文化翻訳
文化翻訳入門-日本と世界の文化コミュニケーション-
講座内容
黒澤明の『羅生門』や村上春樹の『海辺のカフカ』は日本文化であると同時に世界文化資産でもあります。「真相は藪の中」という認識やオイディプス王の普遍的な物語を伝え、また、私たちの世界がカフカエスク、ハイパーリアルであって、時には空から魚が降り、猫が人の言葉を話すこともあると教えてくれるからです。文化翻訳は、このようなイメージやアイディア、価値や伝統、神話や物語を翻訳・翻案し、変容させて世界中に広め、伝える営みです。
本講座では、日本文化を焦点に、文学、映像、漫画、パフォーマンスの領域ごとに文化翻訳の諸相を紹介します。芥川龍之介の「羅生門」とモダニティ、日中詩文学の相互翻訳、半沢直樹と香港民主化運動、文化翻訳プラットホーム『コミックビーム』、谷口ジローの日仏遍歴、ミュージカル『太平洋序曲』日米似姿競演などを取り上げ、翻訳家・演出家・編集者・制作者の仕事、また、読者・観客・視聴者の応答も含めたインタラクティブな「翻訳」プロセスを説明します。翻訳・翻案・変容が文化の本質であり、日々の生活において私たち一人一人が文化翻訳者であることを改めて理解いただけるでしょう。
第1週:文学の翻訳、文化の翻訳
文学の翻訳、文化の翻訳
翻訳による日本近代文学の成立 ―森鴎外と芥川龍之介を中心に―
英日翻訳における主語の問題 ―川端康成、谷崎潤一郎らを中心に―
日中詩歌における文化翻訳 ―「漢」と「和」の世界―
日中詩歌における文化翻訳 ―和歌・俳句の「漢訳」―
日中詩歌における文化翻訳 ―「漢俳」誕生の背景と特徴―
第2週:映画とTVドラマにみる文化翻訳
リュミエール兄弟と明治日本の映像
日本のイメージと映画 ―国際映画祭の役割を中心に―
黒澤明に始まる戦後日本の映画への「翻訳」
TVドラマの文化翻訳 ―『スーパーマン』や『おしん』の海外受容史―
TVドラマの文化翻訳 ―『半沢直樹』の中国での受容―
日本TVドラマコンテンツの海外展開 ―ドラマ制作者に聞く―
第3週:マンガの文化翻訳
小説からマンガへ ―メディアの翻訳(1)コミックビーム編集長岩井好典さんに聞く―
日本における海外のマンガの翻訳 ―メディアの翻訳(2)コミックビーム編集長岩井好典さんに聞く―
海外の日本マンガ― メディアの翻訳 (3)コミックビーム編集長岩井好典さんに聞く―
フランスのバンドデシネと日本のマンガ ―谷口ジロー『遥かな町へ』を中心に―
日本のマンガからフランス映画へ ―『遥かな町へ』とQuartier Lointain―
マンガ文化の比較考察 ―アングレーム国際漫画祭を例に―
第4週:グローバル・パフォーマンスと文化翻訳
『太平洋序曲』における翻訳、翻案、表象 ―表象と不確定性―
『太平洋序曲』における翻訳、翻案、表象 ―変わらぬ日本―
『太平洋序曲』における翻訳、翻案、表象 ―変わり続ける日本―
『海辺のカフカ』における文化翻訳 ―翻訳、翻案、シミュラークル―
英語劇 Kafka on the Shore から日本語劇『海辺のカフカ』へ
蜷川幸雄の舞台『海辺のカフカ』 ―シミュラークルとしての文化翻訳―
他の先生方との連続講座のようですが、原稿無しでよどみなくお話しされる椎名先生のご講演を拝聴できます:
https://lms.gacco.org/courses/course-v1:gacco+ga074+2017_01/about