日本が直面している情報戦の実態
2014年2月9日
幸福実現党
総務会長(兼)出版局長
矢内筆勝氏 ブログ転載
http://yanai-hissho.hr-party.jp/china/2096.html
今、日本が直面している世界的な「情報戦」は、単に歴史観に関する攻撃
だけではありません。
未来の日本の安全保障に直結するアメリカの対日観に関しても、
重大な過てる錯誤を助長、育成していることも、知らなくてはなりません。
その一端を、岡崎研究所のレポートから紹介します。
(本文)↓
日本が中国に戦闘をしかける? 米国の思い込みによる
東アジアの危機シナリオ(2014年02月06日 WEDGE INFINITYより転載)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3554
岡崎研究所
米ハーバード大学ケネディスクールのグラハ ム・アリソン教授が、
第一次世界大戦勃発百周年に因んで、百年前のドイツのように、中国が
台頭して権益拡大をはかっている現代は 、1914年と類似しているところも
あるが、 米中は大人なので、偶発的な武力衝突があっても本格化させる
可能性は低く、より心配なのは日本が中国に戦闘をしかけ、それが米国
をひきずりこむことである、と1月1日付Nati onal Interest誌ウェブサイト
掲載の論説で述 べています。
すなわち、20世紀初頭、鉄鋼王のカーネ ギーは世界平和を夢見て、ハーグに
おけるPeace Palaceの建設に出資した(これは「国際仲裁法廷」となり、
現在は国際司法裁判所が所在)。そして彼はちょうど百年前、1914年の元旦、
「国際仲裁法廷が発足したので 、これからは武力ではなく国際法が紛争を処
理していくだろう」と書いた。
第一次世界大 戦が勃発したのは、その8カ月後である。
百年後の今日、ドイツの台頭がバランスを乱していた当時と類似の要因がある。
つまり 、国力を急伸させた新興国をめぐる警戒心が高まり、旧覇権国を中心
とする同盟体制と新興国との間で戦争が始まる可能性である。
今日、米中の艦船、軍用機が衝突しても、 両国は抑制した対応をして本格的
対立には至 らないであろう。しかし日本は違う。百年前 のオーストリア・
ハンガリー帝国と同様、衰退傾向にある国は、起死回生の一発で地位の 回復を
図りたがるものである。安倍首相は、 日本の経済力を回復させるだけでなく、
軍事力を再建し、多くの日本人が米国に押し付けられた平和条約と見なすもの
(註:憲法を指 すと思われる)を改正し、国防支出を大幅に増額し、日本が
自分で領土を守ることができ ることを誇示しようとする野心を持っている。
従って、2014年に最も起こり得る戦争のシナリオは、最近の中国による防空識別
圏設定のような行いに日本が反応し、中国の航空機や艦船を攻撃して死傷者を出し、
海上戦が拡大するというものである。日本の政治家は 、中国は米軍が出てくる
ことを怖れて手を控 えるだろうと思っているかもしれないが、朝鮮戦争の時の
ように、中国は自らが弱い時でも出てくるものである。このようなことが実
際に起きることはないだろうが、用心は必要である、と論じています。
* * *
アリソンは国防次官補まで務めたことのある学者ですが、現在の発言力は大きく
ありま せん。しかし、この論説は、日本及び安倍政権について、米国の一部に
存在する思い込み を体現するものであり、日本の現状と政策への理解不足と
突き放した軽視が窺われます。 例えば、日本は「起死回生の一発」など狙っ
ていませんし、防衛費の増額は、自助努力の向上として、米国側としても本来
望むところです。
同盟ブロック間のバランスに依存していた 百年前の欧州と比べると、
現在の東アジアは中国とその他の間のバランスで動いている感があります。
中国は同盟国を持っていないばかりか、その要人達は子弟を米国に留学させ 、
財産も米国に送金する有様です。他方、米国も中国との経済関係に大きく依存
していま す。
日本に基地を置いている米国が、日本が中 国に対してどこまでも劣位に陥る、
ということは望まないでしょうが、米中間の相互依存関係に、米国は日中間の
紛争に巻き込まれないよう気を付けるべしとのアリソンの論調を重ねていくと、
それは「日本の台湾化」とな ってしまいかねません。つまり、先端兵器を 台湾
に渡さないことで台湾が中国を挑発するような事態を防いでいるやり方を、日本
にも 適用するということです。アリソンのような 考え方は、徹底すれば、
そのようになりかね ない危険なものです。
中国は、この論説が示しているような、米 国の一部にある日本に対する思い込みを、
これからも増長させるべく運動するでしょう。 宋子文等による対米世論工作に
みごとに負けた戦前の轍を踏まないよう、巧妙な対米広報 活動を強化していく
必要があります。