岩田です。今回は、立野さんの作品をご紹介します。
こちらはキャンバスではなく、木製のパネルに銀箔を貼り、その上から油彩で描いた作品。光線の状態を変えて撮影した2枚の画像を見ると、状況の変化でここまで見え方が変わるものかと驚かれる方もいるでしょう。
立野 油彩・パネルに銀箔
〇暗幕を使い周りから光が当たらない状態で撮影し、敢えて上のエッジまで入れるトリミングをしました。エッジを見てもらうと、サイドまで手を加え、額が不要の描き方をしているのがお分かりいただけると思います。
〇全光の撮影です。全面に箔を貼った上に油絵具で描いているので、かなり反射が激しく、角度によって全く別の作品に見える所が非常に面白いです。
全体にブルーのトーンでまとめられ、道を真ん中に左右、建物が建ち並ぶ風景を描いたもの。独特の質感と雰囲気が、観る者に落ち着きと哀愁のようなものを起草させる1枚です。
夕暮れを表現した空は、透明色を使い、あまり絵の具を乗せないことで、銀の光沢を活かした表現になっています。
一方、建物や道には、厚く、何層にも絵の具を重ね、古びた質感を表現し、日差しや風雨にさらされながらも、そこに人が生きてきた痕跡を人を描かずして表しているのです。
良く見ると、建物の端々に使われている赤い色が、少量だけ使われる薬味やスパイスのようなアクセントになっていて、そうしたところも、作者のバランス感覚を感じさせる一部分です。
何か新しいことをやってみたいと常に思いながら、産みの苦しさも同時に体験している立野さん。今回もそこを乗り越え、新たなステージに到達しました。