樹海

　店に来るたびに「樹海に行って死にたい」と言う60過ぎで独身のお客さんが来た。

　お客「俺、青木ヶ原の樹海へ行って死ぬねん」
　私　「それ、来る度に一日じゅかい(10回)は言うてるなあ。もう500回以上聞いてるで」
　お客「嘘とちゃうで。65歳になったら樹海で死ぬねん」
　私　「死ぬ死ぬ言うてる割には菜食主義やしジョギングして健康に気ぃ使(ツコ)うてるやん」
　お客「それは、病気で寝込んだら樹海に行かれへんやん。それまで健康維持せんと」
　私　「屁理屈を言うてもう…。それで一体、なんでそんなに死にたいねん？」
　お客「生きててもしゃーないからや」
　私　「何で生きててもしゃーないねん？」
　お客「エッチ無かったら、死んだ方がエエ」
　私　「ほんだら、エッチしてないんか？」
　お客「自分でしてる。しやけど本番はしてないねん」
　私　「なんや、寂しいなあ」
　お客「男は女とセックスする為に生きてるんや」
　私　「そんなん、いつから思う様になったん？」
　お客「生まれた時からや」
　私　「マセた赤ちゃんやったんやなあ。まあ、樹海に行って昔を述懐しーや」

　一句：終(ツイ)の場所　富士山ろくに　樹海あり　
　謎かけ：樹海とかけて、正々堂々と戦わないと解く。どちらも(秘境・卑怯)である