北京五輪の女子マラソンで史上初の連覇を目指す野口みずきは、果たして出走するのか。13日に結論を出すというが、優柔不断というか、決断力がないというか。「野口は走らせない」。沢木啓祐陸連専務理事や藤田信之監督は喉から出掛かっている声を飲み込んではいけない。
レースまであと6日である。この時点でジョグしかできない選手が、酷暑のフルマラソンを走れると考える方がおかしい。ところが、関係者は「野口ならやれるかも」などと無責任なことを言っている。
《▽木内敏夫・陸上日本代表ヘッドコーチ 藤田監督は選手が完ぺきでないと試合に出さない人。その監督が出場させると言った時は、それは自信があって選手を送り出すということだ思う。
▽山下佐知子・第一生命女子陸上部監督 野口さんは練習の質と量を自信に成長してきた選手。それだけに、練習が完璧にできなかったと不安になる面はあるかもしれない。ただ、深刻な故障なら、藤田さんは、もう決断しているはず。順調に良くなっているのだと思う。
▽谷口浩美・東京電力監督 私もバルセロナ五輪前に疲労骨折したが、その時は1カ月前から練習ができ、急ピッチで調整した。選手はみんなが万全の状態というわけではなく、(悪いところを)隠しながらレースをしているものだ。痛みさえなければ走れるのでは》
谷口が言っていることは示唆に富む。トップアスリートほど故障に悩まされる。それだけ負荷の強いトレーニングを積んでいるからだ。スプリント系なら、無理をすればレース中に「ブチッ」とくる。マラソンはだましだまし走っているうちに、筋肉がほぐれて調子が回復するケースもある。
谷口は1カ月前から急ピッチで仕上げたと言っている。ここがポイントだ。野口が腰の違和感を訴えたのは、先月末から今月初めの間と推定できる。レースまであと3週間、最も大事な調整期間を失ってしまったのだ。これは致命的だ。
「(故障を)隠しながらレースをしているものだ」と谷口は言う。逆に言えば、故障を公表したら五輪のような大レースは走らないのが常識、ということだろう。応援する人が心から「頑張れ」と叫ぶには、選手は頑張れる状態だとの暗黙の了解が必要だ。
もっとも、走るのは本人である。このレベルになると自分の力に対する過信も目立つ。そうでなければ、反吐を吐くようなトレーニングには耐えられまい。野口自身は本気で「出たい」と思っているかもしれない。「これで休める」の思いも潜在意識としてはあり得る。
野口が自分で決断できるのか。それは違うだろう。グローバリーからの移籍に絡む問題を抱えているかもしれない。グローバリーの広告塔としての役割を厳しく追及されてもいる。所属するシスメックスやスポンサーのドコモなどとの契約もあるだろう。銅メダルに終わった柔道の田村亮子が進退について「自分だけでは決められない」と述べているのと同様だ。
「自分だけでは決められない」。善意に解釈すれば、お世話になった周囲の方とも相談しないと--という意味になる。一方で、スーパースターを取り巻くビジネスは巨大化しており、選手はがんじがらめになっている、との解釈も成り立つ。
話を元に戻そう。野口は走ってはならない。センチになって「何とか頑張らせてあげたい」などというのはひいきの引き倒しだ。
陸連は補欠を解除した森本友を走らせることが可能かどうか検討しているというが、神経を疑う。パーツを交換するような発想はどこから出てくるのか理解できない。
レースまであと6日である。この時点でジョグしかできない選手が、酷暑のフルマラソンを走れると考える方がおかしい。ところが、関係者は「野口ならやれるかも」などと無責任なことを言っている。
《▽木内敏夫・陸上日本代表ヘッドコーチ 藤田監督は選手が完ぺきでないと試合に出さない人。その監督が出場させると言った時は、それは自信があって選手を送り出すということだ思う。
▽山下佐知子・第一生命女子陸上部監督 野口さんは練習の質と量を自信に成長してきた選手。それだけに、練習が完璧にできなかったと不安になる面はあるかもしれない。ただ、深刻な故障なら、藤田さんは、もう決断しているはず。順調に良くなっているのだと思う。
▽谷口浩美・東京電力監督 私もバルセロナ五輪前に疲労骨折したが、その時は1カ月前から練習ができ、急ピッチで調整した。選手はみんなが万全の状態というわけではなく、(悪いところを)隠しながらレースをしているものだ。痛みさえなければ走れるのでは》
谷口が言っていることは示唆に富む。トップアスリートほど故障に悩まされる。それだけ負荷の強いトレーニングを積んでいるからだ。スプリント系なら、無理をすればレース中に「ブチッ」とくる。マラソンはだましだまし走っているうちに、筋肉がほぐれて調子が回復するケースもある。
谷口は1カ月前から急ピッチで仕上げたと言っている。ここがポイントだ。野口が腰の違和感を訴えたのは、先月末から今月初めの間と推定できる。レースまであと3週間、最も大事な調整期間を失ってしまったのだ。これは致命的だ。
「(故障を)隠しながらレースをしているものだ」と谷口は言う。逆に言えば、故障を公表したら五輪のような大レースは走らないのが常識、ということだろう。応援する人が心から「頑張れ」と叫ぶには、選手は頑張れる状態だとの暗黙の了解が必要だ。
もっとも、走るのは本人である。このレベルになると自分の力に対する過信も目立つ。そうでなければ、反吐を吐くようなトレーニングには耐えられまい。野口自身は本気で「出たい」と思っているかもしれない。「これで休める」の思いも潜在意識としてはあり得る。
野口が自分で決断できるのか。それは違うだろう。グローバリーからの移籍に絡む問題を抱えているかもしれない。グローバリーの広告塔としての役割を厳しく追及されてもいる。所属するシスメックスやスポンサーのドコモなどとの契約もあるだろう。銅メダルに終わった柔道の田村亮子が進退について「自分だけでは決められない」と述べているのと同様だ。
「自分だけでは決められない」。善意に解釈すれば、お世話になった周囲の方とも相談しないと--という意味になる。一方で、スーパースターを取り巻くビジネスは巨大化しており、選手はがんじがらめになっている、との解釈も成り立つ。
話を元に戻そう。野口は走ってはならない。センチになって「何とか頑張らせてあげたい」などというのはひいきの引き倒しだ。
陸連は補欠を解除した森本友を走らせることが可能かどうか検討しているというが、神経を疑う。パーツを交換するような発想はどこから出てくるのか理解できない。