山岳ガイド赤沼千史のブログ

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カメラ

2014年10月20日 | 登山道具考

これを撮影したのはPENTAX K-01+ FA43mm f1.9 ふざけたデザインのミラーレス機ですが、写りはk−5を凌ぐかも。レンズはkマウントでK−5と供用(生産終了品)

お寄せ頂いたコメントで使用機材についてご質問を頂きましたので、ご披露させて頂きます。

カメラボディーはPENTAX K-5です。

防塵防滴、金属筐体の頑丈なAPS-C機(センサーサイズ)です。

メーカーの動作保証はマイナス10℃ですがマイナス20℃の長時間使用でも問題なく使えています。

 

山の写真に関しては、レンズは殆ど全て単焦点レンズを使っています。

ご質問頂いたakirajさんのおっしゃる通り、ガイドという仕事柄、アレコレ機材を山に持ち込む事は出来ませんので、機材は最小限にとどめています。

その中で選んだ山の一軍選手はPENTAXのDA15mmかDA21mmで、このどちらかを持っていきます。

花の時期などはこれにDA35mm Macroを加えて持ち歩きますが、どれか一本だけとなると、21mmですね。

21mmは画角的に風景から花まで結構やります。

ペンタックスの単焦点レンズはとてもコンパクトで、カメラの出っ張りが小さくできるので、下の写真右側のLOWE PROのカメラバッグに入れて、ザックの腰ベルトに取り付ければ、コンパクトカメラを扱うのとさほど変わらない感覚で使えています。

歩きながらさっと抜いて露出をきめて、立ち止まって二秒でパシャッとね。

下の写真左はカメラ専用バッグではないと思いますが、防水なので雨の日も安心です。

とにかくいつでもさっと使えるようにしておいて、心が動いたら取り敢えず撮る感じです。

あと、星の写真やら、朝夕景などを撮るのにミニ三脚を用意しています。

カメラとレンズが小さいからこんなのでなんとかなります。

インチキな三脚でもあるとないでは大違いで、効果絶大です。

 

単焦点レンズはピントの切れが良くて、ボケも綺麗ですから大好きです。

もちろんズームは出来るわけありませんから、大きく撮りたければ被写体に近づくか、広く撮りたい場合は歩いて遠ざからなければなりません。

でも写りが良いので、広く撮っておいてパソコン上でトリミングしてもインターネット上ではあまり問題を感じません。

ズームレンズも持っては居ますが、図体デカイし重いし、写りもイマイチ納得出来ないので、山には持っていきません。


若い頃、今は亡き義父が使っていたPENTAXを譲り受けて一眼レフを始めました。

他のメーカーは知りません。

でも、PENTAXの楽しいところは、なんと言ってもその単焦点レンズのコンパクトさと豊富さだと思います。

しかも、五十年も前のレンズだって、未だにちゃんと装着できて、絞り優先露出なども可能なのです。

古いレンズもそれぞれ味わいがあって、長年買い足して来たその子達を手放して他のメーカーに行くことも出来ませんから、これからもずっとPENTAXなんでしょうね。

あっちこちぶつけてボコボコですが、そんなラフに使える感覚のPENTAXは大好きです。

会社が潰れないことを祈ります(笑)

 


マルタイラーメンの勧め

2014年04月26日 | 登山道具考

「マルタイ棒ラーメン」ご存じだろうか?福岡市に本社を持つ即席ラーメンメーカーである。通常のインスタントラーメンは大概縮れ麺だが、マルタイラーメンの基本は長浜ラーメンだから、麺は細くストレートなのである。そのパッケージはまるで素麺の様だ。このコンパクトなパッケージが山の食料として重宝がられ、昔から山ヤのラーメンはマルタイと相場が決まっていた。大定番である。大手が作る通常の縮れ麺の袋麺はザックに詰め込まれると、それを食べるころにはすっかりバラバラになってしまう。出来上がったものはもはやラーメンではなくて、限りなく雑炊に近い食べ物になってしまう訳だ。そこへ行くとマルタイはコンパクトに纏まったパッケージだから壊れにくく、過酷なザック内環境を耐え抜き、結果僕等はラーメンをラーメンとして食べることが出来る。

 味は現在の濃厚豚骨系長浜ラーメンとは違って透明スープでとてもあっさりとしている。もしかしたら初期の長浜ラーメンはこんな味だったのではないだろうかと思わせる。麺はノンフライだからアルデンテで仕上げると小麦の風味が香ってとても美味しい。大手の旨味調味料たっぷりの物に比べて、インスタントラーメンだけれど、とても自然な食べ物の様に感じるのは僕だけだろうか。罪悪感が少ないと言うか、後味が変な物を食べたような感じがしないのだ。

 山での作り方は少し難しくて、多めの水と火力は全開でと言うのが基本中の基本だ。山の上では沸点が90度位にしかならないので、少し表面がどろっとした感じになってしまうが、それは仕方が無い。へたすると、スープを全部吸っちゃって世にも恐ろしいラーメン団子になってしまうから要注意。時々失敗するそれも、ずっと慣れ親しんだマルタイの味だ。

 ところがこのマルタイラーメンが今経営の危機に瀕しているという。もしかしたらマルタイ棒ラーメンが店頭から消える?最近カップヌードルリフィルに浮気をしていたとは言え、マルタイが無くなってしまうとしたら、僕は黙っていられないのだ。

 実は、この「マルタイ棒ラーメン」という存在について、僕は以前から不思議に思っていた。山ヤの食料としては大定番ではあるが、これを日常で食べる人がいると言うことに少なからぬ違和感を感じていた。結構そこら辺のスーパーの袋麺コーナーの一番端っこ置いてあったりして、見かける度に少し安心するのと、いったい誰が買うのだろう?という疑念の気持ちが入り交じって、いつも僕はそれを見つめていた。「もしかしたら、九州から転勤などでやって来ている人が意外と大勢いるのかなあ?」とか。そこら辺の謎は未だに謎のままだが、近所のスーパーの店頭から消えてしまうのは困るし、会社が倒産してしまうのも困る。だから、せっせと購入しようと思うのだ。知らなかったが長崎ちゃー麺とか、チャンポンとか冷やし中華とかいろんなバージョンもある様だ(知らんかった、ワクワク)。山ヤの間では箱買い運動も広がって居るようだ。皆さんも箱買い如何でしょう?場所とりませんよ。

追伸:友人からの情報、もつ鍋のシメに入れるとバツグンに美味いと言うことですよ(やっぱね)。今度やってみよう。

詳しくは以下をご覧ください。

Jキャストニュースマルタイラーメン

マルタイラーメンHP


「買ってはいけない!」のかも知れない

2014年03月30日 | 登山道具考

 冬山の必需品、ワカンである。かつては芦峅寺カンジキに代表される様に籐製のものが主流であったが、最近はアルミ製のものが殆どである。同じような機能をを持つ道具としてスノーシューがあるが、日本の冬山を自在に歩くには不向きで、どうしても軍配はワカンに上がる。スノーシューは大きく、急斜面やトラバース、堅い雪面ではからっきし役に立たなくて、結局その重いお荷物をただずっと持ち歩かなくてはならなかったりする。道具は使い様だから、これから自分がすることに対応してその日の道具を賢くチョイスしなくてはならない。僕の場合登山は全てワカン、スノーシューは雪の日帰りハイキング用と考えている。

 ところでそのワカンについて。上の写真は左が EXP OF JAPAN製、右は MAGIC MOUNTAIN製だ。そのEXP OF JAPAN製、これが問題だ。登山ショップでもよく見かけるこれ、というか、これしか置いてなかったりもする。僕はレンタル用にこれを4台所有している。購入してから5年ほどである。ほぼレンタル用だから使用頻度はさほどではないのだが、ふと気がつくとその全てがガタガタたになっているではないか。見ると前後の輪っぱを繋ぐカシメの頭が吹っ飛んで何本かなくなってしまっている。前後の輪っぱを繋ぐパーツはこのカシメのみだから、最も大事な部分だが、その強度がなさ過ぎるのが原因だ。4枚目の写真はMAGIC MOUNTAIN製だが、見るからにカシメの質が違うことがお解りかと思う。仕方が無いので見合ったボルトナットを取り付けて余分なボルトを金ノコで切断し、その頭を金槌で叩いてナットが緩まないように自分でカシメて修理をした(3枚目)。

 この EXP OF JAPAN製を使っている友人ガイドがいるが20年近く使っていると言うことだが、全く問題ないという。だから、その全てがダメな製品とは言い切れない。僕がこれらをまとめて購入した時期の製品が特別粗悪なものなのかも知れないが、ご購入に当たってはよくそのカシメ部分に注目して頂きたいと思うのだ。 

あまりにも貧弱すぎるカシメ

この後ボルトの余分を切断し頭を金槌で叩いてカシメて仕上げる

MAGIC MOUNTAIN製のカシメ、しっかりしている。全体の重量はこちらの方が重い。

 


使えるゴム手袋「テムレス」

2014年03月27日 | 登山道具考

 

 登山道具考と言うカテゴリーを開きながら、まともな登山用具についてあまり語る事はないのだが、今回もそんなサブカルチャー的登山道具をご御紹介。

 先日行ったBSTBSのロケの仕事で同行してもらった加島ガイドに勧められ、この間の白馬岳雪洞ツアーで使用してみたこのゴム手袋「テムレス」という。その名の示すとおり、「手蒸れがレス」なゴム手袋。ホームセンターに売っているなんの変哲もないゴム手袋である。

 ただ、こいつは凄い。ゴム手袋のくせに、3時間に及ぶ雪洞堀でもその中は殆ど蒸れることなく世紀の大工事をやり遂げた。この手の手袋は今回のような雪洞堀りや、冬の水造り等の時に必要なので必ず持って行く。だが、どうしてもその中は湿気で蒸れて、終いにはものすごく冷たくなってしまうものだが、こいつはへっちゃらなのだ。雪洞堀りと言えば、相当な体力を使うし、手の発汗量もハンパないと思うのだが、何となくしっとりしてるかなあ?程度ですんでしまった。

 これからやってくる湿った雪や冷たい雨の季節、これがあれば心強い味方になる。おそらく夏だって手を濡らさずに行動できるのではないか?これは画期的なのではないかと思うのだ。ほんとすごいから是非使って見て頂きたい。ホームセンターの作業用衣料品コーナーで500円ぐらい。ゴム手袋としたら破格に高いのだが、価値あります。

PS:これを出してるメーカーはもったいないなあと思うのだ。少し格好いいデザインにして山用品とか、スポーツ関係で売れば5倍ぐらいの値段で売れると思うのだが。でもこんなのが日本の職人魂の産物だとも思う。


「テバナ」という冬山技術についての考察

2014年03月10日 | 登山道具考

この超格好いいサングラスはuvexのKさんに頂いた高級サングラス。こんな記事のさなかに登場させてKさんごめんなさい。とっても具合が良いですよ。uvex最高!

 僕は悩んでいる。前回の西穂 ロケの投稿を・・・・・つづく、とくくったのだが、続きを書いてしまうと番組を皆さんに見て頂くに当たって、結末をばらしてしまう事なるので、それはいくらなんでもまずいのでは無いかと。と言うわけで、今回は冬山技術についてのお話。

 忘れ去られようとしている大切な技術に「手鼻」と言うものがある。最近の若いもんに(とうとう僕もこんな言葉を使うようになってしまった)手鼻なんて言っても気持ち悪がられるだけで、その生涯で一度もやったことがない人も結構いるのではないかと思う。だがこれは、冬山をやるに当たって大切な技術となるのである。手鼻が技術?・・・・・そうだ、手鼻は技術である。親指で片方の鼻の穴を空気がもれないように押さえ、これから放出されるものが自らにひっかからないように体をくの字に曲げ、勢いよく腹式呼吸でもってブイっとやる。解放されている鼻からは一気に鼻水が放出される。片方が済んだらもう片方だ。

「え~~~~!!ぎゃ~~~~!!やめて~~~~~!!汚ね~~~~~~!!!!!」

そんな無粋なことを言わないでほしい。この冬山での鼻水問題は皆さんの日常の行動パターンで解決しようと思ってもそれはそう簡単には行かないのだ。冬山では寒気から鼻の中の粘膜を守るため、常に鼻水が分泌される。呼吸することに因って暖かい呼気が急激に冷やされ鼻の入り口辺りに結露もする。よって、これを時々綺麗にしてやらないとハダガズビズビニナッデシバウ(鼻がズビズビになってしまう)。だから鼻を嚙むことは冬山では必須なのだが、これをちり紙でやったとしよう。分厚い手袋をしたまま胸ポケットに入れたティッシュの袋を取り出して、ティッシュを数枚引き抜く。激しく吹く風の中、猛烈に暴れまくるそのティッシュを鼻にあてがい鼻を嚙む。噛み終わったら、それは風と共にそこらにまき散らしてはならないから、飛ばされないように細心の注意を払って再びジャケットの胸ポケットに収納する。これで一連の鼻噛みは終了だが、果たしてそんな事やってられるだろうか?僕にはそんな技術はない。また、他のメンバーのそんな行為の為に待たされる事もまっぴらだ。

 では、どうするかと言うことになるが、どうしてもちり紙のようなもので鼻を嚙みたい人はハンカチを利用すると良い。ハンカチの角にゴム紐でループを縫い付け、それを手首に通して風に飛ばされないようにして、不要の時はオーバーグローブの中に収納すればよいのだ。でもこれ、確実にバリバリに凍りますが。

 では、これをやっていない人達はいったいどうやってこの問題を解決しているのだろう。手鼻は絶対にしない、ちり紙は現実的ではない、ハンカチは取り付けてない・・・・・・・・・となると、あとはどんな手段があって、実際のところ皆さんはどうしていらっしゃるのか(特に女性など)・・・・・・・・・これは冬山の七不思議のひとつなのである。

 スキーグローブなどで、親指の付け根辺りに柔らかい布が貼り付けてあるものが存在する。聞けばそれは鼻水を拭き取る為のものだと言う。なるほど、それは気が利いてるね。だけど、それは行動中に何度も解決しなくてはならないこの問題を充分受け止めてくれる程のパワフルな吸収力がある感じではないし、終いにはその部分がテカテカ光り出すのもなんかいやだ。

 と言うことで察しの良い皆さんならもうお解りであろう。「手鼻」こそこれらの問題を全て解決する素晴らしい技術なのだと言うことを。冬山でたまる鼻水は汚くも何ともないという事をもう一度確認して頂きたい。あれは結露だ。雑菌とは無関係なのだ。是非この技術を身につけて頂いて、快適な冬山ライフを楽しんで頂きたい。もちろん日常生活においても究極のエコでもあることは間違いないのだが、時と場所をわきまえてなさって頂きたい。

呉々も手鼻は風下に向かって、勢いよく、決して躊躇してはならない。失敗するとエライ事になりますので。


鼻の頭が凍傷になった件について

2014年01月22日 | 登山道具考

 鼻の頭のかさぶたが気になって仕方が無い。なんで、鼻の頭にかさぶたが出来ているかというと、それは先週行った西穂高岳の時の後遺症なのだ。

 一週間ほど前、僕はBSTBSテレビの日本の名峰絶景探訪シリーズのロケに同行した。その時の朝方の冷え込みはマイナス20℃にもなり、風速20メートル程の強風が一日中吹き荒れていた。そんな中でも撮影の可能性を求めて、稜線を行く我々には容赦なく厳冬期の季節風が吹き付け、わずかに露出する顔面は体感気温40℃の外気に無防備に晒されることになった。もちろん目出し帽にゴーグルをし、ジャケットのフードを被ってはいるのだが、どうしてもゴーグルと目出し帽の間には隙間が出来る。これを作らないように目出し帽の上にゴーグルを乗っける様にすると、立ちのぼる自分の呼気がゴーグルの中に進入してたちまちレンズが曇り凍り付く。こうなると視界は奪われ、行動すらままならくなってしまう。だから少しだけ隙間を空けて居るのだが、そうすると鼻の頭や頬のラインは完全に露出してしまうからどうしようもないのだ。

 行動中、「鼻の頭痛てーー!」とは思っていた。こりゃ凍傷になるなと。帰れば案の定、僕の鼻の頭はヒリヒリと痛み、数日でかさぶた状態となった。気になって仕方がないのだが、下手に触るとそれをはがしてしまい血が滲むから、なるたけ触らないようにするのだが、やがてそのかさぶたが自然にはげ始めて端っこがヒラヒラとめくれて、僕の視界の片隅に見える様になると、もうどうしようもなくはがしてしまいたい衝動に駆られるのだ。でも、それは根性で我慢する(笑)。

 凍傷はやけどと似ている。やけどは高熱によって皮膚の細胞が死滅するものだが、凍傷は極端な冷たさで皮膚の細胞が凍り付き死滅するものだ。重度になればそれは皮膚のさらに奥深くに浸透し、末端の血流を止め、やがては手足の指や鼻を切断しなくてはならなくなる。今回の僕の凍傷はそんな重度のものではなく、アイロンを一瞬鼻の頭にくっけた位のものだが、それでも少しだけ僕の生活は憂鬱になる。鼻の頭が少しヒリヒリするだけで「神様ごめんなさい、早く治して下さい」みたいな気持ちになるのだ。小さいのお、ワシも。

 さて、今回のBSTBSのロケにあたり、ゴーグルをしないふとどき者が三人いた。それは、カメラマン二人と、ベテランガイドのM氏だ。カメラマン二人には前日「顔面を出すなよ、鼻がもげるぞ!」とさんざん脅かして居たのだが、彼らはカメラのファインダーを覗くという仕事上の都合から、いつの間にかゴーグルを外してしまっていた。カメラマンが仕事に来て、ファインダーが覗けないんじゃ仕方が無いし、彼らにとっては鼻がもげたとしても良い絵を撮ってやると言うプロ根性が有ったわけだから、僕はほっておいた。しかしもう一人のMガイドはそうではない。彼は確信犯的に端からゴーグルなど持ってきていないのだ。

「あれ、Mさんゴーグルしないの?」と聞くと

「そんなもん、なんでするだい?」と逆に開き直るのだ。

 M氏は何度もヒマラヤの高峰に登ってきたクライマーだが、そんな時もゴーグルはしないと言う。マジで?うそでしょ?信じられなかった。

 今回の話は、このふとどき者達を断罪する為に書いているのではない。実は終わってみれば、僕らゴーグル組がほぼ全員凍傷を負っていると言うのに、何故かこの三人だけが凍傷にならずに何ともないと言う事実があったと言う事を書きたかったのだ。ゴーグル組が、「ほら、ここやられてるよ」「君だってほっぺた、黒いぜ」なんてやっているのに、この三人はすこぶる血色が良く頬は鮮やかなピンク色をしているのだ。

 そう言えば、僕も若い頃はゴーグルなんてしなかったが、凍傷にはならなかった。そもそも、まともなゴーグルなんて無かった時代だった。現在ゴーグルは良いものが出ているし、それを冬身につける事は、ごく標準的な装備となって居る。だが、当たり前だと思っていたこの装備の弱点が有るのかも知れないと、今回のことで思うようになった。

 ゴーグルを曇らせないように身につけていることはかなり細かい配慮が必要になる。口や鼻から立ち上る呼気を内部に入れないように目出し帽を微妙に調整し、はき出す呼気の向きさえ気にして呼吸をしたりする。曇りが入れば直ちにゴーグルを浮かせ、外気を入れ曇りを取る。かなりの上級者でない限り内部を曇らせない様に管理することは結構難しいことなのだ。

 確かにゴーグルを身につけると、鬼に金棒的な心強さがある。どんな激しいブリザードもレンズ越しに見れば、それはまるで暖かなお家の中から眺めているような感じがするし、オレンジ色のレンズを透して見る冬の情景は明るく美しい。何となく勇気が沸くような。だが、これが凍傷の原因となって居るとしたら、僕は考え方を改めなければならない。

 もしかしたらだが、顔面を覆うと言うことは、顔面の表層の毛細血管たちを、甘やかす事になって居るのかも知れない。ゴーグルや目出し帽に守られて、めいっぱいの血流を運ぶことをサボっているのかも知れない。そんな時、血流が充分に行き届かない皮膚が一部露出しているのだから、ゴーグル組の顔面は寒風の餌食となってしまう。

 ゴーグルをしない時顔にぶち当たるブリザードの雪つぶては、行ったことはないが、砂漠の砂嵐と同じほどに容赦なく僕らの目を刺す。そんな場合は目を細め、耐えるしか無いわけだ。晴天ならば、雪目も心配だ。雪目は太陽光が雪に反射し、紫外線で目を焼かれる目の火傷だが、これになったら、瞳は猛烈な痛みに襲われ瞼を開いていることさえ困難になる。目からは涙が溢れ続け、そうなると歩行は不可能だ。

 さてさて、僕は今ゴーグルを身につける身につけないで、悩ましい問題に直面してしまった様だ。どちらにもそれなりの良さとリスクがある。果たしてゴーグルをしなければ僕は凍傷を防げるのか?お客さんに対してはどのように言えば良いのか。これに結論を出すには少しばかりの時間と実証が必要なようだ。

 

※ ところで、凍傷には傷害保険は適用されないと言うことをご存じだろうか?皆さんが加入している登山保険というものは基本的に傷害保険である。傷害保険は、怪我を対象にそれを保証するものだが、火傷は間違いなく大丈夫。だったら凍傷だって良さそうなものだがそうはいかない。それは何故かというと傷害保険にはその原因が「偶発的克つ突発的」でなければいけないと言う条件がつく。残念ながら凍傷はそれには当たらない。「なんでそんな寒いところに行ったの、あなた?」「鼻が痛かったら帰ってくれば良かったのに?」と言われてしまえばそれまでだ。ガイドが「顔大丈夫?指先痛くない?」とやかましく言うのはそのせいだ。凍傷に怖じ気づくのなら冬山など行かない方が良い。みなさん、呉々も凍傷は自己責任ということで。


使える携帯ラジオ

2013年11月13日 | 登山道具考

ソニーの携帯ラジオである。このシリーズには、山ラジオと言うものまである(どうも周波数のプリセットが、日本全国の山を飛び回る方々に向いているらしい)。それが本当に役に立つかどうかは解らない。

 同じようなものにパナソニック製があるのだが、その機種を過去に二台ほど使ってみたが、性能はソニー製に叶わない。まず、アンテナの性能が断然違う。北アルプスの山中で、谷間に入った場合の感度が全く違うのだ。本当は、昔ながらのビヨーんと伸びるアンテナが装備されていればもっといいのだが、このラジオは基本的に、サラリーマンなどが通勤の途中などに胸ポケットに入れて情報収集するためのものだから、ビヨーんと伸びるアンテナはどうも頂けないようだ。スーツの胸元からアンテナが飛び出ているのは見た目イカンと言う事なのだろう。

 それともう一つ、ソニー製の方が音がでかい。スペックでは、両者とも40mwで同じなのだが、明らかに音量がソニーの方がでかい。例えば、テントの中でガスコンロに点火した状態で、パナソニックは全く何を言ってるのか解らない時でも、ソニーは聞こえるのだ。イヤホンならどちらも平気だが、スピーカーから音を鳴らして、みんなで情報を共有することは大切な事だと思う。

 さて、北アルプスの谷間でいったい何処に周波数を合わせるかと言う問題がある。長野局なのか、富山局なのか、はたまた岐阜局なのか?ダイヤルをグルグル回して探すのもなかなか大変なのだが、結論を言えば、NHK AMの594MHが一番であると思う。594MHは、東京第一放送からの周波数だ。この周波数は、関東一円をカバーしているので、発信側の出力が大きく、それが谷間であっても何とか聞き取ることが出来るわけだ。長野とか、富山の地方局は稜線上であれば結構聞こえるが、谷間では全くダメな事が多い。地方局は、その地域にだけ聞こえれば良いわけで、あまり遠くまで聞こえてしまうと何かと不都合があるのだろう。たぶん、東京から半径300Km以内であれば、594MHが一番信頼出来る周波数だと思う。それ以上遠くに関しては経験があまりないので解らない。

 僕は、このラジオを一年に一台ぐらい買っている。お値段は結構して、一万円ぐらいするのだが、壊れてしまうから仕方が無い。パナソニックは若干安い。

 携帯ラジオは大切な情報源だ。何より天気の悪いときこそ大活躍だ。NHKは朝から天気予報を頻繁にやってくれるので、気象予報士の一言一句を聞き漏らさず聞かなくてはならない。予報士が言う微妙なニュアンスを感じ取って、天候判断に役立てるのだ。そんなわけで、ラジオは天気の悪い時こそ大活躍だから、それは雨合羽のポケットに入れられ雨の中を歩きながら使われる。そして結局結露や蒸れであっけなく壊れてしまうのが常なのだ。防水で、コンパクトで、感度のいいラジオがあればいいのだが、理想のラジオには未だに出会っていない。以前であれば各社様々な製品を意地でも作って張り合っていたはずだが、今は選択の余地がない。日立やら東芝やら三菱なんかにも頑張ってもらいたいのだが、どう考えても儲かりそうもない製品だし、日本の元気の無さがこんなところにも現れている様な気がする。

 ラジオは、僕にとって単なる情報源を越えて友人のようなものだ。これを持ち忘れるとどうもソワソワとして不安で仕方が無い。山深くに一人でいる時、なんだかんだ言って人の声が聞こえるというのはほっとするものだ。音楽は時に余計寂しくなったりするしね。だから、ラジオはケチらない。一番いいものを買うことにしている。

 


山の食料

2013年10月17日 | 登山道具考

 登山道具ではないが、山で何を食べるかと言う問題がある。食料というのは実は一番重い。ザックに装備をあれやこれや詰め込んで「あれ、まだ余裕あるじゃん?」なんて思っていても、最終的に食料やら飲み物を詰め込むと、いきなりザックは重量を増し、「参ったなこりゃ」となるものだ。

 美味しい食べ物はいくらでもある。贅を尽くせば、山でのゴージャスな食事はいくらでも可能だ。ワインなんかも瓶のまま担ぎ上げて、オープンナーですぽんと栓を抜く。まあ、それは解るんだけど。

 とにかく、美味しいと思われるもの、食べやすいと思われるものは、その殆どが水分の多い食べ物だ。これをこれしか食べられないと言って、そのウェットな食べ物をいちいち詰め込んでいくと、ザックの重量は際限なく重くなり、登山自体が苦渋に満ちたものになってしまう。だから、美味しいものは下山後お家や街で食べるとして、登山中はドライで、高カロリーなものを持ち込んで何とか食べるのだ。そう、カロリーさえ取っておけばそれでよしと割り切って。

 最近尾西食品のアルファ米の2食入りパックが無くなってしまった。全てが一人用のチャック付きとなったのだ。もはや二食入りは登山者ぐらいしか使わないのだろう。尾西食品はなにも登山者の為にアルファ米を作っているのではなくて、災害備蓄とかそんなものが中心。しかも時代の流れなのか、その登山者もみな一人用を使う。シェアの時代ではないのだ。「同じ釜のメシを喰う」ことはもう無いのだ。で、あまり売れず付加価値の少ない2食入りはついに製造中止となったのである。

 さて、軽い食事のアイディアとして、カップヌードルリフィル、カップヌードル御飯、尾西の白飯、チャーハンの素。僕はこんなものをよく使う。カップヌードルリフィルは容器がないから、先日紹介したスクリュー絞め保存容器で湯を入れて作る。カップヌードル御飯はそのままだと嵩張るから容器から出して、ジップロックに入れて持って行く。そのまま湯を入れてもいいし、保存容器で作ってもよし。いろんな味があるから、結構楽しめる。おまけに尾西のアルファ米の半額ほどで買える。白飯には、色んなチャーハンの素を使い分けて楽しむ。(笑)炒めたりはしない、ただ混ぜるだけだ。どれもこれも基本的に大して美味くないのではあるが、アレンジ次第で可能性は無限だ。笑

 僕はこんなものばかりを食べている。そして山小屋の冷凍食品も。春には雪を溶かしてPM 2.5入りの水をごくごく飲む。きっと長生きしないね。でも、とにかくそれらを喉に流し込む。

 


使える食器

2013年10月16日 | 登山道具考

 これは、僕が愛用の食器である。岡崎工業社製 LUSTRO WARE。小さいのが250mlで大きいのが750ml。三つが入れ子になって携帯に便利である。本来はホームセンターに売っている保存容器だ。これと似たものに UNIX WARE というのもあるが、これはサイズが若干大きくて、形が寸胴なので食器として持ちにくく僕は好きではない。たかだか50mlのサイズの差だが、その無駄が気になるのだ。これの最大の魅力はスクリュー締めが出来て、パッキンが付いているので液体を入れても中身が漏れないことだ。

 これは、テント山行の時はとても便利だ。カップヌードルリフィルをこれに入れてお湯を入れ、フタを絞めてしまえば狭いテント内でこぼれることもない。ラーメンひっくり返して大騒ぎって結構あるのだ。余った夕食をこれに入れておけば次の朝まで安心だし、朝作ったアルファ米をこれに入れて、缶詰なんかもトッピングしてお弁当なんてのも得意だ。あのアルファ米のチャック袋から食べるのって、スプーンで掻き出すみたいにしないといけないから、とても食べづらくて僕は好きじゃない。これなら、箸で優雅に頂ける。

 僕は沢登りをして釣りをする。午前中に釣った岩魚をさてどうするかと言う時もこれは大活躍だ。源流の極上岩魚を刺身にして、醤油でつけ込めば夕方には焚き火に当たって「岩魚のヅケ」が食べられてしまうし、岩魚の腹から出てくる宝石のような岩魚子は、翌朝にはねっとり濃厚な味わいの醤油漬けになる。思わず朝から一杯やりたくなってしまう訳だ。

これ いいでしょ?


オールド ミレー

2013年10月04日 | 登山道具考

 今回久しぶりに引っ張り出して、一夜山へ背負って行った35年ほど前の MILLETの「WALTAR BONATTI」モデル。大切にしてきた。ほんの時々、使うだけ。と言うのは、テント山行ばかりをしていたから、あまり出番がなかったと言うのがほんとのところ。

 この当時のミレーのザックのデザインは秀逸で、このブルーの分厚い帆布のとビニールレザーの組み合わせが堪らなかった。そしてこのおにぎり型がかっこよくて。ほしくてほしくて、小遣いを貯めて買ったんだっけなあ。これより一回り大きな、ルネ・ドメゾンも持っている。どちらも、ヨーロッパの粋なザック。

 普段のテント山行で使っていたのは、80リットルほどの同じミレーのナイロン製の黄色のボディーに青い雨蓋が乗ったもの。モデル名は忘れてしまった。その後、シューイナードとか、カリマーとか現代的なザックが現れたが、僕はミレーばかりを背負っていた。確かに背負いづらくて、しょっちゅう肩がすりむけたりしていた。それでも僕はMILLET一筋だったのだ。

 僕が登山を始めたのは高校時代だが、その高校の山岳部は少し変わっていて、キスリングは背負わなかった。全員縦長ザックだった。そこら辺は進歩的。だが、テントだけは頑として先輩から伝わる帆布製三角テント。他の高校が、ダンロップとか持っていたので、少し羨ましかった。高校総体の登山競技県予選に行っても、三角テントは張るのに時間が掛かるから減点されていつも成績はビリ。だけど、誰もそんな事気にしてなくて、端から勝つ気が無かったのかも知れない。それで、良いと思っていた。他の高校の顧問の先生達が「なつかしいなあ」と言って僕らの三角テントを占領するもんだから、僕らはずっと外で待っていたっけ。

 話がそれたね。