山岳ガイド赤沼千史のブログ

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13鬼女紅葉の荒倉山と東山10月26、27日

2013年10月29日 | ツアー日記

落葉1

 鬼無里の秋は真っ盛りだった。台風27号の風雨が落とした落ち葉が足下を埋め、何処までも錦の道が続く。見上げれば紅葉、紅葉、紅葉。ここ荒倉山は紅葉の山だ。赤が黄色が橙々が、まだ染まらぬ緑に映える。この日台風が去って、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となった。寒気が降りてきて、日本海側に近い荒倉山は時雨れた。今年一番の寒さ。時々ぱらぱらと降る冷たい雨に、雨合羽を着込み荒倉山の最高峰砂鉢山を目指す。時々、雲が切れて鬼無里の里が見えたり、飯縄山が見えたりはするが、北アルプスを臨むことは出来ない。雲の中の北アルプスはおそらく雪が降っていることだろう。

紅葉1

紅葉2

落葉2

紅葉3

紅葉4

 

紅葉5

 ここ荒倉山は鬼女紅葉の山だ。鬼女紅葉は千年ほど前、京から流された女性だ。鬼無里の名の由来もそこに始まり、村内(現在は長野市鬼無里だが)には、西京、東京、二条、三条などの地名や伝説の場所を数多く残す。その伝説とは、こういったものだ。

以下 鬼無里観光振興会HPより引用・・・・・・・・・

鬼女紅葉
 その昔、会津の伴笹丸・菊世夫婦は第六天の魔王に祈って娘呉葉を授かりました。娘が才色備えた美しい女性に成長したとき、一家は都に上って小店を開き呉葉は紅葉と名を改めて琴の指南を始めました。
 ある日、紅葉の琴の音に足を止めた源経基公の御台所は紅葉を屋敷に召して侍女といたしました。
紅葉の美しさは経基公の目にも止まり、公は紅葉を召して夜を共にしました。
 経基公の子を宿した紅葉は公の寵愛を独り占めにしたいと思うようになり、邪法を使い御台所を呪い殺そうと計りましたが企てが露見してしまい、紅葉は捕らえられ信濃の戸隠へ流されてしまいました。
 信濃に至り、川を遡ると水無瀬という山里に出ました。「我は都の者。御台所の嫉妬で追放の憂き目にあいなった。」と語る麗人に純朴な里人は哀れみ、内裏屋敷を建てて住まわせました。
紅葉は喜び、里人が病に苦しむと占いや加持祈祷で直してあげたのでした。
 紅葉は付近の里に東京、西京、二条、三条、などの名をつけて都を偲んでいましたが、月満ちて玉のような男の子を産むと、その子を一目経基公に見せたいと思うようになり、兵を集め力づくでも都へ上ろうと考えました。
 里人には「経基公より迎えが来たので都へ戻ります」と言い置き、戸隠荒倉山の岩屋に移ると、戸隠山中の山賊を配下とし、村々を襲い軍資金を集めました。
 そのうわさが冷泉天皇の知るところとなり、天皇は平維茂に紅葉征伐を命じました。
 平維茂は山賊共を打ち破り、紅葉の岩屋へ攻め寄せますが、紅葉は妖術を使い維茂軍を道に迷わせます。
 妖術を破るには神仏の力にすがるほかないと別所温泉北向き観音に籠もり、満願の日に一振りの宝剣を授かりました。
 意気上がる維茂軍を紅葉は又もや妖術で退けようとしましたが宝剣の前に術が効きません。やむなく雲に乗って逃げようとする紅葉に、維茂は宝剣を弓につがえて放つと、紅葉の胸に刺さり、地面に落ちて息絶えました。
享年33歳と伝わります。
人々はこれより水無瀬の里を鬼のいない里・鬼無里と言うようになりました・・・・・・・・引用終わり
 
 なんとも切ない物語だ。愛する人と引き離され、都を追われた紅葉はやがて情念の女となりこの里を、人々を焼き尽くそうとした。だがこんな物語に、僕は妙にリアリティーを感じてしまう。この物語は伝説ではなくて、おそらく本当の話。そして、何世代にもわたって語り継ぐ人達の心をえぐり、心かき乱し、何とも言えない切なさを覚えさせてきた物語。おとぎ話ではない深みのある話だからこそ、僕らは感動し、人々を苦しめた鬼女でありながら、未だに愛され続けていると思うのだ。紅葉はただ、愛する人のところへ帰りたかっただけなのではないだろうか?ただその道は果てしなく遠く、激しかった。そう、己が鬼とならなければか叶えられないほど激しかったのだ。重く深い悲しみがそこにはある。
 
 宿に入ったその夜も、時雨模様は続き時々雨が降って風が強かった。あたかも紅葉が暴れ回っているかの様だった。もしかしたら明日の東山は雪になっているかもなあなどと思いつつ、やがて僕は気を失うように眠ってしまった。電気もつけっぱなしで。全く紅葉にやられてしまったのだ。

紅葉の岩屋、盗賊どもが立てこもるには十分な広さがある

謡曲「紅葉狩」の舞台はここなのだ。

紅葉稲荷 情念の赤

黄金の道

お客さんの今野さん撮影(今野さんありがとう)

 翌朝奥裾花自然園から、中西山のコルを目指す。天気は回復せず、雨は降らないまでも、風が強い。稜線ではかなり煽られそうな予感がする。気温もグッと冷え込んで、腕を組んで首をすぼめて僕らは歩いた。風が僕らの熱を奪う。なるべく汗をかかぬよう歩こう。

 美しい紅葉を撮影しようとして僕は愕然とした。朝電池を入れ替えたはずのカメラが起動しない。うんともすんとも言わない。どうも、充電済みと思って持ち歩いていた替え電池は空っぽのそれだったようだ。一気にやる気を無くしたが、ふとスマホの存在を思い出して気を取り直す。

「今日はこれでいくか!」

と言うわけでこの日の写真はスマホ版。

 稜線はやはり西からの風が、ゴウゴウ言いながら木々を揺らしていた。だが、背丈以上もあるネマガリタケに守られて、僕らの歩く道は殆ど影響なく歩くことが出来る。ネマガリタケの道は、綺麗に刈り取られていて体をそれほど濡らさずに済んだ。冬型の気圧配置は以前続いて、北アルプスは厚い雪雲に覆われていた。それでも、時折足下がパット開けて、小谷の里が見えたりすることもある。標高があがると、霧氷に飾られた稜線歩きとなる。そして・・・・・・・・・雪。はらりはらりと雪が舞い落ちる。みんなが歓声を上げる。今年一番最初の雪、初雪だ。初雪って、なんかワクワクする。みんな、そうだと思う。特に山に登って初雪が舞うとなんか得した気分になる。でしょ?

 


 

 

今野さん撮影

 東山までは、小さなピークをいくつか越えていく。一つ岩峰があって、雪でもついているとやっかいだなあと思っていたのだが、そこも問題なかった。午後には次第に高気圧に覆われてくると言う予報どおり、青空が顔を出したり、北アルプスの稜線もちらっと見えたりでかなりドラマチックだ。何より、霧氷が美しい。東山まで4時間半。充実感ある行程だった。

 じっとしていると寒いので、早々に引き返す。帰りも結構な上り下りがあるから楽では無いが、天候も回復傾向だし心には余裕がある。次第に気温が上がってきたのか、霧氷が風にたたき落とされて、バラバラと降り注ぐ。それはあたかも鬼女紅葉に悪戯されているかのようだった。

 鬼無里の湯にて入浴、「いろは堂」のオヤキを土産に、長野駅解散。

 

 

 

 

 最後に今回泊まった宿をご紹介しよう。

鬼無里   「裾花館」

いつも泊まっているところがいっぱいで、仕方なくここになったのだが、なんと大当たり。夕食は食べきれない程出てメインはこのキノコ鍋。天然キノコがこれでもかと入っている。マイタケに、あれにこれになんとかかんとか、全然解らないけど、腰を抜かすほど豪華な鍋だ。当たり前だが、キノコはいつでもあるわけではないと言うことだ。アタリの一日だったわけだ。朝食も朝弁当にしようと思っていたが、朝早くに出して頂けた。温かい食事、感謝、感謝。

 と言うわけで、お勧め。

 大きくなります ↓

         

 


阿弥陀岳南陵日帰りバリエーション10月22日

2013年10月28日 | ツアー日記

 早朝にお客さんが宿泊しているグリーンプラザにお迎えに上がる。朝5時半集合だというのに、この宿では朝食を出してくれて、お見送りまでしてくれて、僕は泊まってはいないのだけれど、なかなか感じの良い宿だなあと思う。お客さんにどうだったかと聞くと、食事も美味しくてボリュームもあって大満足だったと言う事だ。こういう情報は大事で、そんな生の声や体験があって、僕の使う宿や食事処リストが出来上がってきた。お客さんと山行を終えたとき何処で風呂に入って、何処で食事をするかというのは重要で、そこが上手く行けば良い感じで山行の余韻を持ち続ける事が出来る。幸せな気分のまま家に帰る事が出来るのだ。そこでいやな思いをすると、山行全体が味気なく感じてしまう。僕みたいな個人ガイドは、そんな穴場情報を持っていて、ガイド同士情報交換したりもする。最後にそんなお気に入りのところにお客さんを案内して、

「美味しいですね!」

と言ってもらうと、こちらもおもいきり鼻の穴ふくらまして

「そうでしょ?」

と、とても幸せな気分になるのだ。大手のツアー会社では絶対に立ち寄れない素敵な店を僕は結構知っている。山の帰りや、何かのついでに気になる店に入ってみてリサーチしたりもする。いつも通りすがりに見ている気になるラーメン屋などもチャンスがあれば行ってみるのだ。そんなところを探すのもガイドとしての僕の楽しみだ。

ヌメリスギタケ。。。。。かな?

 10月も半ば過ぎ、阿弥陀岳南陵はこの時期日帰りで出来るバリエーションルートだ。北アルプスではそろそろ雪が降り始め、山小屋も大きなところを残して殆どが店じまいのシーズンだ。半端に降った雪は日中溶けて、また夜には再凍結するので、岩場はツルツルだったりするし、かといってアイゼンをずっと着けて歩くほどでもなかったりする微妙なシーズンだ。八ヶ岳は日本海から遠く内陸に位置するため、雪が来るのはもう少し後の事になるし、日だまりの山行をまだまだ楽しめる。

青ナギ

P3

 舟山十字路から林道を入って南陵に取り付く。直ぐ尾根に登り上げるが、周辺は岩場とザラザラとした砂地がある松の森のだ。明らかに松茸が生えそうな場所だ。しばらく行くと「キノコ山につき、立ち入り禁止、罰金十万円」の看板。一帯は地元の共有林となっているようで、毎年の山周りの人達がたてた、境界をしめす札があちこちに束になって立っている。苔むした森の中は全くバリエーションらしくもなく普通の登山道を行くのと何ら変わりない。P1、P2も難なく越えて、いよいよ核心のP3だ。P3には尾根を行くルートと、西側のルンゼを行く岩溝コースがある。尾根ルートの方が難易度は高い。岩溝コースには常にチョロチョロ水が流れていて、11月にもなればこれが凍結を始める。こうなると完全にアイゼンピッケルの世界で、簡単には登れないのだが、この日はまだ凍結していなくて簡単に登ることができた。もちろん、ロープは必携だが。

ワンピッチ目のルンゼ

2ピッチ目の急な草付き

 ここを過ぎるとあとはザラザラとした尾根を行けば阿弥陀岳に到着だ。頂上で赤岳の展望を待ったが、濃いガスの中とうとうその姿を見せてくれることは無かった。木漏れ日の御小屋尾根を下って舟山十字路へ戻った。

 阿弥陀岳南陵はアプローチも短く冬ルートとしても人気のあるところ。今度の冬には一度訪れてみようかと思う。

 


13錦秋戸隠縦走10月23,24日

2013年10月24日 | ツアー日記

 戸隠は今、秋まっただ中である。どこを見ても鮮やかに色づいた木々が目に入る。戸隠神社奥社までの参道を歩けば、桂の木の落ち葉が甘く香っている。それはまるで綿菓子のような香りだ。落ち葉は桜餅の様な香りがしてみたり、少しアンモニア臭が鼻をついたり、カビっぽかったり、そんな香りが僕は好きだ。深呼吸をして吸い込みたくなる。僕はそれほど鼻の利く方ではない。キノコや、花の香りなどはよく解らなくて、人に指摘されて始めて色んな香りに気づく。だが、その僕が気づく位だから、枯れ葉の香りは相当強烈なのだろう。

 昨年の今頃はパワースポットブームでこの戸隠神社奥社参道は沢山の若者で溢れていた。参拝の人の順番待ち行列が出来て、その長さは数百メートルに及んでいた。それでもそこに並ぶカップル達は楽しそうだった。だが今年はその気配は全くない。ブームが過ぎたのか、戸隠神社の霊力が失せたのか定かではない。永遠の愛を祈願しに来る若者達のその後はどのようになっているだろうか?などと考えながら参道を行く。

 

 今日は曇り空。10月下旬だというのに、台風26号と27号が日本列島に接近し、その影響をうけてぱっとしないのだ。そう言えば秋晴れなんて今年はあまりないような気がする。しかも接近中の台風は中心気圧925hPa。中心の最大瞬間風速は70メートルの超怒級の強力さ。9月から台風が来る度最大級とか、最強とかそんな事を天気予報では言ってるし、いったいどうなっちゃってるんだろうね、僕らの地球は。

 と言うわけでこのブログを書きながら次のツアーの日程調整に追われている。26日(土)は台風の影響が残りそうだし、27日(日)は何とかなりそうだから、荒倉山を諦めて、東山のみに専念して催行しようかとか辞めてしまおうかとか色々考える。僕の仕事はほんとにお天気相手なので、中止になることもよくあることで全く不安定な商売である。だけど、何とか生きてこられたし、これからもまだしばらくは続けて行くつもりでいる。話が大きくそれてしまった。いったいこれは何の報告なのか、大変申し訳ない。 たまにはこんな気の向くままにしか書けないこともあると言う事でご勘弁を。

 登山道に入って心配していたのはやはり雨だ。戸隠周辺は雨の日はとても滑りやすくなるから。岩場以外は粘土質のところが多いから、靴底に泥が付くと岩場でやっかいだし、垂直に近い岩場の鎖はツルツルになる。特に最近のステンレスの鎖は、雨の日イヤな感じがする。女性など握力の弱い方には辛いかも知れない。幸い、濃いガスの中を行くことになったが、岩は道は概ね乾いていて不安は無かった。蟻の塔渡りもロープを張って安全に万全を期す。垂直の崖下はガスでけぶって見えなかったから、恐怖感も意外となかったのかも知れない。蟻の塔渡りを越えると本当にほっとする。

 八方睨みを越えると戸隠山に至る。戸隠山は何とも目立たないピークで、一応ここら辺で一番高いのだが、展望もあまり良くないし、頂上の看板も立派なものではない。なにより、やっと登ったと言う感覚に乏しい。縦走路のなかの小ピークといった感じだ。やはり戸隠の主峰は八方睨なのだと思う。吹き付ける霧の為に粘土質の道は滑りやすい。下りは特にいやらしい。

 一不動の避難小屋にはアサヒビールが出資したトイレブースが出来ていた。中には洋式便座みたいなものがあって、付属の弁袋を便座に装着して用を足す。戸隠牧場から登ってくる道沿いにある一杯清水の水質汚染をさせないために必要なことではある。臭いも残らないから快適なのだが、それを持って歩かなければいけないのは少し抵抗がある。だがこれは時代の流れなのだから受け入れなければねえ。

 このトイレブースはアサヒビールの寄付により設置されたものだ。調べたところ、アサヒビールと長野県がタイアップして展開している事業で、2009年からの寄付金の総額は2600万円を超えるらしい。それで藪漕ぎ山の安平路山とか奥念丈山とかにアサヒビール提供の看板があったのだ。この前書いた、マムートの件と比べるとかなり好感が持てる。あまり宣伝にもならないところに地味に金を使っている感じ。どうひっくり返ってもマムートはトイレにあのロゴを付けるとは思えないし。。。。。。。ついつい出てしまうマムート批判。マムートファンの皆さんごめんなさい。

 戸隠牧場へは谷沿いのいやらしい下りだ。晴れた日でもじめじめして気が抜けないのに、今日はなおさらだ。谷を下ると広々とした牧場に飛び出す。数頭の馬が、降り出した雨に濡れながらも草を喰んでいる。僕らを見つけ栗毛の一頭が近づいてきた。馬の鼻筋を撫でてあげると実に気持ちよさそうな顔をした。僕らが立ち去ろうとすると柵越しに着いてくる。実に人なつこい。いい子だなあ、穏やかで、寂しがり屋で。連れて帰りたくなる。馬と暮らす日々はきっと素敵なんだろうなと夢を見る。ありえんか?

戸隠牧場の牧草を集める機械

ルリミノウシコロシ

 神告げ温泉にて入浴、雨で人出が少ない為か、いつもの「うずら家」も意外と空いていて待ち時間なし。今日は奮発して大盛りを頂く。長野駅解散。

 

         

 


BS TBS「 日本の名峰シリーズ 八ヶ岳ロケ」取り敢えずご報告

2013年10月21日 | テレビ出演

絶景を求めて彷徨うカメラマン

 フリーキャスターの住吉美紀さんと、超男前の永井大さんと晩秋の八ヶ岳縦走取り敢えずのご報告。登山が初めての住吉さんが二日目三日目と次第に力強くなる姿は感動的。ほんと、見違える程だった。そして、とても可愛らしい人。

永井さんは、男気のある超男前。この人ハンパじゃありません。スタッフの松崎君と、インターハイ5位と14位の真剣組み手披露してくれました。

詳しいご報告はいずれ。

次第に力強くなった住吉さん、男気永井さん

永井さんの中断蹴りがカメラマン松崎に決まる。この人達マジです。翌日あちこち痛いといってました。

 


つやとセッション

2013年10月18日 | 音楽

つやとセッションする。白雲節、安曇節、童神
彼女はしばらく歌を歌わなかった。


「やろうよ」言っても
     ・・・・・・・・・「やらへん」ゆってた。
ずっと、三線を持つこともなかった。

最近、三線抱えて遊びに来る。
相変わらずのいい声で、心を込めて歌う。

安曇野スタイル赤沼家で演奏予定です。


山の食料

2013年10月17日 | 登山道具考

 登山道具ではないが、山で何を食べるかと言う問題がある。食料というのは実は一番重い。ザックに装備をあれやこれや詰め込んで「あれ、まだ余裕あるじゃん?」なんて思っていても、最終的に食料やら飲み物を詰め込むと、いきなりザックは重量を増し、「参ったなこりゃ」となるものだ。

 美味しい食べ物はいくらでもある。贅を尽くせば、山でのゴージャスな食事はいくらでも可能だ。ワインなんかも瓶のまま担ぎ上げて、オープンナーですぽんと栓を抜く。まあ、それは解るんだけど。

 とにかく、美味しいと思われるもの、食べやすいと思われるものは、その殆どが水分の多い食べ物だ。これをこれしか食べられないと言って、そのウェットな食べ物をいちいち詰め込んでいくと、ザックの重量は際限なく重くなり、登山自体が苦渋に満ちたものになってしまう。だから、美味しいものは下山後お家や街で食べるとして、登山中はドライで、高カロリーなものを持ち込んで何とか食べるのだ。そう、カロリーさえ取っておけばそれでよしと割り切って。

 最近尾西食品のアルファ米の2食入りパックが無くなってしまった。全てが一人用のチャック付きとなったのだ。もはや二食入りは登山者ぐらいしか使わないのだろう。尾西食品はなにも登山者の為にアルファ米を作っているのではなくて、災害備蓄とかそんなものが中心。しかも時代の流れなのか、その登山者もみな一人用を使う。シェアの時代ではないのだ。「同じ釜のメシを喰う」ことはもう無いのだ。で、あまり売れず付加価値の少ない2食入りはついに製造中止となったのである。

 さて、軽い食事のアイディアとして、カップヌードルリフィル、カップヌードル御飯、尾西の白飯、チャーハンの素。僕はこんなものをよく使う。カップヌードルリフィルは容器がないから、先日紹介したスクリュー絞め保存容器で湯を入れて作る。カップヌードル御飯はそのままだと嵩張るから容器から出して、ジップロックに入れて持って行く。そのまま湯を入れてもいいし、保存容器で作ってもよし。いろんな味があるから、結構楽しめる。おまけに尾西のアルファ米の半額ほどで買える。白飯には、色んなチャーハンの素を使い分けて楽しむ。(笑)炒めたりはしない、ただ混ぜるだけだ。どれもこれも基本的に大して美味くないのではあるが、アレンジ次第で可能性は無限だ。笑

 僕はこんなものばかりを食べている。そして山小屋の冷凍食品も。春には雪を溶かしてPM 2.5入りの水をごくごく飲む。きっと長生きしないね。でも、とにかくそれらを喉に流し込む。

 


使える食器

2013年10月16日 | 登山道具考

 これは、僕が愛用の食器である。岡崎工業社製 LUSTRO WARE。小さいのが250mlで大きいのが750ml。三つが入れ子になって携帯に便利である。本来はホームセンターに売っている保存容器だ。これと似たものに UNIX WARE というのもあるが、これはサイズが若干大きくて、形が寸胴なので食器として持ちにくく僕は好きではない。たかだか50mlのサイズの差だが、その無駄が気になるのだ。これの最大の魅力はスクリュー締めが出来て、パッキンが付いているので液体を入れても中身が漏れないことだ。

 これは、テント山行の時はとても便利だ。カップヌードルリフィルをこれに入れてお湯を入れ、フタを絞めてしまえば狭いテント内でこぼれることもない。ラーメンひっくり返して大騒ぎって結構あるのだ。余った夕食をこれに入れておけば次の朝まで安心だし、朝作ったアルファ米をこれに入れて、缶詰なんかもトッピングしてお弁当なんてのも得意だ。あのアルファ米のチャック袋から食べるのって、スプーンで掻き出すみたいにしないといけないから、とても食べづらくて僕は好きじゃない。これなら、箸で優雅に頂ける。

 僕は沢登りをして釣りをする。午前中に釣った岩魚をさてどうするかと言う時もこれは大活躍だ。源流の極上岩魚を刺身にして、醤油でつけ込めば夕方には焚き火に当たって「岩魚のヅケ」が食べられてしまうし、岩魚の腹から出てくる宝石のような岩魚子は、翌朝にはねっとり濃厚な味わいの醤油漬けになる。思わず朝から一杯やりたくなってしまう訳だ。

これ いいでしょ?


BS TBS八ヶ岳ロケハン同行

2013年10月15日 | テレビ出演

白駒の池

 今年初の寒気の流入があったこの日、ディレクターとADさんの三名で麦草峠より赤岳を目指す。峠付近の駐車場は満杯で、路上駐車もちらほら出始めている。10月の連休初日の今日、白駒の池に映る紅葉を愛でに行く行楽客でごった返しているのだ。白駒の池の紅葉は進み気味で、この風に吹き飛ばされてしまったのか、ナナカマドの葉もまばらになってしまっている。ちょっと寂しい初冬の雰囲気の白駒の池だ。

高見石より白駒の池

高見石小屋のランプ達

 この寒気の流入で二日間、八ヶ岳周辺は猛烈な冷たい風に煽られ続けた。白駒の池から高見石、黒百合ヒュッテを経て天狗岳を越える頃には樹林に守られる事もなくなり、風に煽られてふらふらしながら僕らは歩いた。偏西風の蛇行が原因らしいが、今年は10月になっても暖かい空気が日本列島を覆って、汗をかきながらの山旅が続いていたので、いきなりの寒風は堪える。でも、例年の10月ならば普通と言えば普通なのだが。何となく心細い感覚はこの時期ならではのものだ。肌が感じるこの時期独特の感覚。何年も、何年も、繰り返しやってくるこの感覚と僕は既に仲良しになっている。昨年の今頃起こったことを思い出したりして。そして、また一年が巡ってきたことを悟るのだ。山頭火の句

 うしろすがたのしぐれていくか

を何となく思い浮かべる。

硫黄岳爆裂火口

 硫黄岳の爆裂火口に、草モミジが引きちぎれんばかりに揺れ、僕らは風に翻弄される。遠くに陽の光を浴びる佐久平が見える。実に暖かそうだ。硫黄岳周辺は、風を遮るものがなく、冬は大概風が強い。天狗岳辺りは、西天狗岳が風を遮ったり、岩稜は意外とエアポケットが出来て風を避けられたりする。しかし、硫黄岳は、まあるい山体を駆け上がってくる風がそのまま、舐めるように斜面を駆け下る。隠れる場所などどこにも無いのだ。今日はずっと晴れていたのだが、硫黄岳山荘に到着する頃にはついに空はまっ黒な雲にすっぽり覆われてしまった。小屋の中は登山客でごった返していた。とても暖かく、芯まで冷えた体が次第にほどけていく。

硫黄岳ケルン

硫黄岳山荘の日の出

 相変わらず風は強いが快晴の朝。食事の時間は遅いのだが、早起きをして日の出を見た。このブログを始めて皆さんに写真を見てもらえるようになって、天気のいい日は早起きが出来るようになった。ものを書くことも頭の中を整理するにはいいことだし、このブログは僕のリハビリテーションみたいなものになっている。 

青い富士

 横岳も赤岳も登山者でごった返している。中高年も多いが、若い人がかなり目立つ。ボーイズ&ガールズは八ヶ岳が大好きなのだね。でもこうやって若い世代が山に触れ始めたことは、登山業界にとっては光明で、子育てなどでいったん山から離れたとしても、また再び彼らは帰ってくるだろうし、山はそう言う魅力をもつものだと思う。年齢を超え、それぞれの力量で楽しめるものなのだ。

落ち葉

葡萄の葉

ステンドグラス

赤蕎麦、昔見たネパールの蕎麦は皆赤かった、ネパールが蕎麦の原産地なのだという

 美濃戸に下山し、もみの湯にて入浴。麦草峠に車を取りに戻ったのだが、峠付近には路上駐車が溢れ渋滞していた。パトカーに乗った警察官が拡声器で、車を移動しろとそこら辺の山に向かってがなり立てている。茅野市内へ戻る道も渋滞が激しく、渋滞になれない田舎ものの僕は少し閉口したのだった。畑には赤蕎麦の花が満開だった。

 


無粋もの

2013年10月14日 | 雑感

 これは八ヶ岳の赤岳文三郎道の階段状土留め板に貼り付けられた、MAMMUTのロゴプレートである。ザラザラごろごろの登山道が歩きやすくなってありがたいことだが、こんなのが一枚一枚にベタベタ貼り付けられていて、なんと目立つこと。これがいいっつーなら、金を出せば自然界に広告でも看板でも何でもいいっつーことになる。マムートが金を出したかなんか知らないが、やり過ぎでしょ?しかもこの路は下りで使う人が多いから、下り方向から見えるように貼り付けてやんの。あざといねえ。こういうのを、無粋という。

 アサヒビールもあちこちに頂上標柱やらなにやら寄付したりしてて、「アサヒビールが云々・・・・」みたいなプレートを貼り付けてるが、今のところスーパードライのロゴをベタベタ貼り付けたりはしてはいない。しかも、変なところに金を出してる、安平路山とかね。どちらも大差はないが、もっとさりげなく、粋にできんもんかなあと思う。で、マムートが手を出すのは、南八ヶ岳と涸沢と原宿なのもなんか鼻につくのだ、戦略的で。

 


はなちゃん

2013年10月13日 | 安曇野の暮らし

コレは我が家の愛犬ハナちゃんという。

現在六歳メス、出産経験あり、純血の雑種犬だ。

犬はペットショップで購入するのが当たり前のこの時代。

今や、雑種犬は逆に貴重な存在、縁がなけりゃ一緒に時を過ごすことはない。

しかも気のいい奴とはね。

 

さて、虚ろなまなざしのハナちゃん。
「どうせ遊んでくれないんでしょ?」
と言っている。

でもあたしは
退屈でけだるいだけの女なんかじゃないわ
やられたら、やり返すし
結構ワイルドなのよ
猿なんか追いかけ回すし

しかも、知・て・き!

でも、やっぱ、なんか、退屈、あくび