![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/f0/c26d945e7bf3ce1f9c258c732d048d9c.jpg)
雪洞とは多雪地域の山の斜面にスコップで穴を掘って、ねぐらとする技術である。雪が少なければ完全な物は出来ないが、大渚山付近は日本海に近く、先ずどこを掘っても問題なく快適な雪洞が出来るのだ。ただ、完全な物が出来ない地域や状況でも、緊急時ビバークの手段としては大変有効だ。人ひとりが隠れる穴を掘って、ツエルトにくるまっていれば、生存率は格段に高まるであろう。一人であれば、わりと短時間に掘ることが出来ると思う。今回は、お客様と私の3人用超快適雪洞を目標にしよう。
9時40分に白馬駅に集合して小谷村大草蓮集落を出発する頃には、春到来を感じさせる暖かさとなった。ここ大草蓮集落は、大渚山中腹にある小村落だが何人かの住民が今でも住んでいる。積雪は2メートルを超えているだろう。スノーシューを装着し出発する。
ここまでが寒い冬だったので、こういう急激な温度上昇は、雪を重くベタつかせるし、雪崩も起きやすい。案の定ベタ雪に足を引っ張られる。絡め取られる様な感じだ。毎度のことだが、息が上がる。
使用スノーシューはどちらも MSR社製 お勧めです。
林道から離れ、大渚山へ取り付く。それほど大木はないが清々しいブナの単一林だ。すっきりしたブナ林は、山スキーヤーにも人気だ。厳冬期でも訪れる人が多い。適当に良さそうなところを歩いていく。冬山のこの自由自在感覚は夏では味わえない魅力の一つだ。要するに登れると思ったところはどこでも自分の道になるって訳だ。
2時半ほど登ったところで、いよいよねぐら作りに取りかかる。なるべく急な斜面を選んで穴を掘り始める。天井部分の厚みを出すためにはその方が楽だ。薄いと崩壊の危険性もあるのでなるべく天井は厚めにとりたい。
雪は適度に締まっていて、ブロックが作りやすかったから今回の作業は楽だ。昨年は凍った部分が多く苦労したなあ。私が掘り出したブロックを入り口付近に放り出し、それをお客さんに遠くへ放り投げて頂く。
1時間半ほどで充分広いねぐらが完成した。たたみ三畳分はあるかな。何日か住みたいぐらいの出来。自画自賛。壁には小さな棚を作り、ロウソクを灯すと、そこは何ともあったかな空間となる。そんなもんで実際に室温が上がる訳ではないのだが、心の中はぽっかぽかだ。ロウソクが切り取った壁を写しだし、微妙な陰影を作る。胎内の記憶なのか、はたまた、太古の記憶なのか、洞穴は人を落ち着かせてくれる。お客さんからも笑顔がこぼれている。
写真をとるとあまりにも綺麗なので、調子に乗って何枚も撮影。3枚目は結構リアルな感じ。
夕食は信州名物むさし屋のジンギスカン、日清ソース焼きそば、定番チーズ焼きカレー。いっぱい飲みながらのんびりと過ごす。雪の中で寝るなんて寒いんじゃないの?と思われるかも知れないが、雪洞の中は、零度以下にはならない。水筒の水だって凍らない。ただテントでコンロを焚くとすぐに暖かくなるのだが、雪洞ではいくら焚いても室温は上がらない。でもダウンジャケットを着込んでシュラフでも体に巻き付けておけば快適なものだ。外は吹雪であろうとどこ吹く風なのだ。登っていく満月を入り口の向こうに眺め、静かな静かなねぐらで愛すべきもの達を胸に想い就寝。
午前4時半起床。天候は快晴のようだ。明るくなるのを待って頂上へ向け歩き始める。雪面には登っていく太陽が長いブナの影を落としている。雪は締まって歩きやすい。快適な登高。
頂上直下では霧氷が美しい。まるで宝石を枝先にまとったようだ。どこまでも青い空、深い深い群青色。宇宙が透けて見えるようだ。
頂上へ登りあげると一気に視界は広がった。一同歓声を上げる。頂上は若干の風はあるものの雲一つない。雨飾山、天狗原山、金山、妙高山、そして北アルプス。文句のつけようがない美しさ。広い頂上をあちこち歩いて写真をパチパチ。
雨飾山
高妻、戸隠、堂津
天狗原、金山
存分に頂上かを楽しんだあとは、一気にスノーシューで下る。雪は適度に柔らかくなったので、かかとを踏み抜く感じでガンガン下る。どこでも自由自在、気持ちよさそうなところを選んで無垢な雪面に躊躇なく無粋な足跡を残す。何も考えない。足を放り出すだけで自動的に体は降りてゆく。
あという間に駐車場に到着。白馬の倉下の湯にて入浴、飯森は山人(やまと)にて蕎麦をたぐる。味良く盛りよくお勧めです。
ああ、しあわせ。
ローソクの灯りのなかで・・・別世界へひきこまれていきそうです。
青い空に霧氷、そして「宇宙が透けて見えるようだ」の表現・・・白銀の世界にますます魅了されます。
これからもブログ楽しませてもらいます。
凄くうれしいです。
すてきなコメントです。
なんか涙でそうです。
また見てくださいね