山岳ガイド赤沼千史のブログ

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つめかえ君

2013年10月02日 | 登山道具考

 テント泊登山で使うEPI等のガスボンベが残り少なくなってしまったけど、山に持って行くには足りないし、かといってそれを日常生活で使うこともなかなか難しくて、結局中途半端に残ったボンベを捨てるに捨てられず山ほど所有している方は結構いるのではないだろうか。

 そこで、この器具の登場だ。名を「つめかえ君」という。僕はこの器具を知って100本近く有ったEPIを、一日がかりで片っ端からかたづけた時には、 積年の胸のつかえがやっと取れて人生がバラ色に見えた。少し大げさだが、そのぐらいすっきりする。

 上の写真左がEPI同士を詰め替えるもので、右のは家庭用カセットガスボンベと、EPIを繋ぐアタッチメントだ。これがあれば、自由自在ガスを入れ替えることが出来る。

 僕は夏の間は新しいEPIガスボンベを買わない。家庭用カセットガスをEPIに充填する。経費は4分の一だ。それで問題は何もなくて、ブタンがどうのこうの、プロパンが云々と言う事も気にしない。若干着火性が悪かったり、全開で燃やすと不完全燃焼をおこし安かったりすることがあるが、そんな使い方は先ずしないので、夏であれば全く問題はない。冬は流石にガスの配合の問題があって調子が悪いので、冬用ボンベの新品を購入する。

 充填作業は、若干緊張をする。僕の場合、鍋に湯を沸かし、送る側を湯煎して暖め内圧を上げてやる。そうするとスムーズにガスが移動する。どのぐらい暖めるかは感だが、暖め過ぎると当然爆発すると思うので細心の注意を払わなければ大変危険である。こまめにやることだ。湯煎などしなくても充填は出来ると思うが最後の最後まで出し切るには、暖めることが必要だ。それと、まだ入ると言って詰め込みすぎると、ボンベのアーチ状底が逆に膨らんだりするのでこれも大変危険だ。総重量でレギュラーで400グラム、ラージで700グラムが限度だ。

 僕はこの商品が違法なものだとずっと思っていた。だって、かなり危険だもの。だけど調べたらアマゾンでも売ってるので違法と言うわけでもないのだと、今胸をなで下ろしている。とにかく、自己責任に於いて使って頂きたい。鈍くさい人は絶対に手を出さない方がよい。僕は一切の責任を負わないので悪しからず。よい子はマネしちゃダメ。


トランギアのコッフェル

2013年09月03日 | 登山道具考

 これは、トランギアというアルミの鍋とテフロン加工を施されたフライパンと小鍋のセットだ。スウェーデン製である。オレンジ色のはジェットボイル。これらをいろいろ組み合わせて使う。いずれも僕の長年の愛用品だ。

 トランギアはまっ黒だが、決して洗ってないわけではない。僕らは沢へ出かけるので焚き火で調理をするからまっ黒になってしまったのだ。この黒さは愛着でもある。トランギアは若干重い、と言うかしっかりしている。しかも、プラスティック部品が鍋のフタに一つあるだけだから、直火調理が可能なわけだ。このまま焚き火の中に放り込んで使ったりしても平気だ。鍋の上げ下ろしはクランプを使って挟んで行う。最近のコッフェルには、ほぼ必ずシリコンゴムやプラスティックのついた取っ手があって、これでは焚き火調理が出来ないので使い物にならないのだ。実はこのトランギアは2代目で、昨年暮れ、秩父で友人と飲んだ後、鍋を車の下に入れて置いたのだが、翌朝それを忘れて車を動かしぺしゃんこにしてしまった。13年間使っていたものだから、そのショックは大きかった。京都の鴨川沿いのスッポン屋さんよろしく。長年の味が染みこんでいい出しのでる鍋だったのに。(笑う)僕のようなヘビーユーザーでもそのぐらい持ちます。

 テフロン加工の鍋は、揚げ物、炒め物、オーブン料理と色んな調理が可能だから、山での食事の可能性がぐんと広がる。昔懐かしい灯油ストーブのオプティマスとかスベアとかもみんなスウェーデン製だ。真鍮製でプレヒートをして、シュポシュポとポンプで圧力掛けて使うあれ。今でも一年に一回ぐらいは磨いたり着火させたりしてる。懐かしいなあ。いずれもアウトドアの歴史の長いスウェーデンの逸品である。

 ジェットボイルは現代のハイテク鍋で、鍋の底部分に吸熱板を備えた省エネコッフェルである。異常に早く湯が沸くし、そのフィンのお陰でコンロヘッドからずれ落ちないから、狭いテントの中では安心感が有る。結露しにくいので、冬の水作りには大変重宝しているし、ガスの節約になるから装備を軽くできる。


ヘッドランプ

2013年07月26日 | 登山道具考

このヘッドランプ、GENTOS GTRは我々の近しいガイド仲間の間では定番商品である。高輝度LEDを一つだけ備え、ハイ、ロー、点滅の切り替えがつく。電池は単三一本のみなので、代え電池は一本だけ持てばいい。三本電池のものは三本持たなくてはいけないから、都合六本を持ち歩くことになる。

LEDが一つと言うことは、昔のマメ球ランプと同じ感覚で、陰影がわかりやすく、夜間の微妙な道探しにも断然優れている。LEDが沢山ついてるやつはなんか豪華で高級そうだが、比べれば陰影がぼやけとても見づらいことに気づくだろう。

とにかく明るいので頼りになる一台だね。欠点はと言えば、テントの中で明るすぎること。笑

こいつは登山ショップに行っても売っていない。ホームセンターに売っている。しかも、1,500円程。こんな良いことはない。


オピネルナイフ

2013年07月04日 | 登山道具考

 僕の愛用のナイフ、フランス製オピネル。非常にシンプルな構造で折りたたみ式。おまけに安価。炭素鉱を使っているのでとても研ぎやすく、いざとなったらそこら辺の石で研ぎあげる事も可能。ステンレスではないので手入れが悪ければもちろん錆びるが、研げば切れ味は最高、背筋がゾクッとする感覚が味わえる。わかる?研げば研ぐほどに愛着が増すのだ。木製の持ち手も柔らかくて心地よい。ステンレスは刃が堅すぎて素人さんに研ぐことは難しく、しかも切れ味もいまいちだと思う。最近オピネルからステンレスの製品が登場したが、あんなもん買ってはいけない。いったいどうしたんだオピネルじいさんよ!炭素鉱が良いに決まってるだろ?あんたが時代に迎合してどうすんだ?

 これはかれこれもう十数年使っているだろうか。いったい、何百匹の岩魚をさばき、何千本の魚肉ソーセージを細切れにしただろうか、こいつは。刃が大分チビてきて安全ロックが効かなくなりそうだ。それでも男は黙ってオピネル炭素鉱なのだ。


沢登りの装備

2013年06月24日 | 登山道具考

 沢登りはその装備の特殊性や、なにより濡れると言う事への抵抗感から、足を踏み出せない方が沢山お出でだと思うので先ずは簡単にご説明しよう。

 そもそも沢登りとは一般の登山道から離れ、沢を遡って頂を目指す行為だ。山というのは頂上や、整備された登山道だけで成り立っているわけではなく、その山体には岩稜もあれば、広大な斜面もあれば、沢という超魅力的な遊び場だってあるわけで、そういったものを多面的に考えてようやくその山自体を味わえるようになる。山をより立体的に感じるということだし、それを知ることは大きな喜びである。

 先ずは装備だが、一番大事な物は足回りだ。沢の履き物と言えば昔は「草鞋に地下足袋」や「フェルト底の騒靴」、そして現在はファイブテン社製のゴム底を貼った「ゴム底沢靴」などがある。地下足袋はお値段も安いし未だに愛用者もいないわけではないが、今や殆ど見かけることはない。なので、我々が現実的に選択するとなればフェルトかゴムかと言う事になるが、それらは用途によって使い道が若干異なるということになる。

 フェルトは沢中では万能選手といえる。ヌルミにも強いので、低山や日当たりの悪い沢では威力を発揮する。対してゴム底は、高標高な北アルプスなどの花崗岩系の沢の乾いたスラブなどや、河原歩きでバツグンのフリクションを生み出す。ゴム底で簡単に登れるところをフェルトが登れないということは良くあることだ。だけど、河床は毎日その環境が変わって、バクテリアが繁殖し濡れた石ころがヌルミを増すと、ゴム底はからっきし効かなくなったりする。そこら辺、悩ましい問題は尽きないのだが、僕はもっぱらゴム底を愛用しているし、フェルト底は直ぐチビてしまって不経済なので滅多に履くことはない。濡れている事を気にしなければ、ゴム底は沢までのアプローチや帰路の登山道歩きにも普通に履いて歩けるから装備の大幅な軽減に繋がる。フェルトは別途登山靴などを持ち歩かなければいけない。うーーーん、悩ましい。

 ここで、一つの光明ともいえる靴を紹介しよう。月星社製 「ジャガーシグマ」

みんな女の子らしく靴紐変えたりしておしゃれに

 この靴はそこら辺の靴屋さんに売ってるもので、学生の通学指定靴になっていたり、看護師が履いていたりする普通の運動靴だが、何を隠そう沢ではファイブテンのゴム底と同等の性能を発揮する。ローカットしかないので、しょっちゅう砂が入り込んだりするが、グリップ力は十分ですこぶる軽い。靴底が若干薄く柔らかいのだが、その柔らかさ故に、岩を巻き込み掴むように歩けるからグリップ力が良いのだとも思う。しかもお値段は3,500円ほど。買って損はありません。

 今回の釜ノ沢もメンバー7人中五人がシグマシューズ持参。帰りの登山道では、インチキっぽい白い靴を履いた異様な集団に見えるのだろう、すれ違う登山者に足下をジロジロ見られたりして。でも具合がいいので気にしない。尚、この靴を僕に教えてくれたのは、藤沢山岳会会員、毎日新聞旅行の添乗員、花岡さんである。花岡さんありがとう。

 さて次は衣類である。基本的には水切れがよい物ということになろう。以前は僕はアクリル製のジャージを使っていたし、淵にドボンするような沢でなければそれで充分といえる。ただ、上廊下とか泳ぎを交える沢になると保温力の高い物が必要のなるので、僕は薄手のネオプレーンタイツを使っている。モンベルとか、秀山荘などからいろいろなものが発売されているが、最近の登山用衣類はみんな水切れがいいから、先ずは専用の物でなくても済む。

装備はこんな感じ

 さあ、装備を整えたら、翡翠色の淵にドボンしよう。濡れるのに慣れてしまえば、それは気持ちの良いことに感じるようになるし、通常の縦走登山で濡れることをいとわなくなる。そして濡れた雨合羽や、登山靴をムシムシの乾燥室にこもって必死に乾かす無意味さを、皆さんは知るだろう。ちょいとしたカルチャーショックです。灼熱の夏、ひとたび沢登りを味わったら、稜線をフウフウ言いながら縦走するのなんていやんなってしまうから。これほんと。


沢靴について

2012年12月22日 | 登山道具考
沢登りには沢靴が必要ですが「これから先、沢登りはやらないし、わざわざ買うのはちょっと。」という方も多いかと思います。そんな方の為に、沢靴の代わりに月星社のジャガーシグマシューズをお勧めします。普通の運動靴なのですが、これが優れもの。沢専用のゴム底靴がありますが、性能的にはこれに互角の性能を持ち、非常に軽く、しかもお値段はの三分の一以下、3,000円から4,000円ほどです。私ももっぱらこれを使っています。もちろん普通の運動靴として使えますし、幌尻山登山などにも活躍することでしょう。

ダブルストックについて

2012年12月22日 | 登山道具考
最近山ガールとか、山ボーイだとか若い世代の人達が山に興味を頂いてくれて、登山の世代交代が起きています。その若い人達はほとんどダブルストックを持っています。でも果たしてそれは本当に有効な道具なのでしょうか?そりゃ登山用品店では売りたいわけです。私は長年山を歩いてきた経験上ある種の歩き方こそが、山歩きの極意だと思っています。それは「ナンバ歩き」というやつです。昔の侍の歩き方、柔道や相撲などの武道格闘技のすり足、能役者の足の運びと言えば何となくお解りでしょうか。要するに手と足を互い違いに出して歩く普通の歩行ではなく、右手と右足、左手と左足を同時に出して歩く歩き方です(大雑把な表現ですが)。格闘技全般、たとえばボクシングだって、右手と右足を同時に出して構えますよね。スキーだって実は同じです。それは脇を締め大きな力を生む為だったり、芯の通った重心を素早く移動するためなのです。登山の一歩はこれによく似ています。次のステップにすっと重心を乗せ換え続ける行為が登山です。ところがダブルストックはその重心の感覚を曖昧にさせます。両手両足バラバラに使って何とかしている訳です。その曖昧なバランス感覚からダブルストックを取ったら・・・・・そりゃ不安定で怖いですよね。軸の感覚が身についていませんから。ちゃんとしたバランス感覚を持った人が補助的にダブルストックを使うのは問題ないと思いますが、それを身につける前にアレを持つのは賛成出来ません。ナンバ歩きは雪の歩行や、ザラザラ、ガラガラした場所、急な登降には欠かせない技術です。慣れた人は自然にやっている事なのですが、なかなか言葉では伝え切れません。また山でお目に掛かった時「ナンバ歩き」を体感しましょう。

CWXについて

2012年12月22日 | 登山道具考
最近の流行の登山用具と言えば、デジカメ、ダブルストック、CWX。それぞれの道具に良いところ有り、困ったところあり。

私はCWXを身につけた事はありませんが、大変具合が良い物だと聞きます。筋肉の引き締め効果、静脈血を速やかに心臓へと送り返すポンピング効果、足下もすっきりスタイリッシュに山を駆けめぐるその軽快感。かっこいいですよね。でもね、「隠れCWX愛好者」も結構いらっしゃる様です。つまり、CWXを下着の様に身につけて、その上に普通のズボンを履いている方。えっ?何がいけないのかって?・・・・・・ズバリ暑いんです。夏の高温多湿の登山中、オーバーヒートで足がつったり、熱中症になったり、その当事者には「隠れCWX愛好者」がとても多いのが事実です。CWXは下着ではありません。そのまま履いて山を駆けるのが粋ってもんです。「だって恥ずかしいもん」と皆さんはおっしゃいます。いえいえ、そんなことはありません。中高年の方がCWXで颯爽と歩く姿は、とてもイカすものです。これから寒い冬ですので履くなとも言い難いのですが、是非二枚履きはやめましょう。