山岳ガイド赤沼千史のブログ

山岳ガイドのかたわら、自家栽培の完全手打ち蕎麦の通販もやっています。
薫り高い「安曇野かね春の蕎麦」を是非ご賞味下さい

麻倉図画工作遊園地 6月の海展

2014年06月30日 | 安曇野の暮らし

 安曇野の北、大町市にある麻倉はその昔、麻の貯蔵に使われていた大型の倉だ。しばらく使われなくなっていたらしいが、オーナーの心意気と、それを運営する若者達??の心意気でもって再生され、現在アートスペースとしていろんなイベント行っている。昨日から始まった「麻倉図画工作遊園地 6月の海展」に顔を出してきた。

 実はこの「6月の海展」の最終日7月6日に、海中パーティーなるものが行われて、その音楽担当に抜擢された我ら「プレイトーンズのお兄さん達」は、そのチラシ作りのための写真撮影に出かけたのだ。

 そのボロッチかった倉は見事に再生されて壁も塗り替えられ、玄関もモダンに。一角には麻倉カフェも併設されている。内部は実に重厚な造りで、力強く組まれたその部材の迫力だけでも見物である。

 さて、麻倉に入ってびっくりした。そこには巨大な段ボールで作られた深海の静物が所狭しと配置されて、鯛やヒラメの舞い踊りなのである。それはまるで竜宮城さながら。

 シロナガスクジラ、ダイオウイカ、巨大フジツボ、サメ、クラゲ、ウミウシ、珊瑚、イエローサブマリン、そして海中に降る雨。6月はずっとワークショップが開かれて、子供達や大人達や、下手も上手いもなくて、とにかく何でも作ってみようと言う精神で作られてきた作品たちは自由奔放で、楽しくてウキウキしてくるモノばかりだ。

 そして、ぼくにとっては懐かしい絵の具の香り。

 と言うわけで作品達と遊びながら撮影をする。お魚を被ってみたり、フジツボの中に入ってみたり、イエローサブマリンに乗り込んでみたり、巨大ウミウシにまたがって、シロナガスクジラに呑み込まれてみたり。作品がいいから、なにやっても面白い。みんなでキャッキャ言いながら撮影は進んだ。

 こんなモノを作り上げてきた子供達も大人達も素晴らしいと思うのだ。実際この作品展を見に来れば、こんな風に遊べたり落書きしたりも出来ると言うことである。なかなかこんな展覧会はないと思う。

アートなんて、構えてしまったら面白くない。僕らはますます本気で遊ばなくてはならないのだと、あらためて思ったのだ。

でもって、最終日の「海中パーティー」は

7月6日(日)午後2時から。

入場無料(投げ銭)、なんと、お菓子付きらしい。

麻倉プロジェクト 

先ずはみなさん、とにかく行ってみよう!

プレトンのお兄さんとジョイフルの海中音楽演奏は午後2時半頃から

 


長野県警、遭対協合同山岳救助隊訓練

2014年06月29日 | 雑感

 夏の登山シーズを前に長野県警山岳救助隊と北アルプス南部地区遭対協合同訓練が行われた。先ずは松本空港にて今年度新規導入された県警ヘリ「やまびこ2号」への搭乗訓練。

 「やまびこ2号」はイタリア製アグスタAW139。やまびこ1号に比べると総重量は1.5倍、出力は2倍程になる期待の高性能ヘリだ。それに伴って搭乗人員は14名から17名となる。

 山岳救助の現場では、ヘリコプターに乗り降りすることが第一歩になる。遭難現場は急峻な斜面や岩壁での救助活動になるので、ヘリはその殆どの場合が着陸できる訳では無い。だから、上空の定位置にホバーリングするヘリから、その外部に取り付けられたホイスト(巻き上げ式クレーン)を使って下降して現場に到着、そして遭難者と共に釣り上げられヘリに収容されると言う段取りを踏む。 

 その搭乗方法は機体ごとに微妙に違う。だから現場で戸惑わないようにその使い勝手を救助隊員は学んでおく必要がある。先ずは格納倉庫内で県警航空隊の隊員からその方法についてレクチャーを受け、細かな器具を確認する。

 一通りのレクチャーを受けいよいよ実際の搭乗訓練を行った。下降してくる2名の隊員を乗せ、けたたましい爆音を上げて「やまびこ2号」は離陸した。上空30メートル程に低位したヘリのハッチが開き、隊員が下降してくる。下まで降りると下で待機した隊員2名が釣り上げられる。これを繰り返す。何も無い空間にぶら下がり高度を上げていく感覚はあまり気持ちの良いものでは無い。はっきり言って僕は苦手だ。隊員二人を釣るホイストのワイヤーはわずか8ミリ程度しかない。強度は十分のはずだずだが、なんかねえ。ヘリの直下ではすざまじい爆音と爆風、そして巨大な機体が持つ威圧感に圧倒された。

 午後は朝日の岩場にて、ザイルを使用した搬送訓練を行った。30メートル程の垂壁を使って、メインザイルを張り込み救助者を入れたストレッチャーを下降させ、また引き上げる。救助には通常のクライミングとはまた違った技術が必要だ。使うザイルも一本ではなく、同時に数人が下降したり登り上げたりするから、システムは複雑で、その一つ一つが確実でなければならない。入り組んだザイルワークの中の弱点を見抜け無ければその先には大事故が待ち構えている。それは遭難の現場だけでなく、こんな訓練でもまったく同じ事だ。いくつもの目で確認する。気合いの入ったかけ声が、垂壁に轟き渡った。

「やまびこ2号」の導入に伴って退役する「しんしゅう」。やまびこ2号に比べるとそれはまるでラジコンヘリの様に見える。古い機体とは言え手入れが行き届いてピカピカだ。長い間ご苦労様。

 


大天井岳遭難捜索 それは奇跡だった

2014年06月25日 | 雑感

 6月22日、甲武信岳に突き上げる釜ノ沢ツアーを雨の為中止にせざるを得なくなった朝、ぼんやりしていたら僕の携帯電話が鳴った。

「大天井岳で女性が行方不明ですが、出動できますか?」

「オッケー、出られますよ」

 救助隊は我々常念一ノ沢班と燕山荘班の2隊が22日に入山し、23日にもう一隊が中房から捜索に入ることになった。体勢を整えて僕らは午後1時、遭対協隊員2名、警察官2名で一ノ沢登山口から常念小屋へ向かった。雨は降っては居なかったが今にも降り出しそうな空模様だった。

 その女性は6月20日に徳沢を出てその日は蝶ヶ岳ヒュッテに宿泊し、翌21日午前10半ごろ常念小屋を経由して燕岳方面へ向かったという。21日午後2時半ころ、大天井岳付近で4人組のパーティーとすれ違ったところまでが確認されて居る。その後女性は燕山荘には現れず捜索願が出された。いったい何処に行ってしまったのだろう?我々救助隊はその日常念小屋までとしたが、遭難女性はその日山中で雨の二晩目を迎えていることになる。

 この時期は通常の登山道には未だに残雪が多く危険な箇所が沢山ある。大天井岳付近も夏道は斜面のトラバース道で、急傾斜の残雪が残り通行は大変危険だ。午後2時過ぎに大天井岳に居たとすれば、燕山荘へ向かうには時間が少し遅すぎる。もしかしたら、焦ってトラバース道を進み、滑落したのかも知れない。時間が足りないと諦めて常念阿小屋方面に戻って、道に迷ったのかも知れない。持っているはずの携帯電話が繋がらないと言うことは、電波の届かない場所に居るか、もしかしたら意識を失っているのかも知れない。そうなると生存の可能性は限りなく低い。反対側の燕山荘から入った救助隊は22日中に大天荘に到着したが、手がかりは見つけ出せず、トラバース道にも踏み跡や滑落跡は無かったとのことである。様々な事を話し合い考えた。天気が良ければ救助ヘリも飛ぶはずであるが、梅雨の空模様に保証などない。

 翌朝、起きると快晴だった。槍穂高もよく見える。しかし、足下には雲海が安曇野側と上高地側にびっちり入っている。下界はどんよりとした曇り空のようだ。ヘリはすぐには飛べない状況と連絡が入る。早朝に小屋を出発し、大天井岳方面へ向かった。道を外れて間違えそうなところを覗きながら行く。かすかな痕跡が無いか、丹念に砂地を見たり、谷を覗き込んだりするが、痕跡は無い。

 東天井岳を過ぎる頃、一機のヘリが我々の上空に飛来した。それは上高地から西岳ヒュッテへに荷揚げを行っている民間会社のヘリで、荷揚げの合間に捜索に当たってくれているようだった。東天井岳の南尾根を舐めるように飛び、東斜面も飛んでくれた。県警ヘリは未だに、松本空港を飛び立てない。稜線の天気は良いのになんともどかしい。

 その直後だった。大天荘まであとわずかと言うところで、遭対無線に連絡が入った。

「遭難者は、自力で大天荘に到着、大きな怪我はなく、元気な模様」

やった!!思わず救助隊4名でガッツポーズ。全く希望を見いだせないで居たので、いきなりの状況好転に僕らは興奮した。大天荘に向かう足も逸る。

 大天荘に到着すると遭難女性は玄関の奥にいて思いの外元気そうだった。若干手足が紫色に見えたが、意識もしっかりしていて笑顔もみえる。怪我もないという。警察官が事情聴取すると遭難から二日間の状況がだいたい解ってきた。状況はこうだ。

 彼女は4人の登山者とすれ違ったあと、セオリー通り大天井岳の山頂から燕山荘方面に行こうとしたところで方向を間違え大天井ヒュッテ側の尾根を下り始めてしまった。そして、100メートル程下ったところで左側のガラ場に滑落し、そのままその先の雪渓を滑り落ちてしまったと言うことだった。途中岩の上を飛び越えたりもしたが、一向に止まらず、靴と指の爪を立てて滑落をコントロールしながら落ちていったが、最後はブッシュを掴んで止まったという。止まった後登り返しを試みたが、更に二度滑落し、観念して樹林の中で休んだ。レスキューシートを被り、あり合わせの乾いた衣服に着替え、わずかな食料で雨の第1日目の夜を過ごした。水は雪渓の雪をペットボトルに詰め、懐に入れて溶かして飲んだ。天気の悪かった昨日はじっとして動かず、もう一晩をそこで過ごした。そして、天気が回復した今朝、3時間を掛けてここまで登り返してきた。

と言うことだった。俄に信じがたいことである。状況を聞いて判断すると、彼女は標高2,800メートルから2,400メートルのところまで滑落している。それは、最初のガラ場から推察すると400メートルを滑落したことになる。水を引く黒いホースを見たというから、彼女が二日間を過ごした場所は、大天井ヒュッテの水場の沢で、彼女はそこへ至る狭い支沢を大した怪我もなく400メートルも滑落したことになる。普通だったら、脇のガラ場に突っ込んでそれきりだ。これはどう考えても奇跡である。そして、慌てずじっとしていたことも、幸いしたのかも知れない。そう、レスキューシート(銀紙のシート)を持っていたこと、これも非常に大きい。常識的に考えれば、この時期に雨合羽だけで雨の二晩を過ごしたら低体温症になっても全く不思議でない。僕なら多分そうなっていたかもと・・・・・・と思う、それほど過酷な状況なのだ。しかも彼女はその最中、眠ることが出来たと言っていた。一同唖然・・・・・・・・女性は凄い!・・・・・・・どえらい幸運の持ち主だ。

 午前10時頃、ようやく開いた雲の切れ間をついて県警のやまびこ1号が飛来した。女性は無事松本の病院へと搬送されていった。その後、次第に雲が沸き、ヘリの飛行も難しくなる状況だったから、これも幸いした。しかし、かの遭難女性は当初、我々と一緒に歩いて下ると言っていたのだ。まさしく奇跡のような出来事だった。

帰る我々の足取りも軽い。

PS 病院に搬送された女性は検査の結果打撲程度で入院もせずに済んだとのことです。良かったね。

 

 

 


ツクモグサとホテイラン絶滅危惧種を巡る

2014年06月17日 | 蝶よ花よ獣たちよ

 ツクモグサとホテイランという二つの絶滅危惧種に一年に一度会いに行く。ツクモグサはキンポウゲ科の多年草、ホテイランはラン科の多年草だ。場所は敢えて言わないことにする。まあ調べれば解る事だし、近くの山荘のHPでは開花状況も掲載されているから、言ってしまっても良いのだが、これらの絶滅危惧種というのは、山野草マニアの標的にされて居るのも事実だ。特に野生ランに至っては狂信的なマニアが存在し、場所が特定されればあっという間に盗掘の憂き目に遭ってしまう。

「ナントカ山に行ってきました、登山口から少し登るとナントカランの群生地があって~~~~!」等と記載するとネット時代の恐ろしいところで、あっという間に検索され、翌日にはすっかり堀取られ・・・・・なんてことになってしまうのだ。

 僕が以前フラワーガイドとして滞在した(笑っちゃうでしょ?)礼文島にはレブンアツモリソウという固有種があって、これは今では野生種では絶滅に近いと聞く。その当時も盗掘騒ぎがあって、数十万円で取引されているとか、893が絡んでいるとかの噂もあった。レブンアツモリソウは現在「特定国内希少野生動植物種」(種の保存法)と言うものに指定されていて許可無く採取、移動、販売は出来ない。今では栽培技術が進んで特定の許可を受けた業者が培養、栽培を手がけているらしい。僕が礼文島に滞在した十数年前は、人工栽培で、花を咲かすことは不可能とされていたが、現在ではそれが可能になっている。盗掘が減るのであればそれはとても良いことだ。

 同じくアツモリソウもその群生地が周知されると、あっという間に盗掘に遭ってしまうので、これを守ろうという人達が花が咲くとそれををもいで回るとも聞く。赤い大型の花はとにかく目立つ。それが仇となって人に悪意を芽生えさせる。だからもぎ取ってしまえばその存在は隠せるというわけだ。

 ツクモグサ、ホテイランともその生育域はそう広くない場所に限られている。それは何故か突然現れ、突然消える。周りの環境が群生地とその周辺でそんなに変わっているとも思えないのだが、日当たりとか、風向きとか、地質であるとか、僕らには解らないそれぞれの微妙な都合があって、彼らの生育地は極々限定的になっているのだ。

 このツクモグサの群生も一つ小さな尾根に登り上げたところからいきなり始まる。それまでは一本も見かける事が無いのに。鳥や風が種を運べば、何処へでもいける・・・・・・そう言うわけにはいかない植物があるのだ。キタダケソウも北岳に咲く固有種だが、その生育地はほんのわずかな場所に限られている。そう言う者達を掘り取る事は当然の事ではあるがしてはいけないことである。

昨年のツクモグサ(ツバメの子)霧に濡れて美しかった。

 生命や種というものはそれぞれが平等にこの地球に存在しているはずだ。絶滅危惧種達が何故そう言う状況なのかと言えば、若しかしたらそれは自然の摂理なのかも知れないし、僕ら人間が彼らを追い込んでいるのかもしれない。強い者が弱い者を搾取し喰らう事もそれは自然であるとすれば、我が世の春を謳歌する人類も、いずれはその責任を取らざるを得ない日がやってくるだろう。こんなことを言っている僕も、紛れもなく勝手な都合ばかりを言う人類の一員だが、少なくとも何時仇を取られても仕方が無いと覚悟を決めておこうと思う・・・・・・・少し大袈裟ではあるが。

 人類にはそれらを乗り越えていく英知があると思いたいのだが、それはいったいどうなんだろう?いろんな問題が多すぎる。

タチツボスミレ

オヤマノエンドウ

 


梅雨の晴れ間

2014年06月15日 | 安曇野の暮らし

 不安定な空模様の白沢天狗岳を歩いて下山する頃には、安曇野の空は梅雨らしからぬ乾いた空気に覆われた。それはまるで過ぎ去った五月の空のようで、グングン勢いを増す緑は淀みない光の下でことの他鮮やかに見えた。家に帰る途中お気に入りの場所に行って見る。五月に青い空を映していた田圃は稲の分株が進み、水面はその条の合間からわずか見えるだけとなって、季節は鏡の季節から緑の季節へと移行していく。

 畦の草を刈る人々。収穫への期待を込めて、農家の人達の気持ちが一番充実している季節。整然と植えられた稲、几帳面に刈り込まれた畦。日本の国土の美しさは、なんと言ってもこの田の持つ美しさに尽きるのだと思う。そしてそれを支えているのは紛れもなく、それをこまめに手入れする農家の人々の努力だ。無意識の造園家たちが至る所で、それぞれの庭を手入れする。

「先祖の土地を荒らしちゃいけねえ」

「草ボウボウじゃみっともねえ」

そんな恥の文化が日本の国土を作り上げているだと思う。

山間地では耕作放棄地が目立つようになった。その理由は小さく、日当たりが悪く、機械化も出来ぬ田圃では効率の悪い採算が合わなと言うことだろう。谷間にぽっかり作られた田圃は先人達の英知の結晶だ。先祖の努力を思えば、それを放棄すると言うことは並大抵の決断では無いはずだ。だが、今、それらは捨て去られようとしている。

麦秋はもう間近だ。

 


BSTBS日本の名峰絶景探訪 「岩と氷の巡礼路 立山三山」

2014年06月04日 | テレビ出演

 

先日同行させて頂いたBSTBS日本の名峰絶景探訪シリーズ

「岩と氷の巡礼路 立山三山」

の模様が今週土曜日放送されます。

BSTBS日本の名峰絶景探訪 「岩と氷の巡礼路 立山三山」

6月7日(土)21:00から21:54

 

今回の演者さんはおなじみの海洋冒険家 白石康次郎さん

ロケ日は天候に恵まれ、今なお残雪豊富な雄大なる立山がご堪能頂けるかと思います。

是非ご覧ください。

当日見られない方は、「録画」でね。

 

関連

BSTBS立山ロケハンブログはこちら

真剣に撮影中のカメラマンの周辺でおちゃらけるスタッフ・・・・・・こういうノリが大切。

雪が柔らかく全員はまりまくりのロケ

大笑い

 

ハーネス着けて、さあ行くぜ!

 

白石さんとサブガイド小久保・・・・・この二人、まるで兄弟の様である。

テムレス軍団結束す。なんと全員が装着・・・・・・・・・もはやTV業界標準!?