優緋のブログ

HN変えましたので、ブログ名も変えました。

あの日から 六 「イ・ミニョン」

2005-07-12 09:51:30 | あの日から
あの日…
私はパリのオープンカフェであなたを見つけた。

「ジュンサン…?」

なぜあなたがここにいるの?
コーヒーを飲みながら友達と談笑するあなたの横顔に、私の視線は釘づけになった。
ジュンサン…なの?

でも…違う。
ジュンサンじゃない。

あなたの瞳の色は明るく、あなたは柔らかな微笑をうかべていた。
秋だというのに、あなたの周りだけあたたかな春風が吹いているようだった。

ジュンサンがあんなふうに笑うのをチェリンは見たことはなかった。
いつも人を寄せ付けないような、冷たい瞳で遠くを見ていたジュンサン…。

ジュンサンと瓜二つのあなたは誰なの?
私は思わず席を立ってあなたに話しかけた。

「こんにちは。ごめんなさい、こちらに座ってもいいかしら。」

あなたは突然のことに驚いていたが、いやな顔もせず

「どうぞ、僕が韓国語が話せるってどうして分かったんですか?」
と言った。

「なんとなく、同胞かなと思って。あなたは韓国人じゃないんですか。」

「ええ、アメリカから来たんです。両親は韓国人ですけれど。」

「ごめんなさいね。
私から話し掛けたのに名乗らなくて。
オ・チェリンと言います。よろしく。

ファッションデザインの勉強に来ているの。あなたは?」

「僕は、イ・ミニョン。
友達のところに遊びに来ているんです。
僕も近々こちらに短期留学するので、その下見も兼ねて。」


「じゃあ、ミニョン、僕はここで失礼するよ。
チェリンさんも、またお会いしましょう。」

「あら、ごめんなさいね。お話していたのに私が横取りしたみたいになっちゃって。さよなら。」


「お友達に悪いことしちゃったかしら。」

「大丈夫ですよ。
もともと予定があってそろそろ行かなくてはと言っていたんですから。」

「ミニョンさんは今日これから何か予定があるのかしら?
もし良かったら一緒にお食事でもいかが?」


ミニョンは笑って
「チェリンさんはずいぶん積極的な方ですね。どうして僕に関心をもたれたんですか。」

「だって、ミニョンさん、とてもハンサムで素敵なんですもの。
私一目惚れしてしまったみたい。こんなこといったら失礼かしら?」

「いいえ、そんなことはありませんよ。正直な方なんですね。
僕も美しい人は大好きですよ。

チェリンさんはとても美人だから、僕たちは仲良くなれそうですね。」ミニョンは愉快そうに笑った。



その日からチェリンとミニョンは交際を始めた。


ミニョンはチェリンにとって理想的な恋人だった。


いつも優しくチェリンを楽しませてくれたし、かといって束縛することもなかった。




[空港にて]

「ミニョンさん?私よ、チェリン。今どこにいると思う?空港よ。」

「空港?空港ってどこの?」

「ニューヨークよ。あなたを追いかけてきちゃったわ。
もうすぐ会えるのは分かっていたんだけれども、来ちゃった。迎えに来てくださる?」


「(笑)チェリン、僕がいなかったらどうするつもりだったの。今迎え行くから待ってて。」



[ミニョンの家]

「母さん、前に話したフランスの彼女。(笑)」

「お母様、初めまして。オ・チェリンと申します。突然お邪魔して申し訳ありません。」

「いらっしゃい。どうぞお入りになって。
ミニョンからお付き合いしている人がいることは聞いてました。お噂どおり綺麗な方ね。

でも、今日お出でになってよかったわ。明日から外出する予定だったのよ。」

「まあ、そうなんですか。ラッキーでしたわ。

あと一週間でミニョンさんがフランスに来ることは分かっていたんですが、急に会いたくなってしまって。
ミニョンさんのお宅にも伺って、お母様にもお会いしたかったですし。

突然お伺いして申し訳ありません。」


「チェリン、座ってゆっくりして。
母さん、パクさんにコーヒー頼んでくるから。」


「チェリンさん、ミニョンと会うようになってからどのくらいなの?

初対面なのにこんなこと聞いて気を悪くしないでね。」

「いえ、構いませんわ。まだ一ヶ月くらいです。

ミニョンさん、アメリカにもお付き合いしている方がいらっしゃるんでしょうね。

突然お伺いしたのに、お母様驚かれないのは、こういうこと初めてではないからなんですね。」


「チェリンさん、あの子はああ見えて何人もの方と平気でお付き合いする人間ではないの。
だからたぶん今はあなただけよ。

もちろんガールフレンドくらいの人はたくさんいるでしょうけれども。

ただね、いつもあまり長続きしないのよ。
たいてい相手の方が離れていってしまうの。

ミニョンは優しいけれども冷たいところがあって、仕事や勉強に打ち込んでいるときはそちらを優先してしまうし、自分から積極的にならないから女の人にすれば淋しいんじゃないかしら。

まだミニョンは本当の恋に出会ってないのね、きっと。

母親なんてそんなことまで心配して…、愚かね。

でも、チェリンさんは大丈夫そう。
あなたは本気みたいだし、しっかりしていて長続きしそうだわ。頑張ってね。(笑)」



「二人で仲良さそうに何話してるの?まさか、僕の悪口?」

「そんなことお母様とお話しするわけないでしょ、ミニョンさん。
あなたが浮気してないかお母様に聞いてたの。」

「僕はチェリン一筋だよ、ねえ、母さん。
今日だって電話貰ってすぐ駆けつけたじゃないか。
こんなに優しい恋人なんて、なかなかいるもんじゃないだろ。」


「そうね、母さんはお邪魔のようだし、用事があるからちょっと出かけてくるわ。
チェリンさん、どうぞゆっくりしていって。よかったら夕飯も用意するから食べていって。」

「はい、ありがとうございます。」

「いってらっしゃい。」


〈思い切ってニューヨークに来てよかった。お母様にも会えたし、どうやら私のことを気に入ってくださったようだ。
私は絶対ミニョンさんのことを諦めたりしないわ。何があっても。〉



パリのカフェ 柔らかい春の 風のよう
         微笑むあなた 亡き人に似て

こんどこそ 私は恋を 実らせる
        もう泣きはしない なにがあっても





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