ファン・ジニ 第二十一話

ぐ、ぐぐぐ……もどかしい……。
もう、あの人たちのゆーっくりしたお辞儀の時間すら惜しい。
そんなお辞儀はどうでもいいから、ふたりの運命はどうなるんじゃー！
は、はやく教えてください……って気持ちになりました。
こんな苦しい思いを視聴者も１時間以上引きずることになるとは。

《あらすじ》

ジョンハンとともに捕らえられようとしたジニを、かろうじて間に合ったムミョンが止めた。
ジニの死を、判書さまが望むわけがない、と彼女を説得し、かくまう。

ジニは、ピョクゲスやプヨンを動かし、なんとかジョンハンを救うために
計画を練るが、肝心のジョンハンが、ジニを守るために沈黙を貫くのだ。
思い通りにいかぬまま、ジョンハンには死刑が言い渡された。
ムミョンは領議政の息子であることを利用し、ジョンハンの命を救おうとしたが、
それだけはできない、と父親に言い渡される。

ジョンハンの死刑執行の日に、盛大な宴が催されることが決まった。
そうと知ったジニは、その宴に出て舞うことを決意する。
死んでいったペンムのため、彼女を守ろうとしたジョンハンのため、
キーセンとして生き、キーセンとして舞台で死ぬために、
彼女は再び舞を舞う。

メヒャンの助けを借りて宮廷に上がろうとするジニをのせた車と、
刑場にひかれていくジョンハンをのせた車がすれ違った。

（つづく）

ジニまで捕らえられて、殿下の前で申し開きをするのかと思いきや、
ムミョンが助けてくれました。
ほっと……

できるかぁぁぁぁぁぁぁ！

死ぬも地獄、生きるも地獄。

ジニは、ピョクゲスの復讐心に訴えかけます。
このままあの人を死なせたら、あなたは負けっ放しで終わることになりますよ、と。
それよりも、あの人の手で私を捨てさせてやればいいじゃないですか。
真心を捨て、尊厳を捨て、自分にひれ伏し、
ジニを愛したことは間違いだったと認めさせ、じわじわと彼の心を殺した方が、
よっぽど楽しいことじゃありませんか？

ゲス兄さんは、その企みにのっかります。
王様に、このままジョンハンを死なせるより、過ちを許してやった方がいい、と進言するのです。

もちろんジニの計画に穴はありません。
ジョンハンを愛しているプヨンに頼み、自分の隠れ家を教えるのです。
彼が拷問に負けずとも、王の心を大切に思うのならば、
きっと自分の居場所を王に教えるだろう、と考えているのですね。
そうして自分が捕まり、死ぬことになれば、せめてジョンハンだけは助かることができる、と。

彼女の唯一の誤算は、ジョンハンの真心。

彼はどんなに拷問を受けようとも、
ジニの居場所を吐けば、再び官職に迎えようという王の温情を与えられようとも、
けっして口を割ることはなかったのでした。

すべてを捨て、何よりもジニが生きることを望むジョンハンの真心は、本物だったのでした。

ゲス兄さんは、本当にジニの恐ろしい計画を喜んだのでしょうか？
はっはっは、その方が面白いもんな、そうしようそうしよう！と喜んだのでしょうか？
もしかしたら、悲しかったのかもしれない。
ジョンハンのみじめな姿を見て、ツバを吐いてやろうと思っていたプヨンがそうできなかったように。
歪んだ愛ではあったけれど、心から愛した女を目の前にして、
心が動いたのじゃないかしら？

ひどい拷問を受けても、罪を認め、愛のために死のうとしている友。
そんな友に憎悪の視線を向ける王を見て、
自分の愚かさ、哀れさに気付いたんじゃないでしょうか？
ゲス兄さんはほんとうにゲスいことばっかりしてきた人ですが、
良心のかけらが残っていたと信じたいのだわ～。
ジニへの愛が、恐ろしい執着にしか過ぎなかったのだとしても、
それでも彼にとっては愛だったと信じたいの。
ジョンハンを愛し、劣等感にさいなまれ、自分の境遇を呪い、同じ女を愛した。
そんなゲス兄さんもまた、
愛のために自分を見失ってしまった哀れな人だと信じたいのよ～。

タンシムもそう思って、ピョクゲスを愛し、子どもを身ごもったのだと思います。
わたしたちってダメンズウォーカーなのかしら……。

ジニは、子どもができて、その子のために生きる理由ができたと言っていましたが、
愛する人が殺される局面になって、子どもを犠牲にしても、一緒に死にたいと考えています。
この子のために生きよう、とは思えなかったんだね。
もっとおなかが大きくなってたら、また違う選択があったのかしら？
まだあんまり実感がなかったのかもしれないね。

個人的に、「母である前に女だった」みたいな言い方は好きじゃないです。
どちらが前面に出るか、とか、優先順位とかじゃなくて、
どこかで母で、どこかで女で、どこかでキーセンで、混じってると思う。
人間の心って、複雑なものだと思うんだ。

ペンムのことも、ジョンハンのことも、みんなはいろいろ言うけど、
ジニには、自分のために舞ってほしい。
供養とか、誰かの想いに応えるためとか、
そういうことじゃなくて、彼女が彼女であるために舞ってほしいな。
あ、でも誰かのために舞うことが自分のためでもあるのかな？
オリンピックの選手が、何のためにがんばるか、というのに似てる話かな。
「国家のため、国民のみなさんの期待に応えるためです」というのも、
いやいや、それは申し訳ない、自分のためにがんばってください、と思うし、
「自分が楽しむためにがんばります」というのも、ちょっと寂しい気もするし、
まぁこれも複雑です。
いろんな想いが混ざりながら舞って、それが最高の出来になったら一番いいなぁ。

ジニはジョンハンのこと愛しているくせに、信じてなかったのかな？
自分への愛より、王への想いが強いだろうと予想してたでしょ？
彼の真心があんなに深いものだとは……。
それで、今まで封印していた舞を舞うことを決意したのかもしれないね。
ただ出頭して一緒に極刑にされるだけじゃ、
彼の想いに報いることはできないと感じたのかな。

でもさぁ、ジョンハンはジニが死ぬことなんか絶対望んでない。
ただ生きてて欲しいと思ってるよ。
ジニだってそう思ってたでしょ？
自分が死んでも、プヨンが彼を愛し、支えてくれると思ってたでしょ？
ジョンハンだって、自分が死んでもムミョンがいる、と思ってるよ。

悲しみは、年月が癒やしてくれる。
けして無くなることはないけど、いつか薄まっていくものだよ。
薄情かもしれないけど、人間はそうやって生きていけばいいんだと思う。
生きていれば、きっとどこかで誰かをしあわせにするお手伝いができると思うから。

視聴者としては、どこかで期待してるけどね！
王様がジニの舞に涙を流して、ふたりを助けてくれるんじゃないかって。
こんなに素晴らしい芸人のために、ジョンハンはすべてを捨てたのか！
その気持ちがよくわかった！とか言ってくれないかな。
ペンムが言ってたじゃん。
ウノが、あんな女のためにすべてを捨てたのか、と世間に嗤われないように、
お前は最高の舞を舞わなきゃいけないんだって。
今度こそ、ジョンハンのためにそうしなきゃ。
命を捨ててまで守る意味のあるキーセンなんだって、王様に思わせなきゃ。
そうすればきっと、ふたりは助かると思うんだな～。

てか、国政のためにはもっと他に心配しなきゃいけないことが
いっぱいあると思うんだけど！
ジョンハン以上の人はいない、とかいって甘えている場合じゃないと思うんだけど！
孤独に闘うのって、王様だからしょうがないと思うんだけど！
私情はさんでひどいことする前に、もっと王様らしくがんばってよね！

次回、鶴の舞に期待。