊かな者のみを優遇する国は長く
繁栄することはできないことを我々に気付かせた。
我々の経済の成功は国内総生産の大きさだけでなく、
繁栄が享受される範囲や、機会を望むすべての人に
広げる能力にかかってきた。
慈善としてではなく、公共の利益に通じる
最も確実な道としてだ。
我々の共同防衛に関しては、我々の理想と安全の
どちらかを選ぶという間違った考えを拒絶する。
建国の父らは、想像も出来ないような危険に直面しながら、
法の支配と人権を確約する憲章を起草し、
それは何世代もの血に受け継がれてきた。
これらの理想はいまだに世界を照らし、
我々は私利のためにこれらをあきらめることはない。
それゆえに、我々を今日、他国の国民や政府に対し、
巨大な都市から、私の父が生まれたような最も小さな村まで、
米国はすべての国々とすべての男女、
そして平和で尊厳ある将来を求める子どもの友人であり、
もう一度、指導力を発揮する用意が
あることを知ってもらおう。
先人がミサイルや戦車を使うのではなく、
信念と確固たる同盟をもってファシズムや共産主義に
勇敢に立ち向かったことを思い出そう。
先人は軍事力だけが我々を守るのではないことや、
またそれを自由に使えないことを知っていた。
代わりに、彼らは慎重にそれを使うことで力が増し、
安全は目的の正しさから発することを知っていた。
我々はこの遺産を引き継ぐ。
さらなる努力に加えて、これらの理念に再び導かれ、
新しい脅威に対抗できる。
国家間のさらなる協力と理解を得る努力だ。
我々は責任を持ってイラクから撤退し、
イラクの人々に国の将来を任せる。
そしてアフガンでの平和を取り戻す。
古くからの友人とかつての敵とともに、
核の脅威を減らすために絶えず努力する。
さらに地球の温暖化とも戦う。
我々の生き方について謝罪はしないし、
自己弁護もしない。
無実な人々を殺したり、
脅迫で自己の利益を図る者に対し、告げる。
我々の意思の方が強く、
我々の意思を曲げることはできない。
我々はあなたたちより長く生き、
そしてあなたたちを打ち負かす。
我々の多様な出自は強みであり、弱みではない。
キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、
そして無宗教者の国だ。
地球上の津々浦々を源泉とする、
あらゆる言語と文化で形作られている。
内戦(南北戦争)や人種差別という苦い経験もしたが、
その暗い時代をへて、我々はより強くなり、
きずなも深くなった。
かつての憎しみはいずれ消え、
我々を分け隔てた壁はいずれ消える。
世界が小さくなるにつれ、
我々が共通に持つ人類愛が出現する。
そしてアメリカは平和の時代をもたらす役割を果たす。
イスラム世界には、共に歩む方法を新たに探す。
共通理解を進め、互いに敬意を持つ。
対立をあおったり、国内の社会問題が生じた責任を
西側世界に押しつける指導者たちは、
あなたが何を壊すかでなく、何を築けるかで、
国民が評価することを知るべきだ。
腐敗、策略、口封じで権力にしがみつく指導者たちは
大きな過ちを犯していることを知るべきだ。
しかし、こぶしを握っているその手を開くならば、
我々も手を差し伸べる。
貧しい国々の人々には我々が寄り添うことを約束する。
農地が豊かになり、きれいな水が流れるようにし、
空腹を満たすとともに、飢えた心も満たす。
そして我々のように比較的豊かな国々は、
国境の外での苦しみを無視したり、
影響を気にとめず、地球資源を浪費できない。
世界は既に変革し、
我々はそれに合わせて変わらなければならない。
我々の進む道を熟慮しながらも、今まさに、
遠く離れた砂漠や山々で警戒に当たる勇敢な
アメリカ人へ謙虚に、そして感謝の念を持ち、
思いをはせる。
彼らは今日、我々に教訓を与えてくれる。
アーリントン国立墓地に眠る英雄たちのように。
彼らが自由の守護者だからでなく、
彼らには奉仕の精神があり、自分たち自身よりも
偉大なものが存在し、それに意味を見いだすことが
できるからこそ、彼らに敬意を表す。
そして、この歴史的な瞬間、こうした精神こそを
我々がみな共有しなければいけない。
政府に何ができ、何をしなければならないかは、
究極的には米国民の信念と決意が決定する。
それは、堤防が決壊した時に見知らぬ人をも
招き入れる親切や、友人が仕事を失うことになるよりも、
自分の労働時間を削ってでも仕事を分け合おう
という労働者たちの無私無欲なのだ。
こうして最も暗い時を切り抜けることができる。
それは煙に満ちた階段を駆け上がる消防士の勇気や、
子どもを育てる親たちの意志が、
最終的に我々の運命を決定付ける。
我々の挑戦は新しい。
我々が成功するかどうかは、労働と誠実さ、勇気、
フェアプレー、忍耐、好奇心などにかかっている。
古くから言われていることだが、それは真実でもある。
それは歴史を進歩させた静かな力だった。
今求められているのは、こうした真理への回帰だ。
新時代への責任だ。
これが我々の自信の源泉だ。
神が、未知の運命を自らの手で形作るよう、
我々に求めたものだ。
なぜ男性も女性も子供たちも、どのような人種、
宗教の人々も、こうして就任式に
集まることができるのか。
なぜ約60年前はレストランで差別された人々が、
こうして宣誓式に立ち会うことができるのか。
これこそが、自由の意味なのだ。
我々が誰なのか、我々がどれほど旅してきたか。
今日という日を、それを記憶に刻む日にしよう。
アメリカ建国の年、最も寒かった時、
愛国者たちは氷で覆われた川岸で、
キャンプファイヤーの火のそばでうずくまった。
首都は見捨てられ、敵は進軍し、雪は血で染まった。
独立革命が本当に実現するか不確かな時、
建国の父たちは、これらの言葉を
きちんと読むよう求めたのだ。
真冬の底にある未来の世界が、
何もなくても希望と美徳が生き残るように、
共通の脅威に恐れを抱く都市や地方が前に進み、
それに巡り合うようにしよう。
アメリカ。
共通の危険に我々が直面し、この困難な冬に、
これら永遠の言葉を忘れないでいよう。
希望と美徳をもって、
氷のような冷たい流れに勇敢に立ち向かおう。
そしてどんな嵐が来ようとも耐えよう。
将来、我々が試された時に旅を終わらせることを拒み、
たじろぐことも後戻りすることもしなかったと
我々の子孫に言われるようにしよう。
我々の地平線を見据えた目と神の恩恵によって、
自由の偉大な贈り物を前に進め、
それを未来の世代に安全に届けたのだということを。