コキュートスの記憶

日々の出来事とか戦果(買い物)とか。
主にガンダムを中心にしています。

ヘルメス迷走 part6

2013年09月03日 | ゲームブック
前回、リエに連れられ、MADSのリーダーに
会いに行くことになりまして、
今回はそのナオミと会うところかでございます。

050:
その時、奥で女の声がした。
「誰?」
影が動いた。恐らくナオミだろう、キミを認めてハッと息を飲む。
「帰ってきたのね!」
飛ぶように駆け寄り、キミに抱きついて来た。切れ長の目がキミを
見上げる。
「どうして…どうして黙って出て行ったりしたの?」
「えー…」
チンピラの頭目なんぞやらなくとも、モデルで充分喰っていけそう
なナオミに抱きつかれ、キミは口ごもった。尋ねたいことは山ほど
あるのだが、適当な台詞が出て来ない。
「そんなことより、キミの友達が…」
言ってから首を傾げる。横で見ているのは手下だけで、リエの姿が
ない。
「リエは?」
「意識を取り戻し、直ぐにどこかへ」
手下のひとりが答えると、ナオミが不思議そうな顔をした。
「リエがどうしたの?」
「いや、何でもない」
リエを殴り倒したなんてことを、ワザワザ言う必要はないだろう。
「ナオミ…聞きたいことがあるんだ。ふたりで話ができないか」
ナオミは嬉しそうに笑った。
「いいわ。こっちへ」
倉庫の隅にあった穴を梯子で降りると、地下にナオミの部屋があっ
た。廊下の向こうのもうひとつのドアは、リエの部屋なんだろう。
実に小綺麗に装飾され、とても倉庫の地下とは思えないナオミの部
屋の梯子にキミが戸惑っていると、ナオミがキミの手を取り、ベッ
ドに座らせた。ナオミもキミの隣に座る。
やっぱり、ああいう関係なのかと納得しながら、キミはその立場を
有効に活用しようと判断した。ナオミには本当のことを話しても大
丈夫だろう。
「オレは記憶喪失らしいんだ」
ナオミの目が見開かれる。
「自分の名前すら覚えていない。誕生日も、出身地も、職業も、自
分が何故ここにいるのかも、全く思い出せないんだ」
「わたしのことも…覚えていないの?」
ナオミが泣きそうな声で言った。
「だから教えて欲しいんだ。オレは一体誰なんだ?」
「これは?覚えてない?」
リエはネックレスのチェーンを指に絡めた。銀色の万年筆のキャッ
プといった感じの飾りがついている。
「アナタがくれたのよ。チェーンはわたしがつけたけど」
キミが黙って首を振ると、ナオミは溜息をつき、揃えた膝に視線を
落とした。
「すまない…でも、ハッキリ言った方が良いと思って」
「わたしの知っていることは全部話すわ。アナタの力になれるのな
ら嬉しいもの」
そう言ってから、ちょっと顔を赤らめる。
「それに-わたしのことも思い出して欲しいし」
-本当にこれがMADSの頭目か?-
余りの健気さにキミは感動するより呆れてしまったが、勿論そんな
ことはおくびにも出さず、もっともらしい顔で頷く。
その時、ドアがノックされた。
「リエです」
入って来たリエは、ナオミの隣に座っているキミをジロリと見た。
「お姉さま、話は全部聞いていました。この人にはわたしから説明
させてください」
ナオミは困ったような顔でキミとリエを見比べた。
「そうね。お願いするわ」
リエは頷き、キミを指で招いた。
「ふたりの方が話しやすいこともありますから…」
キミが廊下に出ると、リエはバタンとドアを閉めた。
「お姉さまのことがなきゃ、放り出してやるんだけどね」
リエは腕を組み、壁にもたれた。
「あんたはねぇ、傷だらけで追われていたところをあたしが助けて
やったのさ。追っているのがマッポみたいだったから、気まぐれ起
こしたようなもんだけど、今じゃ馬鹿なことしたって後悔してるよ」
「あんたは酷い出血で、ここに着いた途端に意識不明。そのあんた
を、お姉さまはそれこそ必死で看護した。あたしが止めるのも聞か
ずに夜を徹してね」
「それなのにあんたは、意識を取り戻して2日も経たない内に黙っ
ていなくなっちまった。どういうつもりだい?」
「そー言われましても」
キミの惚けた声が更なる怒りを買ったようだ。リエは噛みつきそう
な勢いでキミに詰め寄る。
「あんたに関してあたしが知ってるのは、これで全部さ。満足した
ら、とっとと出て行きな」
そこまで言ったところで、リエの体から迫力が消えた。フッと天井
を扇いだ時の目の色は、リエが今まで見せたことのないモノだった。
「お姉さまはね、とっくの昔に死んだヴァロージャを、あんたにダ
ブらせてるのさ」
「ヴァロージャ?」
「MADSの先代頭目。お姉さまの恋人。ついでにあたしの兄貴」
キミは改めて壁に寄りかかり、俯くリエを見た。いつにない寂しさ
が彼女から感じられる。
-ナオミに対しても、死んだ兄の代理をやろうってのか-
その時、ドアが開き、ナオミが顔を出した。
「終わったかしら?」
リエが黙って頷く。
「何か思いだした?」
キミが首を振ると、ナオミは項垂れた。
「でも-わたしのことを忘れていても、それでも良い、ここにいて。
お願い、二度とわたしを置いていかないで」
ナオミに縋るような目を向けられたキミは、リエを見た。リエも黙
り、キミを見ている。
・ナオミの言う通りにする:196
・出て行く:079
出て行っちゃうと、街をブラつくことになるので…。
が、次がちょっと長いので、次週に続きます。
コメント
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