言語をほどき紡ぎなおす者たち───海外文学界の第一線で活躍する翻訳家9名の仕事場を訪ねて
vol.3 <和田忠彦/鴻巣友季子/沼野充義>
文芸翻訳家たちに訊いた“翻訳”という営為の魅力
連載:映画『ドストエフスキーと愛に生きる』連動企画
第一回の柴田元幸さん(アメリカ文学研究者・翻訳者)、きむふなさん(日本・韓国文学翻訳家)、野崎歓さん(フランス文学者・翻訳家)、第二回の野谷文昭さん(東京大学名誉教授・ラテンアメリカ文学翻訳家)、松永美穂さん(早稲田大学教授・ドイツ文学翻訳家)、飯塚容さん(中央大学教授・中国文学翻訳家)に続き、今回は和田忠彦さん(東京外国語大学教授・イタリア文学翻訳家)、鴻巣友季子さん(翻訳家・エッセイスト)、沼野充義さん(東京大学教授・スラヴ文学者)が登場する。
「翻訳」という営為の魅力はなにか
・ある人が自ら何かを書くとなったときに、気がついたら私が訳した小説や詩の影響をこうむっていた、ということを発見する、あるいはそれがテクストを通してこちらに伝わってくることが、翻訳をする際の、ある種の自分のやりがいです。
・よく「役者と訳者」と言われるように、何通りもの他者の言葉を生きていけることです。原文という浮き輪が無ければ潜れない深海にまで行けるし、時には空を飛ぶこともできる、そんな心持ちを経験できるのが、翻訳者の醍醐味だと思います。
・最先端の科学のような難しい学問と比べて、小説を読むくらいどうってことない、と人は思いがちですが、文学の言葉の表現というのは、人間のつくり出した中で最高度に複雑なものです。その上、言語を越えて別の緻密な世界に入っていく翻訳という行為は、ワクワクするような冒険なのです。外国文学の秘宝を発掘するためには、やはり自分で翻訳をやらなければならない。自分が納得して理解できたと感じられるには、翻訳するしかないのです。つまり翻訳家は、自分が作品を一番楽しみたいと思っている、とてもわがままな人間なのです。
http://www.webdice.jp/dice/detail/4113/