目が醒めて雨音を聞くのは悪くない。
ふったりやんだり良い感じ。
きょうは神様がくれた休息日だから、何もしないぞと決めて緑を探しいこう。
シャクヤク
ルピナスの宇宙
ルピナスの森の住人
]
目が醒めて雨音を聞くのは悪くない。
ふったりやんだり良い感じ。
きょうは神様がくれた休息日だから、何もしないぞと決めて緑を探しいこう。
シャクヤク
ルピナスの宇宙
ルピナスの森の住人
]
鶏冠山は甲府盆地に流れ込む笛吹川上流の東沢渓谷左岸に位置する。地図上には今のところ道はないことになっているが、鶏冠山までははっきりとしたルートになっている。数年前まで東沢の入り口には入山禁止のバリケートがあったのだが、今や可愛い看板に導かれるコースとなった。僕は毎年この時期に鶏冠尾根を甲武信小屋まで上り詰める。バイカウツギ、ミツバツツジ、ヤマツツジ、クモイコザクラなどが咲いて、そして何よりシャクナゲのトンネルをくぐり抜けていくのはとても楽しいからだ。花の咲かないシャクナゲの藪は、忌まわしいの一言に尽きる。強靱な枝はねじくれ曲がってザックのあちらこちらにひっかかり、僕らの行く手を阻もうとするから。
先ずは東沢を少し遡り鶏冠谷出会いで飛び石づたいで対岸に渡った。例年なら二回徒渉が必要なのだが、いつかの大雨ですっかり流れが変わってしまったので、今年はその必要はなかった。
バイカウツギ
ミツバツツジ
鶏冠谷を少し登って尾根に取り付く。急ではあるが以前に比べ大分踏みならされ歩きやすい。ヤマツツジやミツバツツジを愛でながらじわじわ登る。期待していたシャクナゲは開花後にどうも霜に当たったらしく、花びらが茶色く変色したり、開花の途中で止まってしまった物などが目立つ。シャクナゲは順次高度を上げて咲いていくので、これから行く人は問題ないとは思うが、今日はカメラを向ける気がしない。
最初に現れる第一岩峰は左側を大きく巻きながら登っていく。ここら辺の岩の割れ目に咲くクモイコザクラ残念ながらもう既に咲き終わっていた。
第二岩峰付近は以前はザイルを使い岩稜歩きを使い楽しむところであったが、昨年から立派なステンレス製の鎖が設置され、いとも簡単に登ることができる様になってしまった。ああ、つまらない。山梨百名山なんかに選ばれたお陰で、楽しい山がまたひとつなくなってしまったのだ。ここが一般道扱いになるのも時間の問題だ。ガイドの出番も次第になくなる。
第二岩峰の岩場
鶏冠山(第三岩峰)
第三岩峰を右側から巻いて、反対側のコルから戻るようにして現在の鶏冠山の頂上に立つ。現在のと書いたのは、実は本来の頂上はここからさらに30分ほど登ったところに在るピークに標柱があったと甲武信小屋の北爪君が教えてくれたからだ。どう考えても山頂の体裁を整えているのはそちらだと僕は前々から僕は思っていたので、今回それを聞いてスカッとした。何のためかは知らないがなんか安易だなあ。
第三岩峰に到着するころから穏やかだった空に黒雲が沸き、ぽつぽつ雨が落ちてきたかと思ったら、いきなり雹が降り始めた。慌ててカッパを着込む。
ここから上部は通う人も稀になるので、慎重に踏み跡を拾いながら登った。シャクナゲのトンネルは藪漕ぎに近く、しかも断続的に雨が降り続いているので体はびしょびしょだ。木賊山に近づく頃には雷まで鳴り始める始末。梅雨を前に暖気と寒気が入り交じり不安定な天候となっているようだ。
秩父らしい栂の森
木賊山本体に取り付くと例年なら残雪が現れ、アイゼンを使ったりするのだが今年は殆ど雪がなく踏み跡を問題なく辿ることが出来た。残雪があると、道を見失い、シャクナゲの藪に突入しなければならなかったりするので助かる。こんなに雪が少ないのは初めてだし、数日前に行った富山の毛勝山は逆に記録的な大雪だったので、同じ時期の山を歩いている気がしない。偏西風と日本海を西側に持つ日本の風土は変化があって実に素晴らしいものだと思う。
木賊山でようやく登山者に出会う。少し下れば甲武信小屋だ。
甲武信岳小屋の小屋番北爪君は僕の友人だ。彼は腕利きのギター弾きで、それが縁で僕らは仲良くなった。三月の末には東京と石巻でそれぞれのバンドを率いて一緒にミニライブツアーを敢行もした。と言っても二人づつだけど。その時の顛末を彼がブログに書いているのでこちらもどうぞ。
僕はこの時のことをとうとう書けなかった。なんでだろ?
徳ちゃんは残念ながら不在で、代わりに弟さんのミツ次さんがいらっしゃった。テリー伊藤似の物静かな人だが、いつも目が穏やかに笑っている、そんな雰囲気をも持つ。
シルエットはうたた寝中ではなく うけつけ中の支配人
70年代のヤマハFG160、なんと3,000円なのにめちゃ良い音
今日は結構早めに小屋に着けたので薪ストーブで体を温めて、ゆっくり目に芋焼酎を飲んだ。とにかく時間があるので、あまりピッチを上げると今日はとんでもない結果になってしまうので、自身をコントロールしつつ、大人な感じでこの何もしない時間を楽しむ。今日は日曜日だから小屋もそんなに忙しくなくて、北爪君とギターセッションを楽しんだり。宿泊客は昨日は100人、今日は15人だそうだ。結局、消灯後にギターを弾きはじめた我々は、もっとさわやかな演奏をすればよかったものを、なぜかオドロオドロしい演奏を繰り広げ、あげくお客さんに怒られて、ちんやり夜は更けていったのだ。いくつになっても馬鹿で申し訳無い。ご迷惑をおかけしましたみなさん。
朝五時に朝食を済ませ、甲武信岳へ向かう。天気はすっかり回復して、朝日が眩しい朝だ。若干霞んでいて北アルプスまでは見通せないが、八ヶ岳や富士山も見えて登ってきた甲斐があるというものだ。
朝の甲武信小屋
7時に下山を開始。シャクナゲの徳ちゃん新道を西沢へと下った。唐松が芽吹いて美しい。春ゼミが耳が痛いほど鳴いている。何千もの鈴をいっせいに鳴らしたようで、気が遠くなりそうだ。
アズマシャクナゲ
下山後いつもの隼温泉で入浴、塩山駅解散。
毛勝山は剣岳の北方稜線上にある2,414mの山だ。標高こそ低めだが豊富な積雪量と、その高低差においてなかなか手強い相手だ。9月に毎日旅行のツアーでは日帰りピストンというスタイルで登っているが、概ね12時間ぐらいかかっている。今回はテント泊で北西尾根より毛勝山を目指し、残雪を利用して釜谷山と猫又山までを縦走する。稜線上にははっきりした道はないから、藪が残雪に埋まっているこの時期が最適なのだ。下山路になる猫又谷は非常に美しい大雪渓だがここにも道がないので、この時期しか歩くことはできない。
魚津駅前通りをまっすぐ入った片貝山荘の奥で橋を渡り、阿部木谷方面へ少し入ったところが北西尾根の登山口になる。登山口に至る道の左には快適な広場があって巨大な桂の木が立っている。以前阿部木谷ピストン登頂をしていた頃はこの大桂の麓にテント泊をしていた思い出の場所だ。その姿は圧巻で、幹周りは7~8mは有ると思うのだが名前が付いている訳でもなければ、観光地になっている訳でもない。僕はこれだけの桂の巨木を他で見たことがない。一声挨拶をして尾根に取り付く。
テント泊だから荷物は重いし最初の急登が堪える。僕は10日前に右ふくらはぎに肉離れを負っていて、一応痛みは引いたとは言え不安もある。まあ、再び痛くなっても歩き通すけどね。結果的には快調に歩き通す事が出来た。友人から教えてもらった治療法が効いたようだ。北原さんありがとう。
一輪だけ見かけたシラネアオイ
この尾根道は10年ほど前からよく使われるようになった。それまでは毛勝山には登山道はないとされ、前述の阿部木谷を残雪期に登るのが一般的だった。阿部木谷と猫又谷は隠れた大雪渓でその標高差に於いてはおそらく日本一ではないかと思う。上部は40度の傾斜が数百メートル続き、おまけにそこは落石の巣だ。テント場はなく登り切らないと宿泊場所にも恵まれない。今はのんびり尾根道をゆき、適当なところでテントを張る。
今年は1時間ほど登った辺りで豊富な残雪が現れた。今までなかったことだ。残雪はその年のその時期その場所によって多めだったり、少なめだったりまちまちだ。一律に日本全国雪が多いとか少ないとか言うのではないし、同じ山域の標高の低いところは少なくて高いところだけ多いとかもある。だからお客さんに「今年は雪が多いんでしょ?」と聞かれると「はい」と素直に言えず答えに困ってしまうことがある。またそのからくりを説明するのはかなり面倒くさい。なぜなら半年分の気象の変遷まで話さなくてはならないから。(笑)
さて、雪は今年は多めだ。かなり下でアイゼンを履きキックステップで高度をかせぐ。秋口に登る時とは勝手が違って、船窪状湿原のあるモモアセという場所はすっかり雪に埋まっている。北又谷の対岸には僧ヶ岳と越中駒ヶ岳が迫る。
後方は僧ヶ岳と越中駒ヶ岳
左が毛勝山、右は南峰 明日辿る稜線だ
登り始めてから7時間で標高2,150mのテント場ピークに到着。ここは毛勝山を目の前に広々とした大展望台でもある。東には後ろ立山連峰から栂海新道までが見えるし、富山平野の向こうには富山湾、そして能登半島。空は蒼く風は穏やかだ。
僕は富山の山が大好きだ。それは、なんといってもその伸びやかさだ。たとえ1,600mの僧ヶ岳に登ったとしても、足下には0メートルの海岸線まで見えるので、標高差は1,600mとなりその高度感は奥穂からから上高地を臨むのと変わらない。それが立山や剣ともなれば標高差は3,000mとなるからスケールの大きさのレベルが違う。見る物の視線の先が遙かに遠いのだ。おまけに魚は美味いし、米も美味い。釣りは山でも海でもいけるし、いい人多いし、富山弁は可愛いし。特に女性はね。長野県の山はなんかごちゃごちゃしているし、なんかみみっちい。(笑)
エスパース7人用テント(超快適なこのテント)と山座同定中のお客様
広々快適、いっぱいやりながら水を作る、夕食はジンギスカンと麻婆春雨、色悪いけどテントの色です。
この日の夕景は素晴らしかった。茜の太陽が海とこの時期水の張られた田に反射して地球のサイズまでも感じる様な夕暮れだった。これも富山の山の魅力だろう。隠居したらハワイへ移住するのはやめて富山に住もうかな。
シルエットの能登半島
朝五時半に出発してまずは毛勝山への雪壁を登る。一部急なところがあるのでハーネスは朝からつけてもらった。雪は締まってアイゼンが気持ちよく決まる。1時間強で毛勝山頂上だ。剣岳北面が姿を現した。
頂上自体は雪もなく土が露出している。だが、そこから東側は吹き飛ばされた雪が積もって巨大な吹きだまりとなっていて実際の頂上よりもさらに高い疑似頂上が出来ている。2000年3月5日に大日岳で起きた文部省登山研修所の事故もこの手の巨大雪庇の崩壊による。ここから猫又岳にかけては稜線上の雪庇が尋常なく発達して実際の稜線より20メートルもはりだした部分が至る所に現れるから充分気をつけなくてはいけないのだ。
釜谷山への登り 例年なら雪庇がバキバキに割れてそれを縫うように登るのだが今年はほぼべったりで楽!
釜谷山から剣岳北面
大分夏毛に変わったね カップルで幸せそう
剣岳も目前として左にブナクラ谷を見ていよいよ美しい猫又谷へ下る。僕はこの谷が好きだ。まっすぐ伸びたこの谷は上部は40度近い傾斜があって、谷は飽くまでも真っすぐ伸びやかでその末端までを一目で見渡せるし、阿部木谷とは対照的で落石も少なく何度見てもほれぼれとさせてくれる。スキーが有ればこの時期でも小石に惑わされることもなく一気に滑降できる。だが、今日はぼつぼつ歩くのだ。
美しい!隠された名雪渓だ
便秘気味の熊の糞 大概べったりしているのだが
富山の山にとってはこの時期は特別なのだ。豊富な残雪をまとって、夏では余り目立たない山が、最高に魅力的になる。特に今年はほんと素晴らしかった。全てに恵まれて夢の様な毛勝三山縦走。
雪渓末端からは林道沿いに山菜を採りながら下った。フキノトウ、タラの芽、キャラフキ、コゴミ、コシアブラ。キクザキイチゲの咲き乱れる道だ。皆さんお土産を携えて、夕方までに自宅に帰れれば今日は新鮮山菜料理だね。午後3時魚津駅解散後、僕は一人いつもの「はじめ屋」でパンチの効いた豚骨醤油ラーメンを頂いて帰路についた。
18日(土)は我が家の田植え日だった。この日はカラカラのピーカンで、日差しがジリジリと降り注いでいた。昼になったので家に帰り車から降りたときのこと。上空から異様な音がする。見上げるとそれはミツバチの大群で、まっ黒な固まりになって狂ったように飛び回り唸りをあげている。見ているとやがてミツバチはヒバの木に出来た洞の周辺に集まりはじめた。
実は我が家にはミツバチが巣をかける木の洞が二つある。一つは朝鮮五葉松でもう一つがこのヒバの木だ。五葉松には春先から越年のニホンミツバチが住んでいて、穏やかに行ったり来たりしていたが、こちらの方は動きがなかったので、今年はお休みかいなと思っていたのだが、いきなり状況は一変した。
やがてそれはヒバの木の洞の入り口辺りに集まり、穴の中にどんどん入り込みはじめた。着陸できないもの達は急かすように落ち着き無く周りを飛び回る。それは渋谷のハチ公口に人々が飲み込まれて行く様とよく似ている。
いったいこれだけのミツハチがこの洞に入り込めるのだろうか心配になる程の数なのだ。分蜂というらしいが6月になるとここからさらに巣別れが起こる。新たに産まれた女王蜂が分家をするのだ。それは今まで何度も目にしてきた。しかし、外部から飛来してきたのを見るのは初めてだ。出て行くときよりも蜂は興奮しているように見える。この中には女王蜂がいて、それが入った洞に働き蜂たちが入っていくのだ。
もう少し季節が進むと今度は分蜂が起こる。秋口になるとオオスズメバチとの攻防も見物だ。西洋ミツバチはスズメバチとの戦いの歴史がないから、スズメバチがやってくるとやられるままらしいのだが、ニホンミツバチは入り口付近にべったり張り付いた上で、野球場の観客がやるようなウェーブを起こし、敵を威嚇し巣を守る。そのフォーメーションは実に見事だ。
分蜂の時にいつも巣箱を持ってやってくるおじさんがいるので電話をするとニコニコうれしそうにやって来た。近くに箱を置いて我が箱に蜂が入ってくれるのを待っているのだが、3日たった今日現在巣箱に入る気配はない。よそから来た蜂は多分偵察隊がいて目星をつけた上で女王蜂を案内して来るので違う洞には入らないのかも知れない。
残念ながら我が家のニホンミツバチは木の洞に巣をかけるので蜂蜜は一切採れない。きっとこの洞の中には蜂蜜がたっぷりと貯まっているのであろう。もう少ししたら養蜂もやってみようかと思う。
赤沼ツアーには殆ど存在しない初級コース「コシアブラと鍬ノ峰」。天気も良し、山菜の状態も良しなのであったが僕の状態が最悪であった。前日トラクターからヒョイと飛び降りた拍子に右足ふくらはぎにピシッと激痛が走った。以前にも同じような痛みの経験があったのですぐにそれと解った。多分これは肉離れだ。そういえば前回の堂津岳の時何となく足が吊るような感覚があっておかしいとは思っていたのだが、まさかそれが肉離れの前兆だったとは。すぐに整形外科に行ったのだがエコー検査の結果やはりそれであった。全治3週間。思い切り凹む。田植えも未だなのに、ツアーもあるのに、甲武信小屋にも行ってギター弾きたいのに。まあ、やってしまったものは仕方がない。早く直すしかない。友人から教えてもらった、15分冷やして45分休んでを3セットという方法を藁をもすがる思いで試してみた。しばらくは痛みを感じないように足を曲げずに引きずって歩く生活だ。
コシアブラツアーははなから山菜先生の菊池さんにガイドをお願いしてあったので問題ないが、鍬ノ峰は急遽仲間の超優しいガイド下條さんにお願いする。信濃大町駅集合で岩岳に移動し菊池さんと合流。菊池さんは僕の古い友人で仕事は大工だが、山菜にやたら詳しいので毎年ガイドをお願いしている。当日全ての山菜をお客さんにとって頂くのはとても無理な話なので、事前にウドとかミヤマイラクサとかコゴミやタラの芽なども採ってもらってある。山菜はその種類によって生える場所は様々だ。湿地を好むもの、乾燥を好むもの、樹林の中だったり、崖が好きだったり様々なのだ。コシアブラはどちらかと言えば乾燥気味の風通しのいい尾根筋や林道脇を好む。
先ずは岩岳の天辺でふきのとうの収穫だ。この時期の岩岳はゴンドラも動いていないが、ここは最高水準の展望台であると思う。つきなみだが白馬三山が圧倒的な迫力で眼前に迫ってくるとしか形容できない。冬期営業が終わるとゴンドラリフトはゴールデンウィークの営業もしないので、本来ここに来るには歩いて来るしかないのだが、今回は林道の鍵を開けてもらって車でここまで来たのだ。地元の菊池さんが居たからこそ出来る芸当である。白馬三山を背景に山菜を探しはしゃぐ乙女達はまるでアルプスの少女ハイジのようだ。
ふきのとうの収穫が終わると林道を徐々に下りながらいよいよコシアブラの収穫となる。コシアブラは最近大人気の山菜だ。タラの芽に比べると、ゴロンとした固まり感はないが、とても気高く上品な香りがする。鼻に抜けるその極上の香りは気品に満ちている。天ぷら、おひたしはもちろん、味噌汁でもいいし、さっと湯がいてサラダにしたり、バジリコだと思ってパスタにするのも絶品だ。これだけ楽しめる山菜も他には無い。まさしく女王と言える。
ほら、あそこにあるでしょ?ええ?どれどれ。
あそこにも、ここにも!
背の高い木は根性で無理矢理で曲げて、火事場の馬鹿力!折ったり切ったりしちゃダメです。
段々目が慣れて来ると、あっちにもこっちにもと自分でその在処を見つけることが出来るようになる。山のあれやこれやを長年何回も経験していると、山菜モードとかキノコモードとか、お花モードとか、雷鳥モードとかそれはあたかもデジタルカメラの撮影モードを変えるように頭の中を切り替えられる様になる。例えば希少な花を見つけるには、先ず気配を感じ、漠然と見ているようでいて、数多の植物の中から的確にその花の色やかたちでそのものを見つけ出すのが極意だし、釣り師には素人さんには見えない水中の魚を目で捕らえる事が出来るようになる。ゆらゆら蠢く水面下の岩陰に潜む岩魚を見分けられるのだ。松茸然りである。将棋の世界ではその立場を脅かされつつある様だが、人間の感覚がコンピュータの追随を許さないのはそういう部分だ。圧倒的に過酷で絶望的な状況の中で可能性の明かりを見つけられる人間の力もそんなものの一種だと思う。Born to be wild
収穫した山菜は手分けしてゴミを採ったり選別したりあとの始末が大変だが、そこはぴっちりやろう。 魚を釣ってきて後処理をしない旦那は奥さんに嫌われて「もう釣りはやめて!」となり、至福の時を奪われ果ては自分の自由を手放さなくてはならなくなる。ちょっと大げさか?
仕分ける
コシアブラ、柔らかくしっとりした感触、生でもうまい
タラの芽、ごろりん、極上もの
さてあとは食べるのみ。この日のメニューはイラクサのごま和え、コゴミは定番マヨネーズで、ふき味噌、ウドの酢味噌和え、そしてメインはなんと言っても天ぷら各種だ。仕上げには赤沼蕎麦を召し上がって頂いた。今回は女性ばかり7名様なので、とにかく賑やかだ。僕が口を挟むスキなど微塵もない。楽しい夕食だった。そして最後の最後には強引にも僕がやってるバンドPLAY TONES の大ちゃんをお招きしてのミニライブ。只で採ってきた山菜を食わして、押しつけがましく音楽を聴かせて金を取る、なんてあこぎなツアーだ。ご静聴ありがとうございました。
あれ?大ちゃんの隣のピンクの人はだれ?・・・・・シャウト中!
二日目も快晴だ。鍬ノ峰へは超優しい下條ガイドが御案内。お客さんも僕でなくてほっとしているようだ。元気に旅立つみんなを見送った。
何しろ僕は歩いていないので何も書くことは出来ないが、これから下山するよと頂上から電話をもらった時その後ろでは、なにやら楽しげにみんなで歌を歌っているようだった。ガイドが違うとお客さんの雰囲気もこうも違うものか。下さんは凄い。下山してきた皆さんのなんと楽しそうなこと。少し妬けた。
この日は結果的に観測史上五月としては最高の気温を各地で記録した。あれ?そんなのこの間もなんかあったなあ。最低気温だったなたしか。大雪もあったし。まったく地球がへんてこなことになっている。
今回は長野百名山を二座、虫倉山と堂津岳。今年の4月はとても寒かったし、残雪期の登山といえどもその上には新しい雪が降って季節をとっちがえそうな山が続いていたが、今回は春らしい山を満喫出来た。前日にキャンセルがあったので今回はお客さんはお一人、まるでデート登山。長野駅で集合して中条の虫倉山不動滝登山口へ向かう。
虫倉山には山姥伝説が残っている。ここの山姥は大姥様と呼ばれるのだが、旅人をだまして泊めてとって喰ったりはしない。普段は虫倉山の洞窟に住み、年に一度孫達がやってくる日に二合徳利を持って麓の酒屋に現れる。その二合徳利に酒をくれと言うので酒を入れるとなんと二升も入ってしまったというのだ。その後この酒屋はたいへん栄えたそうだ。雨乞いを頼まれれば山を駆け巡り雨を降らせ、山蛭に人の血を吸うなと言い含め、なんとも村人に愛されている大姥様なのだ。詳しくはこちらで。ほっこり面白いですよ。
http://www.nakajyo-actio.jp/yamanba/index.html
さて不動滝登山口から芽吹きもまばらな斜面を登る。オオツボスミレや、ミヤマエンゴサク、ネコノメソウ、エンレイソウなどの咲く道だ。エンレイソウは白と紫が混在している。
昨年の熊棚が残っている。クヌギのドングリを枝ごとバキバキ折っては食べ、残った枝を尻の下にどんどん敷いて座り込んで食べるのだ。数年前戸隠西岳P1尾根を目指していたとき、これをやってる親子熊に出くわした事があった。熊は大慌てで木から降りて森の中に消えていったから良かったけど、それは20メートルほどの距離で血の気の引く思いをした。ツキノワグマはヒグマに比べると、どことなく何を考えているか解らない顔つきをしていると思うのは僕だけか?それはプーさんとかの影響なのだろうか?
尾根に登り上げると風が冷たい。芽吹きはまだだから、枝の間からは北アルプスや、頸城の山々も垣間見える。ゆっくり1時間ちょっとで山頂に到達した。
高妻山と戸隠連峰
北アルプスが眩しい。それにしても手前の里山の山ひだのなんと複雑なことだろう?このような山間にもわずかな土地を見つけ人々が住んでいる。長野県は特に山間に住む人が多い。こんなところに?と言うところでしっかりと畑を耕し自給自足に近い生活をしているのだ。若い人はいなくても、みんな山を離れない。寒かろうが不便だろうが山を離れない。そして、そういう人達が守る里山はその向こうに北アルプスを借景としてこの時期限りなく美しい。長野県が日本一の長寿県なのはこういう人達が飽くまでも質素に暮らしているからだ。
下山後宿泊先の鬼無里ふるさとの館へ入る。ここは第三セクターの宿だが、地元のおばちゃん達が運営している。ここで出してくれる夕食は山菜と手作りの保存食を中心に何とも自然の滋味にあふれたもばかりを食べさせてくれる。汚れきった僕の体が綺麗になる感じがいい。おばちゃんが三人、客は我々二人だけだからなんだか申し訳無い。
翌朝朝食を済ませ奥裾花自然園へ向かう。車のフロントガラスには霜がびっしりと降りている。ラジオをつけると、五月としては観測史上最も冷え込んだ朝だと言っている。今年はいったいどうなっているんだろう?
奥裾花自然園は裾花川上流に広がるブナ林の台地だが、山からしみ出す水が湿原を形成し、日本一の水芭蕉の群落で知られる。何をして日本一なのか定かでは無いがとにかく日本一と言っている。一つの群落として日本一なのかなあ?礼文島の群落はこんなもんじゃ無かった気がするし、尾瀬だって凄いのでは無いかとも思うのだが、その時期に尾瀬を訪ねたことが無いので比較にならない。そもそも僕は水芭蕉を可愛いとか思った事が無い。何が良いのかさっぱり解らない。咲き終わった後のお化けの様な葉っぱを見るとなんか「クソ、だまされた!」と感じてしまうし。
こうみ平湿原
唯一見つけた可愛らしい水芭蕉 これはいいかも
目指す堂津岳
と言うわけで、雪の斜面を適当に尾根に向けて登る。雪が冷え込みのお陰で良く締まって歩きやすい。ブナの巨木を縫うように、自由に歩いて稜線に登る。広くなだらかな稜線は藪もなく快適に歩けるし、誰もいない。誰もいない山は一番の贅沢だ。所々に整備中の登山道が現れる。伐開作業が進んでいるようだ。もうじき無雪期の登山が可能になるのかも知れない。
過去ここら辺で何度か熊を目撃
雨飾山
右から堂津、金山、天狗原、雨飾。最高の天気だが、この後お客様諸事情により撤退。自然園に戻り入浴、鬼無里いろは堂の絶品おやきを購入し長野駅解散。
追伸:水芭蕉の芭蕉とはバナナのことだ。沖縄の芭蕉布はバナナの繊維を織り上げたもの。両者は同じサトイモ科の植物だ。と言う事は吉本バナナは吉本芭蕉という事になり、松尾芭蕉は松尾バナナと言う事になる。カワイクナイ?松尾バナナ。そのセンスがハンパでない。芭蕉が現代に存在したら迷わず松尾バナナを名乗っていただろう。
安曇野さんぽというクラフト展に出かけた。場所は安曇野市交流施設「みらい」。GWは道が混んでほんとに出歩くのがいやなのだが、友人も出展しているし天気も良いので。
そこで見つけた陶器に心奪われ思わず購入。長野市中条村の後藤順子さんの作品。大胆でいて軽やかな感じ、楽しげでいい。
昔から僕は焼き物に弱くて、イカす皿とか鉢物とかそば猪口やぐい呑みを見るとその場から動けなくなってしまう。きっと美味いもの食べて酒を頂くのが好きなのだ。
当たり前だが春は再生の季節である。今年は4月に入ってから毎週大雪に見舞われて、ここは冬山かと錯覚する様な山行が続いていたが、今回はようやく春らしい登山となった。
僕は元来冬が大好きである。何もかもが休眠し動きを止めてくれるから、追われるような感覚がなくて、しっかり一つのことに専念できるから。僕は百姓でもあるから夏は田の世話やら草刈りやら、蕎麦だって蒔かなくてはならない。野菜だってどんどん大きくなって人間の都合などお構いなしにそれぞれ自分たちを全うしようとするので、それらに追いまくられてガイド業が休みの日は森羅万象のお世話係をしているのだ。心の底から休めるのは大雨の日ぐらいなもんである。夏の僕の頭の中は恒に忙しさという混乱の渦の中にあると言って良い。
だが、春は冬の間何となく内省的になってしまった心の中にも否応なしに入り込み、カラフルな色をまき散らしたり、花粉症で完全に鼻を詰まらせたり、忙しさに僕を引きずり込んだりして、そんな個人的な感傷を忘却の彼方へと追いやってくれる季節でもある。辛いこともいつか必ず忘れていく。残酷でもあるのだが時はそうやって僕らを癒してくれているのだ、きっと。
さて、先週も登った笈ヶ岳ではあるが、仕事とはいえ僕もご苦労なことだ。今回はお客様は2名様。前日に白山一里野の民宿「やまびこ荘」に入って、朝食を朝3時に出してもらって出発した。朝早くて悪いから、お弁当でいいと言っても、ここの若女将は
「いや、大丈夫、つくりますよ」
と、暖かな朝食を用意してくれる。朝飯をしっかり食べられるのはやっぱり元気がでる。ありがたい。
未だ空けやらぬ3時40分に登山口への出発時は予報に反して、またもや雨が降っていた。しばら車で進むとミゾレに変わってくる始末。予報は悪くないとは言え前回のことも有るし少し憂鬱な気分だった。だが今回は少し様子が違っていた。うっすら雪が積もった急峻な尾根をよじ登っていると次第に夜が明けてきたが、ミゾレはいつしか止んで雲の切れ間から光が差し込みはじめた。ふり返ると白山も頂上こそ見えないがその姿を現した。
未だ芽吹きもまばらな樹林のずっと向こうでアオバトが鳴いている。オカリナのような声で、アーオーー、アーオーー、オアオーー♪と鳴く。アオバトがアオアオ鳴くんだから話が出来すぎだ。音程的には シー ファ シー ファ 、シファシー ♪ほんとに誰かがオカリナを吹いているんじゃないかと思うほど。声だけは春先に林のずっと奥から聞こえることがよくあるのだが、その姿は未だ見たことがない。アオバトを見た人は幸せになると言う。コガラやシジュウカラも鳴き交わしながら忙しく枝を渡って行く。
冬瓜平を過ぎた辺りから青空がどんどん広がり周りの山も見え始めた。雪も締まってとても歩きやすくアイゼンなしでも快適に歩ける。ホワイトアウトして、行くのか帰るのか悩ましい葛藤を繰り返しながら進んだ前回とは大違いである。鼻歌交じりで歩ける今回だ。
主稜線へ登り上げる頃には笈ヶ岳もいよいよ顔を出してくれて、登るべき目標がはっきり確認できたので勇気が沸いて来る。主稜線を左にたどってあっさりと山頂へ到達した。所要5時間50分。前回は7時間20分。随分違うものである。 北には間近に大笠山、奈良岳、大門岳。東には人形山、猿ヶ馬場山、遠く御岳、乗鞍が裾野だけ覗いている。南には山頂は雲に覆われているが、もちろんずっしりと白山。
山頂 後方は白山
白山方面
主稜線直下でねじ曲げられ苦悶するダケカンバ君(ハリーポッターの世界)
山頂をゆっくり目に楽しんだあと、のんびり(お客さんは結構必死?)下山した。何カ所かある登り返しもさほど気にならず楽しめる。冬瓜平辺りからふり返ると笈ヶ岳が美しい。鷲が羽を広げたように見えるのは僕だけだろうか?なんて素敵な姿だろう。この山は何度来ても飽きない理由は男前だから、だねきっと。しかも今日は新雪が降ったお陰で、飽くまでも雪は白く空は蒼い。目に痛い。おっといけない、サングラスしなくちゃ。
冬瓜平付近のブナ林
冬瓜平を過ぎ急峻な尾根を慎重に下る。うっすら積もっていた雪もすっかり溶けて道が乾きはじめていた。花たちが太陽の光に暖められて花を咲かせている。久しぶりに見る鮮やかな山の色彩。心に染みこむ様なそんな花の色が目に心地よい。
ミヤマキンバイ
イワウチワ 結構妖艶
カタクリ パリッ!
くちづけ ちゅっ!
またしてもハリーポッターの世界 あのブンブン飛んでる奴 なんつーのあれ?スニッチ?
ネコノメソウ
さらに標高が下がるとそこには春がはじけていた。慎重に下って自然保護センターに到着し所要10時間50分。道すがらはカタクリの大群落だった。そしてニリンソウ、エンゴサク、ツボスミレ、キクザキイチゲ等々。春は言葉もなく僕らの心を満たしてくれる。おまけにタラの芽頂きました。これでお腹も満たされる春。
今日の西穂高岳は昨日去った微妙な感じの二つ玉低気圧が作り出す疑似好天によって朝方すこぶるクリアーな山が堪能出来た。コントラストバリバリです。アイゼンがサクサクと効いて、恐怖感もなくお客さんも楽しそうだったなあ。
案の定、その後は風が強まり寒気が降りてきて時雨れ模様の奥飛騨界隈。夕べは西穂山荘の河野さんにマッカラン12年頂きました。旨かった。ぺろん。