2010年4月30日(金曜日)
いったい、どれぐらいの参加者が集まるのか・・・
不安が交差する中、お昼前には10人あまりの方が
打ち合わせのため集合。
第1部の報告者グループや会場設営、
録音やタイムキーパーなどのスタッフごとにわかれて
手際よく、準備が始まりました。
わたしは、第1部の報告と第2部のパネルディスカッションの
コーディネーターも担当することになっており、
少々、緊張ぎみ・・・
第1部と2部のあいだに、参加者のみなさんに質問を書いてもらい
それをもとにパネルディスカッションを進めることに
なっています。
メーリングリストだけでのつながりで全国各地で
風車による被害をこうむっておられる住民の方々と
コンタクトを取りあい、準備を進めてきた全国集会。
なんと! 予想以上の参加者が会場いっぱいに
あふれかえり、用意したイスが足らなくなるほど!
100部用意した資料もあっというまに、
足りなくなったそうです。
NHKはじめ、マスコミの方も大勢、取材にこられました。
低周波音の研究と調査を続けてこられ、最近も
著書をだされたばかりの汐見医師も会場に足を運んでくださいました。
定刻どおり始まった第1部では、低周波による被害の
悲惨さがひしひしと伝わってくる報告が相次ぎました。
大河剛さん(愛知県田原市)は
風車から避難する生活を3年も続けています。
マスコミに報道されない被害の状況にも言及されました。
川澄透さん(静岡県東伊豆町)はご高齢にもかかわらず、
熱川風車被害の実態の報告や法整備の問題、地球温暖化に
ついてまで幅広く、熱く語ってくださいました。
大岩康久さん(愛媛県伊方町)はオレンジ農家のかたです。
伊方原発のちかくでエコエネルギー100選に選ばれたところ。
騒音は55デシベル以上というとんでもない数値であるのに
事業者がごまかし建設が進められたそうです。
後藤美智子さん(北海道小樽市)は
小樽の銭函海岸の自然を守るために、風力発電の建設計画を
阻止しようと行政や省庁などに働きかける運動を続けておられます。
ここで、元国会議員の保坂展人さんから
各地を調査してこられた報告や今後どのような運動や
活動を続けていくべきかという貴重な提言が
ありました。
今大地はるみ(福井県敦賀市)・・・わたしは
敦賀市が建設計画を凍結にした経緯、環境審議会の答申、
市長の議会における発言(意見書を出さないと明言)などを
報告しました。
武田恵世さん(三重県名張市)は日本野鳥の会の方です。
97基もの風車が乱立する三重県の青山高原ウインドファームの
実態調査をパワーポイントを使いわかりやすく報告されました。
また、事業者やエネ庁、行政などとのやり取りから
発電しなくても建設するという推進派の魂胆まであきらかに!
6人の報告のあと、長崎・宇久島の有吉医師のからの
ビデオレターは、会場全体に大きな感動を呼び起こしました。
ほぼ時間通りに、1部が終わり、15分の休憩を挟み
第2部が開始。
第1部の報告者の方々にパネラーとなっていただき、
会場との質疑応答のなかで、今わたしたちにできることは何か
今後、どのようにネットワークをひろげ、
運動を進めていくのかという方向性を見出そうというのが
ねらいです。
全体司会担当の藤井さんからマイクを受け取り、
まず、寄せられた質問のなかから、
ひとりで闘っておられる山口県平生町の大田さんに
状況を語っていただきました。
次々とわたしの手元には質問用紙が届けられてきます。
質疑応答の後半には、ぶつり学者の槌田敦先生が
学術会議主催の公開シンポを終えられ、駆けつけてくださいました。
槌田先生には
シロートのわたしたちにも、ウンウンと納得できる
やさしくわかりやすい、
「風力発電は役に立たない!」というお話を
していただきました。
またこのころから、会場の参加者のみなさんの発言が
活発になり、専門的な物理や工学の質問には
槌田先生に答えていただくなど、
思わぬ展開もありました。
なるべく多くのみなさんがたの被害の状況や活動を
お話いただきたいと思いましたが
2時間という限られた時間の中でのディスカッションは
参加者のみなさんにとって不完全燃焼だったかもしれません。
それでも全国各地で風力発電の被害に苦しむ人たちが
お互い、初めて顔をあわせての全国集会は、
次のステップへむけての貴重な一歩となりました。
インターネットを介してのつながりが大きなうねりとなって
今日の集会を成功に導いたものでもあります。
参加してくださったみなさん、
ほんとうにありがとうございました。
そして、明日からは今日までと違うあらたな運動や活動が
全国各地で展開していくことを心より願っております。
最後になりましたが、
山本里子さんが心を込めて読み上げられた
「東京宣言2010」は大きな拍手で採択されたました。
■ 風の心 ■
──風力発電全国情報ネットワーク 東京宣言2010──
20世紀、この国では、数々の間違った政策や
人々の欲望によって、取り返しのつかない
大規模な環境破壊が行われました。
その結果、今の日本には、本来その土地の
潜在自然植生を残した森は0.06%しか残っていません。
日本中に存在する荒れ果てた人工林を元の姿に戻すことは、
もう不可能でしょう。
アイヌの人たちが聖地として代々守り続けた沙流川では、
司法が「違法な建設」と認めた二風谷ダムが、
すでに半分土砂に埋まり、その上に泥水を溜めた姿を晒しています。
こんなことが許されるのだろうか?
なぜそこまで強引に進めなければいけないのか?
周辺住民や、多くの専門家、研究者たちは疑問の声、
生活権をかけた叫びを上げましたが、
国策という巨大な力に阻まれ、国民の多くには
届くことなく、圧殺されてきました。
何が行われたのか。
その結果、どうなったのか。
国民が少しずつ知るようになったのは、
すでに回復不能なまでに環境が破壊された後のことです。
私たちは今、目の前で展開されている風力発電という
国策事業の現状に、過去何度も繰り返されてきた過ちと
同じものを見ています。
「地球温暖化防止」「CO2削減」というスローガンのもと、
巨額の国費を注ぎ込んで進められる大規模風力発電事業は、
本当に公益性の高い、価値のある事業なのでしょうか。
地球環境にとってプラスに働いているのでしょうか。
この国は、前世紀に犯した過ちを、
今も繰り返していないでしょうか。
風が安定せず、中山間地が7割を占める日本列島に、
すでに1500基を超える風力発電用設備が建設されています。
現在の主流は、全高が100メートルを超える、
定格(最大)出力が2000kW、2500kWといった超大型風車です。
すでに建てられた施設には、地元の行政や土地所有者に
適切な説明をせず、「最初に建設ありき」の姿勢で
工事が進められた例が多数あります。
国定公園内に建てたり、水源涵養保安林指定を解除して
森林伐採や地形改変を進めたりしたものもあります。
しかし、これだけの無理をして建設した1500基の発電実績は、
全発電量の1%にもなりません。
用地の選定においても、建設後の運営においても、
すでに様々な問題を露呈しており、しかも、
これらの問題は簡単に修整が効くものではなく、
根本的なものです。
このまま、さらに無理を重ねたとして、
発電実績を数%のレベルまで引き上げることが可能でしょうか。
日本の風力発電は果たしてどれだけの「有効な電力」を
作りだしているでしょうか。
稼働した分、本当に化石燃料の使用が減っているでしょうか。
「風力発電は発電しなくてもいいのです。
補助金をいただけるから作るのです」と言って
はばからない事業者がいます。
故障して長期間止まったまま、中には事実上
修理を放棄されて、ただのオブジェとして
放置された風車もあります。
稼働している風車のそばでは、20Hz以下の
「耳に聞こえない低周波音」が原因と思われる
深刻な健康障害に苦しむ住民がいます。
不正出産や奇形が多発する家畜。
すみかを追われ、里に下りてきて農作物を荒らす野生生物。
羽根に巻き込まれて命を落とす野鳥。
水源が破壊され、涸れたり汚される川や井戸。
こうした被害の実態は、なかなか報道されません。
一方で、冷静な検証や考察がされないまま、
「CO2削減のために必要不可欠な風力発電」という
メッセージだけが、繰り返しメディアを通じて流れていきます。
やみくもに「推進」を叫ぶのではなく、
すべての国民が「環境問題の本質とは何か」を
冷静に考える時間を持つ必要があります。
そうした思いから、私たちはここに、共同メッセージを発します。
●日本政府、および各行政機関のみなさんへのお願い
風力発電推進を既定の政策と位置づけず、一度立ち止まって、
日本における風力発電の実態を正確に把握し直してください。
「風力発電推進は必須である」という前提を一度リセットし、
ゼロから、真剣に検証し直してください。
その結果、疑いの持たれるデメリットや予測可能な
被害に対して、あらゆる予防手段を講じてください。
「科学的に証明できない」「基準値を超えていない」
「問題はないと理解している」……
そうした杓子定規な対応が続く限り、
被害者の苦しみは今後も再生産されていきます。
少なくとも、現在被害者が苦しみを訴えている
地域の施設については、住民の命を最優先させ、
すぐに稼働停止を指導してください。
●風力発電を応援している企業へのお願い
環境問題を「イメージ広告」の材料として
安易に扱わないでください。
みなさんが援助している風力発電事業の実態を
正確に知ってください。
日本には、深刻な公害時代を乗り越えた歴史があります。
誤りを訂正する勇気と知恵こそ、日本が世界に誇れるものです。
未来につながる実効性のある技術や事業とはどんなものか。
先人たちの努力を無駄にせぬよう、困難な課題から逃げずに、
見つめ続けてください。
●すべての人々に向けてのお願い
すでに建設された巨大風車群を、一度、ぜひ
ご自分の目で見てみてください。
先入観を持たず、静かな心で、変わってしまった風景を
見てください。
そこで感じ取れる素直な気持ちを出発点にして、
風力発電にまつわる様々な情報に、
改めて向き合ってみてください。
人間が、生物本来の正常な判断力や
危険察知の本能を取り戻すこと。
風力発電問題に限らず、これからの時代を生きていく上で、
これが基本的な出発点だと、私たちは思います。
私たち人間を含め、地球上のすべての命を育み、
活動を保証してくれた、かけがえのない自然。
自然が発する大切なメッセージを、私たちはいつの間にか
正しく受け取ることができなくなっているのではないでしょうか。
ここで一度立ち止まり、自然のメッセージ、
水の心、土の心、風の心を、
正しく読み取る時間を持ちませんか。
様々な立場にいる私たちですが、以上のことを、
まずは共通の、心からの願いとして、ここに発信いたします。
2010年4月30日
風力発電全国情報ネットワーク
★私たち風力発電全国情報ネットワークは、
風力発電開発に疑問を抱く市民、
実際に風力発電施設からの被害を受けている市民、
これから被害を受けることを懸念している市民が、
情報共有化のために結成したネットワークです。