最近、書店にはクレーム対応の本が急増しています。
以前は、クレーム対応の実務者が書いている本が多かったのですが、最近は弁護士の方が書いていたり、モンスターペアレント対策に、警察が教育現場の研修に出向くというなんてことも増えています。
悪質なクレームは、最初から「金品目当て」「曖昧」「しつこい」と、「クレームは宝」と言えるものとは別の座標軸にあります。
しかし、善意のクレームを悪意と決め付けて応対をスタートすれば、余計な応対クレームに発展し、結果的に悪意のクレームであっても初期対応を誤ると、ますます執拗さを増し、応対者や会社を憔悴させるなんてことが、接客の現場で多々起きているように思います。
クレームに限らず、モノやサービスとの出会いには何らかのドラマがあります。
そして、応対する側には、この背景を読む力や想像する力が必要だと思っています。
以前から、そうではないかと思っていたのですが、この本を読み、確信したのは、悪質なクレーマーになる人は、クレームを申し出になる前から、あまり幸福な状態や快適な状態にいないということ。
そこに、モノやサービスをめぐって「不」が重なって、悪のスパイラル。
悪質なクレームは、心理学、しかも交流分析的に言うならば、「ストローク飢餓」に陥った人が仕掛けてくる「心理ゲーム」なのだと思います。
たしかに、日常生活の「ストローク不足」を、企業側を困らせることで解消できると思う。
表面上は「自分はOK」という人生態度も、実は、「自分はNot OK」であるからして、「相手もNot OK」という思い込みを持ったやりとりになりがち。
人は、怒っている時、怒りながらも、強烈に感情を発散させて、過去の「不」の事実を忘れようとしている、あるいはその時は忘れている・・・・と何かの本で読みました。
でも、お客様相談室や販売の現場で接客者に、モノやサービスについての正当な要求することと、個人的な背景に起因する個別の感情をぶつけるのは違う。
仕事柄、どちらの立場もわかる上で、日々感じていることなんですが、応対する側が、お客様の心情を可能な限り理解しよう、予想しようとすると同時に、消費者側も、「感情的」になるのではなく、もっと「感情」を言葉で語ったらよいのではないかと思っています。
奥ゆかしい日本人は、「気持ちを汲んで欲しい」という思いもありましょう。
しかし、「心配だった」「悲しかった」「がっかりした」「期待はずれだった」「危ない思いをして怖かった」「恥ずかしい思いをした」「あの時本当に疲れていた」などなど・・・・私たちは言葉を持っているはずなのに、
実際は、怒りに包まれて、本音や本意は語られることはほとんどないか、聴けたとしても時間がかかってしまいます。
しかし、今思えば、このような本音や本意を聴くことができたお客様ほど、印象に残っていて、解決方法も速やかに湧いて、対応が早くできたりしました。
満たされぬ思いを「金品」で埋める必要があるのか、「心のこもったお詫び」で埋められるか。
金品をGetしたVictory感で、ストローク不足は埋めているのなら、悲しすぎるゾ。
日常的には、何かしらの失態を「今度埋め合わせをするから」という言葉で、ご馳走やお詫びのしるしを渡す習慣があるかもしれないが、企業と消費者の間で同じように成り立つというか?
そりゃ違う・・・・
売買を初めとし、企業と消費者に横たわる法律関係と、これらが一緒くたになってしまうからおかしなことになる。
先日、個人的に、「それはあんまりだ・・・」というサービスや対応に、次々に遭遇したワタクシです。
結局、返って来たのは「言い訳」であり、お詫びの言葉はなかったです。
いや、あったかもしれないけど、お詫びとして私には伝わらなかったのです。
「悪いと思っていないから謝れないのだろう」という思いと同時に、「私はこれでも今の環境で、できることは一生懸命やっている、これ以上何を求めるののか?」という思いを感じ、
「今、この人に何を言ってもダメなんだろうなぁ」という諦めから、その会社と百貨店のその売り場には2度と行かないと決めてしまいました。
昨今の企業と消費者をめぐるクレームの増加は、どっちが悪いとは言えないと思っています。
企業側のクレーム対応の拙さと、消費者が自己のクレームへの客観性を損なった申し出が重なり合えば、応対の現場の秩序は乱れても致し方ないと思います。
そんな時に、出会ったのが、上記の本です。
私には非常にしっくり来た1冊です。心理カウンセラーの方が書いていることもあって、今の私には非常にすんなり落ちました。
応対のフローや事例の紹介、対応方法に偏った書籍と違っていて、クレームを受ける自分の仕事への誇りや、受け止め方、自分の癒し方などについて触れられています。
お客様相談室に限らず、その場その場の対応を適切に解決していくだけでなく、長期的にこの仕事に関わっていく上で、心理学的にまた長期的視点に立ってお客様に向かい合える本だと思います。
解説がもう少し欲しい部分もありますが、そこは関心を持って補い続ける必要があろうかと思います。
でも、たくさんのヒントが見つかる1冊です。
クレーム応対が必要な皆様に、ぜひご紹介いたします。
長くなりましたが、1日1回ありがとうございます
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