山岳ガイド赤沼千史のブログ

山岳ガイドのかたわら、自家栽培の完全手打ち蕎麦の通販もやっています。
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有明登山案内人組合創立百周年記念燕岳登山参加者大募集

2018年09月05日 | ツアー日記

私が所属する有明登山案内人組合は大正7年、燕山荘創業者赤沼千尋によって組織され、日本では二番目に古い山岳ガイド組合とされていて、今年創立100年を迎えました。
一口に100年と言ってもその歴史は長く、悲しい出来事なども実はあったのですがここまで山を志すもの達の情熱が 続いて来たことを私も誇りに思っています。

と言うことで、9月30日(日)〜10月1日(月)に記念登山ツアーを行います。我が案内人組合の名物ガイド達が楽しく皆さんを御案内します。地元のガイドならではの御案内が出来ればと思っております。
もちろん私も参加の予定です。
なおこのツアーには今をときめく後藤郁子デザインの限定100周年記念手ぬぐいのプレゼント付です!
ふるってご参加ください。 

お申し込みは安曇野市観光協会まで

 

 

 


槍と星

2018年08月28日 | ツアー日記

 先日は常念山脈からの槍ヶ岳を堪能したのだが、今回はとうとうその穂先に立つことが出来た。
今年の猛暑が少し一段絡した日のことだったので、例年通りの気温でなかなか快適に槍沢を登ることが出来た。
それにしても、山というのは例えそれがどんな低山でも頂上直下というのはあえぐようにきつく、早くあの天辺に立ちたいと、身も心も焦がれて苦しむものだが、 ここ槍ヶ岳は特にキツイ。
やっぱり3000メートルの世界は少し違う。
2500メートルとは雲泥の差だ。
一歩一歩進める脚は鉛のように重く、呼吸を深く心がけても、十分な満足感はえられず、息も絶え絶え ただひたすら己の肉体との会話に没頭しなくてはならない。
当然お客さん達もキツイはずだが僕もキツイ、おそらく苦悶の表情を浮かべたまま後をふり返ったのだが、幸い全員下を向いてそれぞれの肉体との会話に没頭なさっている様で誰にもそれと悟られずにすんだ。
「さあもう少し、がんばれー!」
と大きな声で檄をとばしたら、 槍沢カールに僕の声がこだました。

 山荘到着後、槍ヶ岳の天辺を往復してきて部屋にはいって寝転がると、窓から槍の穂先が丸見えだった。
「ふう、なんて良い部屋だ。」

 陽が西に傾いてくると次第に飛騨側には雲海が入り、満ちて溢れた雲の波がこぼれる様に西鎌尾根を乗り越していく。
雲の流れが速く目で観てもその流れがわかるほどの滝雲だ。
傾く太陽は徐々にその力を失って、ふり返れば岩だらけの槍ヶ岳の穂先は茜に色づいてそれでもなお胸を張りスクと立っている。
この世のものとも思えない美しさだ。 
思い起こせば怪我をする前、仕事が終わると飲んだくれては夕焼けなどはチラと観たらハイ終わり、ご来光もやはり二日酔い気味の僕にはほぼ無縁で、ギリギリまで惰眠を貪るのが常だったが、これからは少し改心して写真なども沢山撮ってみるか。
さて、いつまで続きます事やら、請うご期待。 

 気分が良くてやっぱり少し飲み過ぎた僕は早々消灯前に撃沈したせいで夜半には目が醒めてしまった。
月は西に沈んはずだなどと布団の中で思いながらさっきの素敵な窓から槍を見上げると、空は綺麗に晴れて天辺に星が降り注いで居る。
「うわー、行かなきゃ」
僕はトイレをかねて撮影する決意を固めた。 
外には他にも寝付かれない人達が結構いて、撮影をしたりたベンチに座ってただだまって空を見上げていたりしている。
それにしても凄い星の数だ。
ぼんやり雲のように見える帯はまさしく天の川だ。
「うわーすげー!」心の中でつぶやく。
一枚撮る度に液晶画面に映し出される星空の写真には、肉眼で見えない世界まで映し出されて、その度息を呑んでしまうほどだ。
しかし、 撮影前の液晶画面には暗すぎて直接夜空は写っていないのでアングルを決めるのは至難の業で、一枚とっては微調整して感で撮るしか無い。
流石にここまで来ると街の光も殆ど気にならず、空は暗く深く辺りは漆黒の闇だ。
遠く宇宙の隅々からやってくる光が時を越えてここに集っている。
「すげーな、全く。」
夢中で何枚も撮影した。
気が遠くなったところで冷えた体を布団に滑り込までせて再び朝までの短い眠りについた。 


追伸:星空の写真にアンドロメダ大星雲が写っています。さあ、どれだかわかりますか? 
ほんのお隣の銀河です。とは言っても254万光年離れているそうです。
つまり、光の速度で254万年かかる距離って事ですね。
アンドロメダ銀河は我々の天の川銀河と急速に接近中で、秒速300㎞の速度で近づいていて40億年後にはこの二つの銀河は衝突しやがて一つになるのだそうです。

あわわっ 

 

 

 


あぐらをかきながら

2018年08月16日 | ツアー日記

 昨年一年間は僕にとって空白の一年間となった。
五月末に富山の毛勝山を下山中シュルンド(雪渓が融けるのに伴って出来る雪の穴)に五メートル落ちて脊椎を破裂骨折し二ヶ月の入院、その後、上半身をガチガチに固めていたプロテクターが外れたのは12月の初めだった。
とはいえ、僕の背骨は全く万全ではなくて、少し負荷がかかるとギリギリとした違和感が背骨を走るのだった。
横になっていて起き上がるのにも先ずグルリと寝返りを打つ要領でうつ伏せになり膝を立て、手を伸ばしてから立ち上がる。
チタンプレートとボルトで固定した背骨は曲がりにくく、体をねじる事は主治医に禁止されていた。
長時間椅子に座ることさえ辛くて直ぐ横になりたくなるし、背骨を丸く曲げなければならないあぐらはかけなかった。
とにかく、自分の背骨が信用ならず、もし転んだら接合部分が外れてしまうのではないかと言う不安がいつもつきまとった。

そんな僕だったが怪我から一年を経過してみると、そんな漠然とした不安を感じることが 段々と減って、背中の違和感もいつの間にやら無くなって、草刈り機を背負って畦道の草刈りをしたりちょっとした力仕事もこなせる様になってきたし、ボチボチだが山にも登っている。
ようやくチタンプレートと仲良くなれてきたのかな?

手術直後不安だらけの僕に主治医が言った、
「手術は成功したし、二年はかかるけど、また普通に山登れるよ。だいじょぶ、だいじょぶ!」 
実際そうなってきているような気がする。
今でもあの時の事を思い出すと 底知れぬ恐怖が蘇ってくる。
それにしても僕は本当に運がよかったのだ。
今あぐらをかいてこれを書いている。 

 

 


初めてだぞ!クリンソウの水中花

2018年07月24日 | ツアー日記

先日の西日本豪雨のころ仙丈ヶ岳のツアーに出かけ北沢峠にバスで到着してびっくりした。

北沢峠は標高2,032mの南アルプス北部にある峠で、甲斐駒ヶ岳や仙丈ヶ岳への登山口となっていて、両側から斜面が迫り針葉樹の巨木に囲まれた谷間のような場所なのだが、その中心に船窪型の地形がある。

そこにはなんと、一面のクリンソウが!

ただびっくりしたのはそれだけではない。

なんとなんと、よく見ればその船窪地形には連日の大雨で水が溜まりそのお花畑の半分ほどが水没しクリンソウが水中花となっているではないか!

なんじゃこれ!である。

クリンソウは日本原産のサクラソウ科の多年草でどちらかというと湿り気のある環境を好んで生育する。

これだけのクリンソウのお花畑に遭遇したのも初めてだったが、それが水中花とは。

しかも水没したクリンソウは、おそらく彼らの本意ではない環境に於かれているにも関わらず、凛としてなんとも美しい。

果たしてこのクリンソウ達は無事に実をつけることが出来るのだろうかと心配にはなるが、実に珍しいモノを観ることが出来た。

あちこち色んな季節長い間山を歩いてきたが、初めて出会うものってまだあるんだなあと思ったのだった。

 


槍ヶ岳三昧

2018年07月22日 | ツアー日記

ボチボチと仕事に復帰して、楽ちんルートをやらしてもらっている。
常念岳〜蝶ヶ岳ルートは意外と来たことが少なくて、久々に歩く稜線はとても新鮮だった。
2日目の朝常念岳を超えると、ルートは大きく降り一旦樹林に入ったりもするのだが、そんな場所に広がるお花畑は今や百花繚乱。
地元の山とは言え燕岳辺りと雰囲気も随分違うもんだなあと感心しつつ蝶ヶ岳に向かった。
今年の猛暑は張り出した太平洋高気圧の上層にチベット高気圧がのしかかる事で起きているんだそうで雲がわきにくく、稜線はずっとギラギラの太陽に照らされている。
喘ぐように登り、少しでも涼しい場所を見つけては涼を楽しむ。ほんとこの空気を里に持って帰りたいわ。
僕の住む安曇野穂高あたりは、松本盆地の底にあたり、夏には県内最高気温を記録する事もたびたびだ。
日が沈めば涼しくなるのだが、日中の暑さはハンパ無い。
今日も暑いんだろうなとか、先日蒔いた大豆は芽が出るかなとか、ハナちゃんは(犬)やる気ゼロなんだろうなやっぱとか考えつつ歩いた。

夕方立ち上がった積乱雲を夕日が染めた。
それを眺めつつ脱水になった体にビールが悪魔のように旨かった。

最終日三俣に下山、標高が下がれば当然熱くなるのだろうと思っていたのだが、巨木の原生林の中は思いの外涼しくて助かった。
緑が持つ冷却機能ってやっぱすごいんだな。

今年の春林道が崩落して三俣から二キロほど下ったところが仮設の登山口となっている。そこには登山相談所があって救助隊仲間のN君がチョコンと座っていた。そして僕の顔を見つけるなり
「赤沼さーん、ちゃんと歩いてるじゃないすか?ずりーな、ずりーー!」
と彼。
N君は長年の登山活動で膝を痛め、現在登山は極々控えめに、時々ある救助活動とボルダリングぐらいしかできていないのだそうだ。
僕が怪我をしたことを聞いて同じ故障者仲間だと思っていたらしい。
「おいおい、そう言う時は『よかったすね!快復おめでとうございます!』と言うもんだよ君」
と諭しておいた。

山はすばらしいものだ。
こうしてまた山を歩けるようになったこと、心からうれしかった。

 

これは多分国際宇宙ステーション、めちゃ明るくて高速で移動していた

 

 

 

 


安曇野山岳フェスタ2018

2018年07月06日 | ツアー日記


突然ですが、明日明後日と安曇野市穂高会館にて安曇野山岳フェスタが開催されます。
今年は私が所属する有明登山案内人組合の創立百周年も取り上げてくださり、記念のサコッシュ(小さなポーチ)と手ぬぐいの販売を行います。
私は両日とも会場にいる予定です。
8日午後1時からは有明登山案内人組合創立百周年記念公演として、世界的海洋冒険家白石康次郎氏と私との対談がございます。私の話など取るに足らぬものですが白石さんの話は是非お見逃しなく。
恥ずかしながら多数の方のご来場をお待ち申し上げております。

こちらの画像をクリックしてHPにどうぞ ↓↓↓

 

 


怪我のこと

2017年12月07日 | ツアー日記

久々の投稿です

実は僕は五月の末にシュルンド(雪渓に出来た穴)に落ちて二ヶ月の入院を経て自宅療養をしていました。
診断では第一腰椎の破裂骨折とのこと。
4メートル墜落すればタダでは済まないですね。
かろうじてシュルンドから自力で脱出出来たのですが、出来なかったら僕はもしかしたら低体温症で息絶えていたかと思うとぞっと致します。
潰れた第一腰椎を出来るだけ膨らませてから、健全な上下の脊椎とプレートとボルトで繋ぐという手術は五時間近くに及びました。
ついでに骨盤の一部を削り取った骨片で補強もされているんだそうです。
すごいですよね

そして術後半年の12月5日、この日の検診にて異常は見られず、風呂に入る時以外ずっとしていたコルセットをいよいよ外すことになりました。
ずっと僕の痛めた背骨を護っていてくれたコルセット、来る日も来る日も一緒でしたから、最初ちょっとした不安がありましたが、しばらくすればそれ以上にしっかりと僕の体を支えてくれてる背骨の確かさを感じるようになりました。
怪我をする以前と変わらない感じで僕は歩けているんじゃないかと思います。

脊椎の強度はまだこれから徐々に上がっていくそうです。
ですから、まだ道半ばと言うところですが、衰えた筋力を鍛えつつ完全復活を目指します。
ご心配下さった皆様誠にありがとうございました。


雪洞泊、深雪を頂く

2017年03月13日 | ツアー日記

3月になって戻ってきた寒気が北アルプスにまた雪を降らせた。

栂池ロープウェイを降りてスキーにシールを貼り付け歩き始める。

さーて、雪洞はどこに掘ろうかなあとしばらくウロウロした。

掘り出した雪を捨てるのには、ある程度の傾斜があった方が楽なので栂池自然園の縁にあたる場所をそこと決め掘り始めた。

先ずは表面に積もった新雪を押しのけてその下のクラストした雪面を出す。

四角くスコップを突き刺して少しスコップをこじるとバコッと30センチ角の雪ブロックが気持ち良くとれた。

こりゃいいや。

お客さんの二人の女性にも手伝ってもらって2箇所から掘り進め中で合体させる建設計画だ。

掘っては外に放り出しまた掘っては放り出す。

中に行くと結構固いところがあって苦労したが、ほとんど休むことなく2時間。

今日のお宿は見事落成した。

縦長の三畳程のその空間は必要にして充分。

栂池自然園駅より徒歩五分、雪洞泊には絶対かかせない蝋燭を立てる燭台を三つ完備、物置付の1Kだ。

雪洞を掘り上げてからまだ時間があったので天狗原方面に滑りに出かけた。

今朝方誰かが踏んでくれた踏み後を辿ってハイクアップ出来たので助かった。

お客さんのお二人は雪洞もそうなのだが、新雪滑りもは初めてとのこと。

しかも、降り積もった雪は40センチ程ある。

果たして、滑れるだろうか?

少し不安がよぎったのだが、僕の心配は無用だった。

今回の新雪はとても軽くて板がストレスなくよく回った。

初めての深雪滑りでこの雪は大当たりだとおもう。

年に一回あるかないかの軽く深い雪。

二人には深雪滑りのこつを少し教えただけなのに、最初少し戸惑いながらもみるみる滑れるようになったのだ。

風は殆どなく静かな夜だった。

僕たちが掘りあげた雪洞の中は更に静かで、燭台に灯したキャンドルの炎が音もなく燃え、掘り出した多面構造の壁面を美しく照らしだす。

うっとりするよなこの雪洞の世界。

雪洞って寒くないのですか?と良く聞かれる。

はて?

暖かくもないが寒くもない。

それが答えだな。

コンロを炊いてもテントのように室内は暖まってはくれない。

お湯が沸けば室内は深い霧に包まれる。

難儀なこともあるにはある。

だが、例え外が荒れ狂う吹雪の夜だとしても僕らはそれを知らずに眠ることが出来る。

湿度が相当高いので寒い時期の方がより快適だろう。

あれこれ作りながら熱燗を頂く。

静かに静かに雪は降り続いた。

朝目覚め外に出ると、更に30センチの積雪があった。

身支度を調えハイクアップする。

板が踏みつける新雪がふわりと舞い上がるほど昨日以上に軽い雪だった。

この二三日で降り積もった雪は70センチ程あるだろう。

ロープウェイの運行はまだまだなのでこの大斜面は僕たちだけの世界だ。

天狗原まで殆ど踏み後もなくなった斜面を喘ぎながら登り上げて先ずは1本目。

腰まで潜る程だが板が楽しく回るしスキートップがあげる雪がゴーグルの顔面を直撃して前が見えない。

いわゆるオーバーヘッド。

気持ち良すぎだ。

さすがにいい歳こいてヒャッホーとか声は上げないが心の中では笑いが止まらない。

滑り終えるとまたハイクアップしてすかさず2本目。

シールに雪が付着してスキー板への張りつきが悪くなってきたのを何とかして更に3本目。

お客さんお二人もだんだん思い切りがよくなって、なかなかうまいことやっている。

はじめてでこれはないでしょ?

70センチであれはないでしょ?

初めてでオーバーヘッド滑っちゃうの?

 

さんざん滑ってから雪洞にもどり荷を担いでゲレンデを下山した。

夢の様な二日間。

復活なった倉下の湯に久しぶりに入る。

飯森の山人にて蕎麦をたぐり、穂高駅解散。

みもこころも、さっぱり!

はあ、最高だったね。

 

 

 

 

 


NHK金とく日本最後の秘境・黒部源流~清流の最初の一滴を求めて~地上波全国再放送

2016年09月24日 | ツアー日記

ここのところがそうなんですが、そういえば昨年のあの時も連日の雨、雨、雨、雨

いったいこれは番組になるのかなあと金子さんはじめスタッフ全員が思っていたその時、奇跡的にも僕たちの上空には青空が広がったんです。

本当なんです。

その昨年放送されたNHK「金とく日本最後の秘境・黒部源流~清流の最初の一滴を求めて」がとうとう地上波全国放送なんだそうです。

あーまいったなあ。

なんか高天原温泉では金子さんと僕の入浴シーンまで。

こまるなあ、ほんとこまる。

というわけで、全く消極的に番宣します。

取り敢えずこういう事です

ご無沙汰してます。 番組再放送のお知らせです! 9/27 14:05〜14:55(総合・全国) の枠で、 「金とく 日本最後の秘境・黒部源流〜清流の最初の一滴を求めて〜」 を再放送します。 1年経ってついに地上波全国放送です! 国会期間中で、もし国会中継が当日に入った場合には、⑵9/28 ⑶9/29 ⑷10/6の候補日の順に同時間帯に放送を行います。 実は今年の夏、後輩と黒部源流まで歩いてきました。今回は高天原温泉にも泊まり、温泉沢から水晶岳も登り、雲ノ平では熱を出すこともなく二朗さんとは飲んで語り、改めて素敵な場所だって感じられました。 東京に転勤して、毎日目まぐるしく忙しく、急にできた休みを利用しての登山で、本当に心洗われました(・・;)

以上、制作を取り仕切ったディレクターからのメールです。

宜しければご覧ください。

あーこまる。

 


有明山登山道を守る

2016年06月09日 | ツアー日記

僕が所属する有明登山案内人組合では、我等が心の山有明山の登山道整備を毎年行っている。
草刈りやら足場切り、崩壊箇所の補修、ペンキマークつけ、鎖やロープの設置、梯子架けなどやるべき事は多い。
有明山は三本の登山道を持つが僕らが整備するのは表参道と呼ばれる黒川沿いのルートと裏参道と呼ばれる中房温泉への下山路だ。
最近では高低差の少ない裏参道からの往復登頂が増えている。
やっぱ楽だからね。
でも、なんと言っても有明山へ登るとなれば表参道からというのが最もドラマチックで深くそして、キツイ。
多くの登山熟達者は山はキツクないと満足出来ないという気の毒な方々だから、そんな方々には是非このルートからの登頂をお勧めする。
この表参道は黒川沿いを何回か渡渉をしながら登って行くので、やはり沢沿いということもあって、一旦大水が出ればなにかと不都合が起きてしまうのだ。
古くからの信仰の道、先人達が大切に維持してきた道なのだが、当時この道の管理をしていた有明山神社が暴れる川の猛威に負けていったんは左岸の尾根へルートが付け替えられた事があった。
しかしこの道もアップダウンが激しく決して快適とは言い難いルートだった。
そこで有明登山案人組合がこのドラマチックな黒川ルートを調査し復活させようということになり、以降僕らがこの道の補修作業を行う事になった。 
 
 
 
 林道終点から丸木橋を渡って対岸の森へ入る。
周囲にはあがりこサワラと呼ばれる巨木が林立した苔むした原生林だ。
最初穏やかなこの道も上部へ行くと傾斜が増し、数回渡渉を繰り返すと現れるのが右岸から落ちる妙見の滝。
ここから谷は狭まり川の側壁は垂直に立ち上がり、流心には高さが20メートル程有る巨大なチョックストーンが立ちはだかって僕らの行く手を阻む。
この左岸の弱点を突いた登山道の補修が今回の作業場所だ。
巨大チョックストーンと側壁の間の水流のある割れ目に流木を利用して梯子をかける。
昨年の大水で水流が変わり現在では本流がこの割れ目を流れ下っている。
途中から水流はチョックストーンの下へ吸い込まれていて、平水なら全く問題のない水量だが一旦増水するとかなりの水流がこの割れ目を流れ下る事になるだろう。
梯子掛けには巨大な流木を使ってガッチリ組み上げる事にした。
完成した梯子はとても快適だ。
階段状に難なく登り上げることが出来る。
うれしくって何度も登ったり下ったりしてしまった。
史上最高の出来映えだと自画自賛しておこう。
 
 
 
 
表参道はここから昨年造った高巻き道を経て白河の滝に至る。
ここからは沢から離れて鎖やロープを伝って急登を登るとポンと尾根に飛び出し松川村馬羅生道をあわせる。
山頂へは更に急登が続く。
据えられてからかなりの時間が経ったであろう祠が沢山有って、風雪で変形した栂の木や黒くざらついた花崗岩の尾根は霧でも巻けばまさしく修験の道、仙人の世界だなあと僕らに思わせてくれる。
果てしなき急登の先には素晴らしき北アルプスの眺めと眼下の安曇野。
お勧めいたします。是非登って下さい。
下山は楽ちん?裏参道を通って有明荘で入浴でもどうぞ。