食と世界

食と世界についての雑記 菜食・断食の勧め

残りの藁の書

2012-04-13 00:31:04 | 焚書/解体


ここにあるような検証は勿論いつの時代でも可能だったが、迷惑な事に、新約聖書はそう遠くない時代まで見ずに信じた人々による
傲慢・侵略戦争・ユダヤ人迫害の隠れ蓑とされて来た。人類史の汚染源となった残りの文書も概要を纏めてみたい。

 マルコによる福音書
『マタイ』と『ルカ』の底本になった最古の福音書という説が19世紀以降有力。(両者とも所々『マルコ』のギリシャ語が丸写しになっている 両者ともマルコより洗練されたギリシャ語を書いている 『マルコ』だけの独自部分が少ない…)歴史的信憑性は比較的高いかもしれない福音書。

『マルコ』最古の写本には復活の記事が存在しない(16章9節以降)。現在の版も16章8~9節がギリシャ語で歪な接続になっているばかりか、文体・語彙が変化する(写本によってはストーリーが異なる復活譚が付随)。文体は14章から変化しているという指摘もある。

 ヨハネの手紙一 二 三
パウロ的観念を持つ(ヨハネ福音書を書いた)ヨハネ共同体の作と思われる。贖罪論、異端の糾弾、信者の結束を呼びかけた書。
「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された」(ヨハネ3:16) 「神は、独り子を世にお遣わしになりました。… わたしたちの罪を償う生贄として、御子をお遣わしになりました。ここに愛があります」(ヨハネの手紙一4:9-10)

 ヨハネの黙示録
1世紀末、迫害者ローマ帝国の滅亡と、再臨のキリストによる希望を綴った預言書。新約文書に一貫して見られる黙示思想の集大成。(作者は不明)
「あなたが見た女とは、地上の王たちを支配しているあの大きな都のことである」(黙示録17:18)

光の勢力が闇を駆逐するユダヤ教的終末観は、元はペルシャのゾロアスター教から伝播したもの。そしてこの書簡には
ペルシャの光の神ミトラからの剽窃が見られる。イエスの右手にある七つの星とは、ミトラの右手にある北斗七星(大熊座)のことであろう。「右の手に七つの星を持ち(黙示録1:16)」
http://homepage2.nifty.com/Mithra/Mihrijja_Mithra_and_Christ.html
>『ヨハネの黙示録』に記されているキリストはミトラそのものである。


怪奇で非現実的な描写がオカルト的脅迫に使われる事もあるが、ローマ帝国に拾われて晴れて世界宗教となった今、キリスト教が謝罪しつつ破棄すべき文書でもある。 黙示録、外れているその予言  ヨハネの黙示録とは

 テサロニケ人への手紙二
時が過ぎても終末が来ないことに疑いを抱いた懐疑論者を糾弾したパウロ名書簡。2章2節「私たちから書き送られたという手紙(※)によって、主の日は既に来てしまったかのように言う者がいても、すぐに動揺して分別を無くしたり、慌てふためいたりしないでほしい」

※当時
偽パウロ書簡が出回っていた状況が示唆されている。しかし本書自体が偽パウロ書簡視されているのは面白い。読者も「騙されてはいけない」と警鐘を鳴らす本人がまさか偽証を実践しているとは思わない…一流の詐欺のテクである。(結びでも真筆をアピールしている)

 ユダの手紙
異端の不品行を非難した書。「ヤコブの兄弟ユダ」を名乗り、恐らくイエスの弟を自称している。

 ペテロの手紙一
信者の品行方正、権力への服従を説いた書。キリスト教に対するローマ帝国や異教徒からの「厄介者」の視線に対処している節があり、発生は皇帝からの迫害があった1世紀末が有力。
異教徒の間で立派に生活しなさい。そうすれば、彼らはあなたがたを悪人呼ばわりしてはいても、あなたがたの立派な行いをよく見て、訪れの日に神を崇めるようになります。主のために、すべて人間の立てた制度に従いなさい。それが、統治者としての皇帝であろうと、あるいは、悪を行う者を処罰し、善を行う者をほめるために、皇帝が派遣した総督であろうと、服従しなさい」(ペテロ一2:12-14)

 ペテロの手紙二
終末が来ないせいで増えた懐疑論者に腹を立てた著者が記した2世紀後半の書。「無学な人や心の定まらない人」をユダの手紙を盗作しながら攻撃している。ペテロ一の作者とは別人。
「終わりの時には、欲望の赴くままに生活してあざける者達が現れ、あざけって、こう言います。「主が来るという約束は、いったいどうなったのだ」」(ペトロ二3:3-4)
「愛する人たち、このことだけは忘れないでほしい。主のもとでは、一日は千年のようで、千年は一日のようです。 ある人たちは、遅いと考えているようですが、主は約束の実現を遅らせておられるのではありません」(ペトロ二3:8-9)

ペテロの手紙二 ユダの手紙
「また、神はソドムとゴモラの町を灰にし、滅ぼし尽くして罰し、それから後の不信心な者たちへの見せしめとなさいました」
「ソドムやゴモラ、またその周辺の町は、… 永遠の火の刑罰を受け、見せしめにされています」 「この夢想家たちは、知らないことをののしり、分別のない動物のように、本能的に知っている事柄によって自滅します」「この者たちは、… 理性のない動物と同じで、知りもしないことをそしるのです。そういった動物が滅びるように、彼らも滅んでしまいます」 「ボソルの子バラムが歩んだ道をたどったのです。バラムは不義のもうけを好み」「金もうけのために「バラムの迷い」に陥り」 「この者たちは、干上がった泉、嵐に吹き払われる霧であって、彼らには深い暗闇が用意されているのです」「実らず根こぎにされて枯れ果ててしまった晩秋の木、わが身の恥を泡に吹き出す海の荒波、永遠に暗闇が待ちもうける迷い星です」 「終わりの時には、欲望の赴くままに生活してあざける者たちが現れ」「終わりの時には、あざける者どもが現れ」

 ヘブライ人への手紙
パウロの作と思われて正典入りした匿名の書。しかし少し読んでも文体、論法がパウロとは大きく異なる。広範な旧約知識を華麗に流用したテーマはおよそパウロには書けない内容で、教養あるユダヤ人キリスト教徒の作であろう。

 ヤコブの手紙
「行いの伴わない信仰は死んだもの」として信じ込みを優先したパウロ的思想を否定した書。

新約聖書中稀にみる良書であるが、プロテスタントの開祖ルターが「無価値な"藁の書"」として正典から外そうとした事は有名。
「わたしの兄弟たち、自分は信仰を持っていると言う者がいても、行いが伴わなければ、何の役に立つでしょうか。そのような信仰が、彼を救うことができるでしょうか」(ヤコブ2:14) 「これであなたがたも分かるように、人は行いによって義とされるのであって、信仰だけによるのではありません」(ヤコブ2:24)

聖書訳文: 新共同訳  

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