「僕は子供の頃、コロラドの山に住んで居たんです。ずっと離れていたけれど、やっぱり僕の心は山にあるってき気づきました。」
ジョナサンは言った。遠ざかっていた山に久しぶりに登るにあたって、最初は不安でいっぱいだったのだそうだ。だが登るにつれ彼の心は故郷を思い出すかのように高揚して、その足はグングン快調になった。
深い霧、決して良くないコンディションの中、常念岳登頂まで一気に登り上げた。
なにも見えない常念岳山頂、翌日への期待感は限りなくゼロ。それでもスタッフ達は最善の映像を撮ろうと努力し、その中にドラマを見いだそうと苦悩していた。
さて、翌午前2時45分。目が醒めるとまず覗いた寝室の窓から見えたものは煌めく星空だった。
「ディレクター!!満天の星だよ!!」
「マジすか!?」
スタッフの誰もがこの奇跡のような朝に、静かに興奮したに違いない。
他のお客さんの迷惑にならぬよう、無言で準備をしヘッドランプで横通岳へ向かう。奇跡のような星空が次第に白んで来る・・・・・・・僕らの気も足も逸った。
常念岳と乗越を隔てて反対側の横通岳山頂に登り上げると、そこには見事な雲海が足下を埋め尽くしていた。
「この雲の海はアメリカまで続いている様な気がします」と、ジョナサンは言った。
日本に住んで20年が過ぎた彼が語る言葉には、日本人ではない独特の感性がにじみ出る。
しかし彼は深く日本を理解し愛しているように思えた。
日本語はとても上手い・・・・・・だがそこには、完璧でないもののチャーミングさがある。
なんというのだろう、彼が日本の自然を語るその言葉は、僕にとってもとても新鮮で、僕は日本の山を再認識するのだった。
「これは後半戦アディショナルタイム同点ゴールってもんだね」
「いや、奇跡の逆転ゴールでしょ?」川原ディレクターは言った。
梅雨時でも時々こういう事が起こる。里はドンヨリとした曇り空。お山は快晴。
その激変ぶりも、どうぞご覧ください。
BSTBS日本の名峰 絶景探訪シリーズ #49 「安曇野の里を抱く山 常念岳」
BSTBS 7月12日(土)午後9時~
ジョナサン氏も赤沼さんも、カメラが回っているのを忘れるくらいにとても自然体で、お二人から紡ぎだされる言葉がどれも味わい深く、心の奥のまさに言霊として受け手に響き、素晴らしい景色とともに印象に残りました。
特に、朝の神々しいまでの雲海は、ただ見つめているだけで、何かすべての答えがあるように思えました。
これほどの景色を見る機会に幾度のなく恵まれるガイドさんのお仕事は本当に素晴らしく、私たちを感動の山旅に無事に導き、いざなってくださるご褒美として、まさに神からのギフトなのでしょうね。
「暑い、寒い、手が冷たい、苦しい・・山で感じるさまざまな感覚それはまぎれもなく生きている自分を感じるということ」
「自分の身体を感じることが山の良さ」
十数年前・・自分の身体の感覚を忘れなければ努められない大事な役目を終えた時、生きている実感がなく、心も体も彷徨っていた時に山に出会いました。
今回の映像を見て、私はずっと自分の身体の感覚を、山を登りながら戻して来たのを実感しました。涙がでました。
毎回美しい写真と心に残る素敵な文章を楽しみにしております。ありがとうございます。
嬉しいです。
あれ?僕、そんな事言ってました?
カメラマン達は結構ずっとカメラを回しっぱなしにしています。台本はありませんので、普通に会話している様をいつの間にか撮られています。そんないくつかのカットを繋いで番組が作られているんだと思います。だから自然に見えたのかな?
ジョナサンはとても話しやすい人でしたよ。