世界を変える二次元物質「グラフェン」の新たな使い方が判明! 極薄なのに瞬時にダイヤモンドより硬くなり、弾丸をも防ぐ!
二次元物質と呼ばれる新素材・グラフェンをご存知だろうか? 超軽量で非常に丈夫なシート状物質で、工学はもちろん物理学や医学など様々な分野でブレークスルーにつながるだろうと予想されている夢の物質である。以前トカナでも無尽蔵のエネルギー源となりうる可能性があると紹介しているのだが、今回また新たな特性が見つかったと話題になっている。グラフェンを二層重ねたジアメンは圧力によりダイヤモンドより硬くなり、弾丸さえ防ぐというのだ。サイエンスメディア「Science Alert」(今月22日付)など、多数のメディアが報じている。
■グラフェンとは?
グラフェンは一面に並んだ炭素原子がつながって蜂の巣のような六角形の格子構造を取っているシート状の物質だ。その厚みは原子一個分、人間の髪の毛の太さの百万分の一と非常に薄くて、もちろん軽い。しかし物理的にも非常に硬いとされ、世界で最も引っ張りに強いといわれる上に、熱や電気の伝導度も極めて高いというまさに夢の物質である。研究できるようになったのが2000年代になってからなのだが、この数年で太陽電池やタッチパネルへの応用など、すでに様々な分野で実用化が検討されている。
グラフェンを二層重ねると……
さて、そんなグラフェンにこのたび新たな性質が見つかった。米・ニューヨーク市立大学の先端科学研究所の研究チームが今月18日付の専門誌「Nature Nanotechnology」に発表した論文によると、グラフェンを二層重ねた「ジアメン(diamene)」は通常は柔らかいフィルム状なのだが、強い圧力を受けると瞬時にダイヤモンドより硬くなるという。その硬度は弾丸を打ち込まれても止めてしまうほどの強さだという。
なぜペラペラのフィルムが弾丸を止めるほど強くなるのか? 研究によれば、ジアメンの二層のシートに強い圧力がかかり、へこんだ状態になると、その場所では炭素原子がダイヤモンドのような構造になるという。ダイヤモンドもグラフェンと同じく炭素原子から構成されているが、平面的なグラフェンに対し、ダイヤモンドは三次元的に結合している。ジアメンは特定の条件化でダイヤモンドの特性を引き出せるということだ。不思議なことに、ダイヤモンドより硬くなったのはグラフェンを二層重ねた場合だけで、層を増やしても強度が上がることはなかったという。
残念ながら現在のところ、グラフェン製の防弾ベストは実用化されていない。しかし、炭素原子の結合の仕方によって物質の強度、柔軟性、熱・電気伝導度などといった特性は変わる。グラフェンを思い通りの特性に操作できれば、宇宙開発や医療など様々な場所で活用されるだろう。我々の未来はグラフェン研究の進歩が握っているのやもしれない。
スーパーマン