西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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『摩擦する「母」と「女」の物語―フランス近代小説にみる「女」と「男らしさ」のセクシュアリティ』

2014年02月20日 | サンド研究


『摩擦する「母」と「女」の物語―フランス近代小説にみる「女」と「男らしさ」のセクシュアリティ』

「女」「母」「ホモソーシャル」をテーマとする画期的な研究書が出版されました。
高岡先生のこれまでのご研究の集大成ともいえる貴重な書で、サンドの作品分析についても多くのページが割かれています。大学の講義でも使用できる優れた研究書です。
そこでは、女、母、男、それぞれの類型に沿い、新たなジェンダーの視点から、19世紀のフランス文学作品が縦横無尽なほどにあらゆる角度から問題が提示され解明されています。バルザック、スタンダール、フロベールといった男性作家の小説とサンド作品にあらわれる男性性の問題や母と息子の主題に対し、著者はこれまでのステレオタイプの見方を遙かに凌駕する斬新な切り口でアプローチし、それぞれの創作に登場する主人公たちをめぐる男らしさを論理的に説明してゆきます。
常に客体であることを求められ身体の自立性を剥奪された女が子供を産むことや性関係を拒否する根底には、女性のセクシュアリティをめぐる主体性や尊厳の問題が原因として潜んでいることが、サンドの初期作品を通し鋭く指摘されている点も注目に値するでしょう。
『アンディアナ』『ヴァランティーヌ』『アンドレ』『ポーリーヌ』『アントワーヌ氏の罪』『シモン』『ジャック』『捨て子フランソワ』『モープラ』『マドモワゼル・メルケム』と目眩くほど数々のサンドの創作が取り上げられていることにも瞠目します。
サンド研究、19世紀文学、ジェンダー研究に関心のある方にとって必携の書です。是非、お読みになってみて下さいますようお薦めいたします。



内容
「子ども」たちはごまんと登場する。だが、その「子ども」たちは、彼らが書かれるために存在するのではなく、「女」が「母」になる瞬間として描かれるのだと。本書が注目するのは、それゆえ、「母」になる「女」がその過程で経なければならない「身体」の経験、そして「セクシュアリティ」の問題である。

単行本: 265ページ
出版社: 晃洋書房 (2014/01)
ISBN-10: 477102488X
ISBN-13: 978-4771024885
発売日: 2014/01
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