山岳ガイド赤沼千史のブログ

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13キタダケソウ6月26~28日

2013年06月29日 | ツアー日記

 キタダケソウは南アルプス北岳に特産する、キンポウゲ科キタダケソウ属の多年草である。環境省レッドデータブックⅡ類VU。近似種はあるものの、世界中でここにしかない希少種だ。それは、ハクサンイチゲの亜種だとかそんなんではなく、白い花こそ似た感じに見えるが、実際は花も葉も全てが違う別種だ。国内での近似種としては北海道アポイ岳のヒダカソウと崕山のキリギシソウがある。こちらは絶滅危惧ⅡaCR。キタダケソウよりも深刻な状況だが、キタダケソウもかなり絶滅に近い種であることは間違いない。キタダケソウが花を咲かせるのは、ツクモグサがそうであるように、他の種が開花する以前に花を咲かせ、6月中旬から7月初旬が見頃になる。生息地は北岳の某所、大体200メートル×100メートルの範囲にしかない。どういう加減なのかその生息地は歩いていくと突然始まり突然終わる。北岳の稜線直下にひっそりと、人々が訪れる前に花期は終わる。その希少性と可憐な姿は見た者全てを虜にするそんな魔力を持つ。僕も大好きな花だ。

 僕はここ10年以上毎年この花を見てきた。さて今年のキタダケソウはどうだろう?毎年の事ながら、わくわくする気持ちは同じだ。群生地に近づくとそれは突然現れる。ただ、今年は様子が少し違ってハクサンイチゲがもう満開で、キタダケソウは既に終わろうとしていた。雨と風に打たれた花弁は色が抜け、まるで蝋細工のように透明になったものが殆どで、被写体になりそうな物を探すのに苦労した。しかもハクサンイチゲと混生しているのでパット見では区別がつかない。

今年一番のベッピンさん

左上のボケてるのはハクサンイチゲですね。違うでしょ?わかる?

 キンポウゲの仲間なので、花弁に見えるのは実は萼で、色はハクサンイチゲよりも若干クリーム色がかってみえる。実に上品な淡いアイボリーだ。葉はこの段階では短い茎から密生して、花期が終わると次第に徒長し真夏であれば結構ビヨーんと伸びている。その様は何となくイタリアンパセリに似てるかも知れない。全く種族が違うので的を獲た例えではない、おそらく。

数年前のい撮ったもの(コンパクトカメラ)発色がちと悪いです。

同じく数年前のもの(コンパクトカメラ)

 いくら見つけてもよれよれのものしか手の届くところにはなくて、お花畑の真ん中に足を踏み入れる衝動に駆られるが、それは絶対してはならない。個体数はここには結構あって頼もしささえ感じるが、盗掘などにより数は減っているらしい。南アルプス市はこのキタダケソウをあまり人々の目に触れさせたくないようで、広河原行きバスの運行を花期も終わる例年6月25日からとしている。以前は北沢峠からの林道バスは信州側とあわせて6月15日から運行していたが、これもやめてしまった。南アルプス市営山岳館館長の塩沢さんに「見せたくないんでしょ?」と聞いたことがあるが、何も言わずニヤッとした。僕も昨年は夜叉神峠から3時館半ほど歩いて広河原に入った。おまけに夜叉神峠のゲート番がどうしようもない頑固者で(管理者の県は自己責任でどうぞと言っているのに)頑として通っていいと言わない。喧嘩して入ったのを覚えている。今はインターネットの批判にさらされて、登山者に自己責任であることを一筆書かせているらしい。一本気と言えば一本気、通行止めなのは確かだからね。

 話がそれてしまったが、ここでさらに以前に撮ったベッピンさんをどうぞ。

コンパクトカメラ(接写能力だけは凄い)こんなんシャッター押すだけ。

 ともあれ今年もキタダケソウに会えたのはうれしかった。地球温暖化が進めば、彼らは生息域を失う運命にある。氷河期からずっと居場所を追われ、こんな高い山の稜線まで追い詰められて来たのだから。もうこれ以上高いところは無いのだ。

 今日は雨が降ったり止んだり陽が出てみたりの1日だった。今晩は北岳肩の小屋に泊まる。お客さんがお一人なので節約のため僕はテントに泊まる。小屋の森本さんは「いいから、小屋泊まれよ」と言ってくれたが、ガイドは食わねど高楊枝なのだ。飲んだくれて、iPod聞いて就寝。

青の宿

北岳バットレス

小太郎尾根分岐への道すがらは見事な花畑だ。

このキノコの軒下で雨宿りしたくなるのは僕だけ?

ゴゼンタチバナ

賑やかな淑女達

 三日目朝は若干ガスが切れて周りの山や中アやらも見ることが出来た。下山はまた深いガスの中を広河原へ。芦安白峰会館にて入浴。小作にて「おざら」という名の、ほうとう版のつけ麺を頂く。冷たく絞めた麺を暖かい着け汁で頂くやつだ。僕はカボチャのほうとうが苦手なのだが(なんでかぼちゃ入れるん?)、これはシコシコと麺を楽しめ美味かった。因みに僕は札幌味噌ラーメンも苦手。なぜなら、最後まで麺食ってるんだかモヤシ食ってるんだかわからないから。食事を済ませ甲府駅解散。

 帰り道猛烈な睡魔に襲われ車を止めて一眠り。起きがけにモンシロチョウをパチリ。追憶のハイウェイ20号線をとろとろ走って帰宅したのだった。

 

 




13東沢渓谷釜ノ沢東俣遡行6月22,23日

2013年06月25日 | ツアー日記

 そろそろ、沢の水も温む頃となり、沢登りシーズンがスタートする。梅雨ではあるが、積雪の少ない地域の沢ではむしろその適度な増水が沢登りを楽しくさせてくれると言う事もある。もちろん、度を越した増水は僕らを大変困らせて、時には閉じ込められたり、延々と藪漕ぎを強いられたり、命の危険をはらんだ事態に陥れるので充分に注意が必要だ。

 甲府駅にて集合して、取り合えず川を見てからと雁坂道を西沢渓谷まで向かう。途中広瀬湖では湖面が息を呑むほど静かで、対岸の山を映して美しかった。

広瀬湖の朝

 今回も前日まで結構な雨が降ったが、ここ甲武信岳周辺は荘でもなかったようで、増水はあってもわずかで川の濁りもなく入渓を決断する。適度な水量で楽しめそうだ。ひと月前に鶏冠山を登りに来たときに比べて緑が深くなっている。生き物たちの営みは休むことを知らない。お客様は五名様、ガイドは僕と頼れる先輩の下條ガイド。

鶏冠山

 東沢出会で遊歩道から別れ沢に入る。最初は左岸につけられた古い道跡を辿る感じで、朽ち果てた観光看板みたいなものもあって、もしかしたら東沢渓谷も観光資源として人々が巡っていたのかも知れない。迫力ある結構な滝が現れる。

岩魚止めの滝

 いったん道は河原に降りるがそこにはホラ貝というゴルジュが存在する。ゴルジュとは両岸を岸壁に遮られ河原のない場所のことをを言うが、ここは通常数十メートルある川幅が、三メートル程に狭められて深い淵になっている。屈曲したゴルジュの奥は見通せないがおそらく二数百メートルぐらいは在るだろう。突破はもちろん無理なので、高巻き道を迂回する。道ではあるがあくまでも高巻き道だから、木の根に捕まり細心の注意で登らなくては滝壺にドボンだ。

田部重治もびっくり ホラ貝

 山の神を過ぎてししばらくすると道はなくなり河原の石を拾って歩いていく。頻繁に渡渉を繰り返すが、水量は少なくてせいぜい膝下ぐらいで流される不安もないし、スクラムなども必要ない。時々日差しもあるので、パチャパチャ楽しみながら川を渡る。今年初めての沢登りだし、水の冷たさが気持ちが良い。沢登りは基本河原を歩き、その先で行き詰まると対岸に渡渉する。そして、滝が現れれば、正面を突破するか高巻くかして上流を目指す。時にはゴルジュを泳ぎ、側壁をへつったり。でもここにはそんな心配はない。

休憩時にはお互いの装備をチェック

 

美しい淵を見ながら

鹿の頭蓋

東のナメ

うねり吹き出す滝

滑りやすいスラブをフリクションを効かせて

 釜ノ沢出会いは本流の金山沢と比較すると小さめでともすれば見逃しがちだが、何処かの誰かさんによって無粋な赤ペンキマークが着けられていた。あちらこちらに看板やらペンキやら。ルートファインディングが沢登りの楽しみの大きな要素なのにまったく困ったものだ。

 釜ノ沢に入ると直ぐ魚止めの滝で右岸のスラブをお助けヒモでのぼり、ブッシュのなかを登れば、ナメと釜が連続する四段の滝だ。沢靴のフリクションを効かせてスラブを登るのは楽しいが、足を滑らせたら滑り台を一気に滑り落ち、釜に呑み込まれてしまう。ここを登り切るといよいと本日のハイライト千畳のナメだ。緩い傾斜のナメが連続し、水は音もなく流れ、両岸の森がトンネルのように渓を包み込んでいる。どこを歩いてもいいのだ。つま先からしぶきが上がり歓声がわく。夢の様な時間。

 みんなほんとに楽しそうだ。ずっとこの幸せが続けば良いのにと思う・・・・・・・だが、楽しい事はいつか終わる。

 さて、ここを過ぎると両門の滝。西又と東又がここで出会い一つの釜に注いでいる。しかもそれは全てが一枚の岩で出来た大スラブだ。

両門の滝

両門の滝でポーズ!

 ここは右側の東俣をえらび、再び小さく高巻く。迷い沢を右に見て小尾根を登ると広河原に出た。今日の宿はこの辺りに求める。この辺りは広く、左岸の樹林の中や右岸の河原の所々に具合の良いテントサイトがある。僕らは右岸の河原を今日の宿と決めゆっくりと過ごした。通常サイトを決めるとガイドはテント設営やら、薪集めやら、岩魚釣りやらで忙しいものだが、今日は時間が早いのと、なによりここには岩魚が一匹もいないのですることがない。そういう意味では全くつまらない沢だ。

 そうこうしているうちに、雨が降り始めた。梅雨の振り方ではなく、どちらかというと夕立だ。みんなテントに潜り込んで雨音を聞き、少しうとうとする。たっぷりの時間と雨音、雷も鳴っているが気分は・・・・・・悪くない。

 2時間ほどして雨も止んだのでテントから抜けだすと下條ガイドがひとり火をたき始めていた。下さんは火炊きの達人で、どんなに雨が降ろうと火をおこす。大増水の黒部川上廊下で閉じ込められ全てが濡れて絶望的な気分の中、下さんが火をおこし、僕らは暖まり天ぷらを揚げて食べ笑った。火がどんなに力強く僕らを暖めてくれるものなのか、思い知った出来事だ。諦めなければ光は見えるのだ。

達人火をおこす この程度の雨ならチョロいもんだ

毛虫(なんだろ?)

たなびく煙

 夕食は先日のツクモグサのツアーでたまたま出来あがったジンギス鍋。途中摘んできた山椒がアクセント。つゆだくでご飯にぶっかけて頂く。雨は止んだし気分は良いし、飯は美味いしぼくはまた飲み過ぎてしまった。沢は魔物だ。因みに下條ガイドは一滴も飲まない。

肉じゃ!!

炎を司るひとを 「火いじり」転じて「聖」になったという

 翌朝は6時過ぎに出発、曇ってはいるが降ることはなさそうだ。しばらくは沢通しに行っても良いが、ごろごろの河原歩きなので、左岸の苔むした樹林を行く。あちらこちらにテントサイトがある。

 樹林から抜け出て沢は次第に傾斜が増してくる。水師谷手前のスラブ滝をフリクションで越える。ここから右へ入ると上部はずっと岩盤の上を歩く快適な登りだ。所々傾斜の強いスラブが現れるが、小さく高巻いて回避する。

 喘ぎながら登る。左右の岸壁にはイワカガミ、キバナノコマノツメ、そして特産種クモイコザクラ。谷が次第に開け明るくなってくるころ、甲武信小屋の水場が見えた。最後のスラブを味わって、楽しんで登り釜ノ沢東俣は終了した。水場道を10分ほど上れば甲武信小屋だ。

先人達が捨てた草鞋の塔

林床は一面のコイワカガミ、しかも葉がメチャクチャ小さい

 甲武信小屋では 支配人の北爪君やミツ次さん、友人の鈴木さんが待っていてくれた。しばらくはフリータイム。お茶を頂いて話に花が咲いた。着替えたり希望者は甲武信岳まで遊びに行ったりゆっくりと時間を過ごした。

白樺はへの字

モミジカラマツっていう花があったけどこれはモミジとカラマツ

 時間には余裕があるし、ゆっくり行けば良いのだが、強者達はそういうわけには行かない。真っ白なシグマシューズをを履いた怪しい集団は軽快にチャッカチャッカと3時間で徳ちゃん新道を下山。いつもの隼温泉にて入浴、塩山駅解散。

 みんなが少したくましくなった気がするよ。

 

 

 


沢登りの装備

2013年06月24日 | 登山道具考

 沢登りはその装備の特殊性や、なにより濡れると言う事への抵抗感から、足を踏み出せない方が沢山お出でだと思うので先ずは簡単にご説明しよう。

 そもそも沢登りとは一般の登山道から離れ、沢を遡って頂を目指す行為だ。山というのは頂上や、整備された登山道だけで成り立っているわけではなく、その山体には岩稜もあれば、広大な斜面もあれば、沢という超魅力的な遊び場だってあるわけで、そういったものを多面的に考えてようやくその山自体を味わえるようになる。山をより立体的に感じるということだし、それを知ることは大きな喜びである。

 先ずは装備だが、一番大事な物は足回りだ。沢の履き物と言えば昔は「草鞋に地下足袋」や「フェルト底の騒靴」、そして現在はファイブテン社製のゴム底を貼った「ゴム底沢靴」などがある。地下足袋はお値段も安いし未だに愛用者もいないわけではないが、今や殆ど見かけることはない。なので、我々が現実的に選択するとなればフェルトかゴムかと言う事になるが、それらは用途によって使い道が若干異なるということになる。

 フェルトは沢中では万能選手といえる。ヌルミにも強いので、低山や日当たりの悪い沢では威力を発揮する。対してゴム底は、高標高な北アルプスなどの花崗岩系の沢の乾いたスラブなどや、河原歩きでバツグンのフリクションを生み出す。ゴム底で簡単に登れるところをフェルトが登れないということは良くあることだ。だけど、河床は毎日その環境が変わって、バクテリアが繁殖し濡れた石ころがヌルミを増すと、ゴム底はからっきし効かなくなったりする。そこら辺、悩ましい問題は尽きないのだが、僕はもっぱらゴム底を愛用しているし、フェルト底は直ぐチビてしまって不経済なので滅多に履くことはない。濡れている事を気にしなければ、ゴム底は沢までのアプローチや帰路の登山道歩きにも普通に履いて歩けるから装備の大幅な軽減に繋がる。フェルトは別途登山靴などを持ち歩かなければいけない。うーーーん、悩ましい。

 ここで、一つの光明ともいえる靴を紹介しよう。月星社製 「ジャガーシグマ」

みんな女の子らしく靴紐変えたりしておしゃれに

 この靴はそこら辺の靴屋さんに売ってるもので、学生の通学指定靴になっていたり、看護師が履いていたりする普通の運動靴だが、何を隠そう沢ではファイブテンのゴム底と同等の性能を発揮する。ローカットしかないので、しょっちゅう砂が入り込んだりするが、グリップ力は十分ですこぶる軽い。靴底が若干薄く柔らかいのだが、その柔らかさ故に、岩を巻き込み掴むように歩けるからグリップ力が良いのだとも思う。しかもお値段は3,500円ほど。買って損はありません。

 今回の釜ノ沢もメンバー7人中五人がシグマシューズ持参。帰りの登山道では、インチキっぽい白い靴を履いた異様な集団に見えるのだろう、すれ違う登山者に足下をジロジロ見られたりして。でも具合がいいので気にしない。尚、この靴を僕に教えてくれたのは、藤沢山岳会会員、毎日新聞旅行の添乗員、花岡さんである。花岡さんありがとう。

 さて次は衣類である。基本的には水切れがよい物ということになろう。以前は僕はアクリル製のジャージを使っていたし、淵にドボンするような沢でなければそれで充分といえる。ただ、上廊下とか泳ぎを交える沢になると保温力の高い物が必要のなるので、僕は薄手のネオプレーンタイツを使っている。モンベルとか、秀山荘などからいろいろなものが発売されているが、最近の登山用衣類はみんな水切れがいいから、先ずは専用の物でなくても済む。

装備はこんな感じ

 さあ、装備を整えたら、翡翠色の淵にドボンしよう。濡れるのに慣れてしまえば、それは気持ちの良いことに感じるようになるし、通常の縦走登山で濡れることをいとわなくなる。そして濡れた雨合羽や、登山靴をムシムシの乾燥室にこもって必死に乾かす無意味さを、皆さんは知るだろう。ちょいとしたカルチャーショックです。灼熱の夏、ひとたび沢登りを味わったら、稜線をフウフウ言いながら縦走するのなんていやんなってしまうから。これほんと。


13八ヶ岳ツクモグサ6月15,16日

2013年06月19日 | ツアー日記

 ようやく今年の梅雨もそれらしくなって、農作物にとっては恵みの雨ではあるが、登山する立場となるとそれはそうではなくて、重く垂れ込めた空を少し恨めしく思いながら美濃戸から今日の宿泊地、行者小屋へ向かった。昨夜も一雨あって、林床の苔が息を吹き返しふっくらと美しく、歩きながら手のひらでなぞってみたりすると、ビロードのような感触が伝わってくる。

森を飲み込む苔

 今回のツアーも目的はツクモグサではあるが、もう一つなかなかお目に掛かれない花がここら辺には在る。それはホテイランというもので、草丈10センチほどの可愛らしいランだ。詳しく場所はお教えできないのでここら辺としか言えないが、まあ一帯はロープで仕切られ、一つ一つの個体に札がつけられてしっかり管理されているので、興味のある人には一発で解るが、僕らが夢中になって写真を撮っている間も、無関心に通り過ぎる人も沢山いて、人それぞれなんだなあと思ったのだった。花期は峠を少し過ぎてシャッキリしたものは少なくて、しかも、ロープを越さないで接近出来る個体がなかなかない。苦しい体制で、息を止めて撮影するのは結構きつい。森は暗くカメラのシャッタースピードが速いところを選べないので、一枚撮り終わると「ぷはー!」となる。素潜りと同じ感覚だね。

 それにしても、ロープが張られているにも関わらず、それを越えて踏み込んだあとが沢山ある。そこにホテイランは咲いていないのかも知れないが、こういう希少種は少しの環境の変化でその場を追われる事になるから、立ち入りは絶対だめね。盗掘なんかもってのほか。山野草をショップで売るのも辞めてもらいたいものだ。

 

ホテイラン

 ゆっくりと登っていくと、案の定雨が降り始めてカッパを身につけた。優しい暖かな雨だし、森は深く美しく、行者小屋はそんなに遠くないからまあ許すとしよう。

雨の唐松

 行者小屋では夕方からドシャ降りとなる。今日は自炊泊だから小屋の軒下のベンチを借りて夕食をとった。本日のメニューは焼きそば、ジンギスカン鍋、焼きチーズカレー(お焦げ付き)といったところだ。山では何を喰っても美味しいが、さて、これを家で食べたら美味しくないのかと言えば、やっぱり美味いと思う。でも、山でみんなでワイワイ食べるのはほんとに美味しいね。ジンギスカン鍋にはお客さんが持ってきてくれたトマトとパプリカも投入されて(あれ?キュウリもはいってるなあこれ)見た目も美しく最高の出来だった。

ジンギス鍋(絶品!)つゆだくで

お客さんは小屋素泊まり。「赤沼さんも小屋に泊まったら」と言われたが、痩せても枯れても僕はガイドだからそんな事は出来ない。初志貫徹、おまけにケチだからテントに泊まる。最近メンテナンスを怠っていたので朝方には大分雨が染みこんで来て、足の辺りが濡れて少し冷たかった。

 夜半から再び降り始めた雨は朝になっても止まず、ようやく雨が納まった7時半頃出発して地蔵尾根を登り、まっすぐツクモグサを見に行くことにした。今年は開花が早めで道すがら色んなものが咲き始めていた。オヤマノエンドウ、クモマナズナ、イワウメ、ツガザクラ、イワヒゲ、コメバツガザクラ、キバナシャクナゲ、そして、チョウノスケソウ。例年ではまだ咲いていない花が開いて、ガスに覆われて展望は何もないのだが道すがらは楽しい。

オヤマノエンドウ

チョウノスケソウ

イワウメ

 そして、僕たちはあこがれのツクモグサに突然であう。小尾根を登り上げるとそれはいきなりお花畑となっているのだ。お客さんからは歓声が上がる。ツクモグサは本州では白馬岳とここ八ヶ岳でしか見ることの出来ない希少種であり、雪解けが終わるとともに開花する一番花だ。全体が繊毛に覆われホンワリと幻のような姿が特徴的だ。それはキンポウゲ科オキナグサ属に属し、図鑑によると、山草愛好家城数馬が八ヶ岳で発見し、父の名九十九に因んで命名されたとある。自分の名を冠した花があるってどんな気分だろう?因みに、チョウノスケソウも名の由来はそのたぐいだ。

ツバメの子

 日差しがないので花弁は開かず、耐えるように咲くその姿はいとおしい。花の大きさはウズラの卵ぐらいで、少し開いたその様はツバメの雛がいっせいに口を開けてえさをせがむ姿に似ている。花の直ぐ下の葉が小さな羽をいっぱいに広げたように見える。被った岩の下に咲くものは、体中にびっしり生えた繊毛に吹き付けた霧や雨が宝石のような雫となって実に美しい。こうやって、体が直接濡れるのを防いで保温をしているのだなあと思った。ツクモグサはその保温力でその時期の虫たちを独り占めし、受粉と言う目的を達成しているではないだろうか?フクジュソウやミヤマキンポウゲは同じキンポウゲの仲間であるが、それらはパラボラアンテナ方式で虫を集める。あのテカッとした花弁の内側は外気より2℃ほど気温が高いのだそうだ。虫たちが暖まりにやってくると言うわけ、凄いね。

 みんなどれだけ写真を撮っただろう?1時間近くツクモグサを楽しんで大満足した僕らは、登りと同じ地蔵尾根を下ることにした。

ミネザクラ

 途中行者小屋付近で子鹿に出会った。たいしてこちらを気にすることもなく草をはんでいる。すぐ近くには母親らしきのも居たのだが、慌てて逃げようとはしない。鹿というのは普通とても臆病で、人の気配でさっと逃げてしまうものだが、ここの鹿も人慣れが始まっているのかな?確かに愛くるしいのだが、もし僕が猟師で鉄砲を持っていればいただきの場面だ。ダッーーン!!

 一瞬回復しそうになった空も再び雲に覆われてしまった。少し増水している南沢を下って美濃戸へ下山。もみの木荘で入浴。お目当ての「みつ蔵」の蕎麦は絶望的な行列が出来ていて断念しビーナスライン沿いで蕎麦を頂いたが、まあまあだったかな。でも、多分二度とは入らないかも。茅野駅にて解散。

 

 

 


岩殿山と白沢天狗山6月13、14日

2013年06月14日 | ツアー日記

 岩殿山は現在の長野県東筑摩郡筑北村坂北、旧坂北村と生坂村の境界に南北に連なる里山である。西側には麻績川の支流を挟んで(何故か国土地理院の2万5千図にも掲載がない沢)対をなすように京ヶ倉が連なる。どちらも砂岩の岩峰が特徴的で、標高こそ1,007mと高くはないが、充分に魅力的で、こちらを登ればあちらもと言う気にさせてくれる所だ。

 歩いてみると解るのだが、登山道のそこここには、石碑や石灯籠、道祖神、馬頭観音、五輪の塔、そして岩殿寺奥の院が配置されて、田舎寺ながらこの岩殿山全体を大伽藍に見立てた非常に格式高い作りになっているような気がするのだ。開祖慈覚大師円仁は今なおその威光を放っている。

 お客様は女性ばかり4名様。別所ルートから登る。梅雨とは言え、雨の気配はなく、若干蒸し暑さも感じるが風が僕らを助けてくれる。里山なのでとりあえずの展望はないが、大きな石碑が、僕たちを不思議の国へと誘う。いったいどうやってこれをここまで運んだのだろう?現場で切り出したとしてもそれは大変な労力だ。

かたちの良い松の向こうに姨捨山

 稜線に登り上げるのにさほどの時間はかからない。分岐を南へ稜線を辿り難しくはない岩峰を縫って行く。岩の頭を通過する時は一気に視界が開け、京ヶ倉越しに後ろ立山が見えて歓声が上がる。岩山の向こうに岩山、そして未だ雪をたっぷり抱いた北アルプス、素晴らしい。

 未だつかないのと思う頃岩殿山山頂に到着。途中までご丁寧にあった看板類だが何故か山頂には何もなくて三角点がポツンとあるだけ。しばらく休んで今日のメインイベントの奥の院へと向かう。岩殿山がメインイベントじゃないの?・・・・・そうなんです、奥の院が凄いのです。

 今来た道を戻り分岐から北への稜線を辿る。現れる岩場も難しいところはないが、足を滑らしたら大変だ。天狗岩には見事に彫り込まれた階段があって、これにもまた畏敬の念が沸く。何かを念じるように掘ったに違いない。

 道はこれから下る岩殿寺ルートをわけて、しばらく行くと奥の院となる。ここが凄い。今回のメインディッシュだ。「ここをパワースポットと呼ばずして、何処がパワースポットと呼べよう!」ぐらいな気持ちになる。それは高さ数十メートルの砂岩の大岩なのだが、オーバーハングして張り出した部分は10メートル近くあってその根元に社が安置されている。これが岩殿寺奥の院。その岩のルーフの壁面が凄い。圧倒的な造形なのだ。宇宙を支配する宇宙帝国の大王の部屋の壁はきっとこんなに違いない。・・・・・・・大げさか?

 あちこちの山を歩いてきた僕でも、このような岩には他にお目に掛かったことがなくて、それが波に洗われた海岸のものなら不思議とも思わないのだが、ここは完全に山のてっぺんだ。岩から水がしたたっている訳でもなく、ここだけ風が猛烈に吹き付ける訳でもない。なんでこんなになるのだろう?それを説明する看板などは一切ない。あーーー不思議! それ考えると夜寝らんなくなっちゃうよ。奥の院の岩の天辺で記念写真。

女の子たち

 頭の中で、その不思議をぐるりぐるりと考え解きながら岩殿寺まで下山した。僕は予め置いておいたチャリンコを飛ばし、別所ルート登山口まで車を取りに行った。お客様を待たせてはいかんと必死で漕いだので、ゲロを吐きそうになったが、かろうじて吐いてはいない。

 ガイド宅では季節の野菜と蕎麦を召し上がって頂き、山の話で盛り上がる。今回は怪しい日舞の先生がいらっしゃらなかったので、静かに夜は更けていった。ああ、平和。

 第二日目は北アルプスの爺ヶ岳の東尾根上にある前衛峰、白沢天狗山だ。ここには道がなかったのだが、近年整備され後立山を望む展望の山として登られるようになった。だが、まだ、人は少ない。岩殿山もそうだったが、ここでも誰にも会わなかった。爺ヶ岳スキー場から昨日より蒸し暑い尾根道を、ひたすら登る。

 いくつも新しい標柱が立てられてはいるが、これがご覧の様にことごとくズタズタになっている。誰の仕業?これはね、熊ですね。実はツキノワグマはガソリンとか、ペンキの臭いが大好きで、出来たばっかりの標柱を立てるとそれをペロペロやりに来るのだ。とはいえそのペンキは一応乾いているので思うようには味わえず、終いにカンシャクをおこした熊はその牙と爪で新品の標柱をバキバキにしてしまうと言う事のようだ。他の場所でもペンキを塗った標柱がこういう目に遭ってるのをよく見かける。恐ろしいね。

 春ゼミは絶好調だ。ほんとならここで座り込んで目をつむり、一心に春ゼミの声を浴びたいぐらいだが。蒸し暑いブナの森を喘ぎながら登る。皆汗でびっしょりだが、ここまで汗をかくとすがすがしささえ感じる。

カラフル毛虫(アオバセセリの幼虫なんだそうです、makkoちゃんありがと)

空色の蛾

ヨウラクツツジ

クロモジの木 薫り高い妻楊枝になる

ブナコブ

爺ヶ岳スキー場はアヤメがいっぱい

 3時間半で白沢天狗山到着。残念ながらガスが沸いていて期待していた大迫力爺ヶ岳は見えず。まあ、梅雨だし仕方がない。これからの楽しみはなんと言っても風呂入って、乾いた衣類を身につける事だ。全員の気持ちは同じだったに違いない。大町温泉郷薬師の湯にてひと風呂浴びて、わっぱら屋の蕎麦をたぐり穂高駅解散。

 


TBS番組取材同行

2013年06月07日 | テレビ出演

 梅雨だというのに全く雨は降らず、朝からさわやかなそよ風が尾白側渓谷を下っていく。昨日は同僚のガイドと白州道の駅で、ご奉仕品の中トロを食べながら飲んだくれて車中泊したので、若干頭が重いが谷を渡る風が生気を取り戻させてくれる。

 今日は、ここ竹宇駒ヶ岳神社から黒戸尾根を登り甲斐駒ヶ岳に至るBS TBSの番組制作取材陣に同行する。本日の予定は七丈小屋までとなる。この番組の旅人役は海洋冒険家の白石康二郎氏。この方、ヨットでの単独無寄港世界一周を最年少で成し遂げたいわゆるスーパーマンだ。この後も2回単独世界一周を成し遂げている。筋肉隆々、日焼けがよく似合い、テレビ写りもすこぶる良さげで、気の利いたコメントを即座に繰り出し、しかもとっても話しやすい好漢だ。僕は彼の案内役で、予期せずテレビに出演する事になってしまった。

 取材同行だから、いつものツアーとは勝手が違い飽くまでも撮影が中心となる。先ずは駒ヶ岳神社で、出発のご挨拶を撮影しお祓いをしてもらって出発する。撮影されて居るかと思うと心は落ち着かず、二日酔い気味の頭はぐるぐる巡り、いったい何をしゃべっているのか解らなくなってしまう。えらいことになってしまった。

 撮影スタッフは、プロデューサー、ディレクター、アシスタントディレクター、カメラマン2名、音声さん、空撮屋さん2名、歩荷さん、白石さん、そしてガイド二名の総勢12名となる。それぞれが機材をもっての登山はなかなか大変だ。ただ七丈小屋へ登るだけでも大変なのに、絵になりそうな所では、撮影しながら進んでいく。三脚を据えたり、手持ちのままで舐めるようなアングルで歩きながら撮ったり、プロ意識に妥協はない。

白石康二郎氏

 今回の取材で一番驚いたのは空撮屋さんだ。空撮と言えば普通ヘリコプターを使ってのものを想像するが、今回はヘリはヘリでもそれはラジコンで、しかも、UFOに四つのプロペラをつけたような形をしていて下には小型ビデオカメラを装備している。それが、プエーーーンと舞い上がって、白石さんと僕を追いかける様に撮影するのだ。森の中を縫うように、そして、刃渡りの岩稜を上空から。こういうものは男心をくすぐるので、空撮ヘリをつい見てしまいたくなるのだが、それはNGだ。カメラ目線はダメですからと釘を刺されているし、そのへんが辛いところ。夕方、七丈小屋に到着してから、その画像を見せてもらったが、それは今まで見たこともない映像で僕はかなり興奮してしまった。早く放映を見たいものだ。

SKYSHOT製空撮ヘリかっこいい。STARWARSの世界

刃渡りを上空から撮影

甲斐駒ヶ岳遠景を撮る

五合目小屋跡の岩窟 人がのみ一本で掘ったもの

 撮影は白石氏と僕の歩きのシーンだけではなく、花や木々のざわめき、しっとりとした苔や遠景も撮りながら進む。歩きのシーンはNGが出るともう一回戻って撮り直したりする。五合目小屋跡から上部は梯子や鎖が連続するので、危険な状況で細心の注意を払いながら撮影を進める。幸か不幸か天気が良くて、カメラマン的にも撮りたいものが沢山あるのだろう、この日七丈小屋へ到着したのは午後7時30分となった。すっかり陽は暮れていた。

 

 二日目は午前2時半スタートで、八合目からのご来光を狙う。雲一つない快晴、素晴らしい日の出、最高の絵が撮れたんではないだろうか。

朝日の中の撮影

鳳凰三山と富士山も

 10時ごろだったか、コースタイムで2時間半ほどの所を、7時間以上をかけて撮影隊は頂上へ到着。お疲れ様の握手で僕の登場シーンの撮影は終わった。

 山頂では、湯を沸かし、カップラーメンをすする。ガイドはインスタント焼きそばを振る舞った。一応撮影はここまでなのでスタッフもほっとしているようだ。撮れるものは全部撮った、やるだけのことはやった、そんな感じだ。タイミングよくガスが沸き始め、カメラマン達のプロ根性にも少し雲がわいたようだ。北沢峠への下山に集中する。

柳の芽吹きと小仙丈ヶ岳

コミヤマカタバミ ハート型の葉っぱがかわいい

コウライテンナンショウ

 北沢峠からは、南アルプススーパー林道を歌宿まで歩く。この時期はまだ北沢峠まではバスが運行していないので仕方がないが、これが結構きつかった。

 白石さんは体力的にはバリバリだから問題ないが、今回のスタッフはみんな年齢は若いものの登山をそれほど経験しているわけではなく、それぞれ足にマメが出来たり、膝痛だったりさぞ大変だっただろうと思う。今頃きっと筋肉痛で苦しんでいるはずだ。どうだい、みんな?

 白石さん、スタッフの皆さん、ほんとにありがとうございました。放映を楽しみにしております。

放映予定 7月6日(土)午後9時~   BS TBS「日本の名峰絶景シリーズ、甲斐駒ヶ岳」タイトルは違うかも?

恥ずかしながら、皆さん見てね。

 

 


甲府界隈は薔薇の花盛り

2013年06月05日 | 安曇野の暮らし

 BS TBSの取材同行で甲斐駒ヶ岳黒戸尾根に登ってきた。前日同僚ガイドと小淵沢で待ち合わせ、白州道の駅にて飲んだくれた。この道の駅の周りで撮った薔薇の花たち。

 甲府界隈はこの時期薔薇がみごとだ。個人宅でも公園でもやたら薔薇が目立つ。TDK の甲府工場は敷地がぐるり薔薇の生け垣で囲まれている。風土があってるのかなあ?

取材登山の模様はまた後日。

 


13クライミング初夏講習会

2013年06月01日 | ツアー日記

 僕のクライミング講習会は基本的に、ガイドと一緒に登山する場合にしばしば現れる、ロープを使っての登降をスムーズに行うための講習会だ。だから、クライミングシューズを履いて、難易度の高いフリークライミング用の壁を登ったりするのは、最後の余興みたいなもので、時間があればやろうかな位に考えている。

 大町の人口岩場は長野県が運営するもので、長野県山岳総合センターが管理している。屋根のあるフリークライミング前傾壁の北壁と難易度の低い垂壁の西壁、人工登攀用の南壁、あと、東西に50度から80度くらいの傾斜の練習壁がある。支点もしっかりあるので、クライミングの型を学ぶには安全でとても良い施設だ。しかも、許可を受けた者は只なのがありがたい。

 岩場に行くと、3人さんが既に練習中で、北壁を登っていた。挨拶してさてさてと言うところで、見るとスラックラインが張られているではないか。3人さんも往来を横切るように張ってあるそれを、申し訳無いと思ってか「どうぞ、やって下さい」と言ってくれたのでしばしスラックライン体験となる。要するに、綱渡りだ。

 これ、難しいです。落っこちると悔しいもんだから、つい熱くなってしまう。大笑いしながらみんなで楽しんだ。大いなる暇つぶしにはいいなあ。近々購入しようかと思う。

 と言う事で今回のメニューは先ずはロープの結び方から始まった。8の字結び。普通に作るやり方と、直接ハーネスに結びつけるやり方をみっちりやる。たとえ、ここで出来るようになっても、それは気のせいで、うちに帰って台所に立ったときなどに繰り返しやらないとだめよ、てなことを話しながら何回もやって頂く。次はプルージック。これは、メインのロープにくくりつけて、自分を確保しながら登ったり降りたりが出来る便利な結び方。フェンスに固定ロープを張っての支点通過もやっておこう。

 休憩時間にボルダリングも体験。これ簡単そうに見えてとても難しい。なんじゃこれ状態です。

 本日の最後は東壁の第1段目のテラスまでの登降訓練。僕がテラスで確保し、皆さんに登ってもらい、懸垂下降で降りてもらうと言うもの。ロープをしっかりハーネスにセットすることと、セルフビレーを解除するタイミングが重要だ。手順を間違えないこと。自分が何をやっているのかをちゃんと把握する事を理解してもらう。間違えたらあの世行きだ。

 この日はガイド宅に宿泊して頂いた。今回のお客様は女性のみ4名様。あまり多くは語らないが楽しい宴会は延々と続き、歌を歌ったり、笛を吹いたり、シャミを弾いたり法螺を吹いたり。最終的にはI村師匠の手ほどきで4姉妹のタオルを使ったエロ日舞で締めくくられた。4人そろって何を手にしているのかお解りだろうか?

完全に降参です。

 二日目は雨となった。北壁以外は完全屋外なので北壁を登ることにした。先に来ていたのはガイド仲間の中島さん、その後も水谷さん率いるクライマー連中が続々と現れ、北壁は大渋滞状態に。瑞籬山やら小川山やらが雨でダメになったので、みんなここへ集結してきたのだ。僕らは一番簡単な右側ルートをトップロープでクライミングを楽しんだ。隣のお嬢さんがメチャクチャうまくてみんなで見とれる。しなやかに、軽やかに、大胆に、力強く登っていく。惚れてしまいます。

 しばらくして雨も止んできたので、屋上に出て18メートルの懸垂下降を体験して頂いた。垂直の壁を自分の手一本でコントロールしながら下降するのはかなり勇気のいることだが、皆さん果敢にこなしてくれた。いくつになってもお転婆は辞められないのだ。ヤンチャ、お転婆のお手伝い致します。まだまだ出来る事は沢山あります。その調子で頑張りましょう。