“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

こどもの “かんしゃく” と “ぐずり” への対処法

2022年05月24日 08時45分02秒 | 育児
さて、子育ての悩みの定番“かんしゃく”です。
子育てが一段落したアラ還の私でも、
いまだに“正解”がわかりません。

このテーマもNHKの「すくすく子育て」の特集回から、
専門家のコメントを拾ってみました。

ご意見番・コメンテーター;
・遠藤利彦氏(東京大学大学院 教授/発達心理学)
・井澗知美氏(大正大学 准教授/臨床心理学)

まずは、「園ではいい子だけど、家ではわがまま放題で困っている」
という相談に対する回答です。

・お子さんは、幼稚園という“社会”に適応しようと頑張っていると思います。
家に帰ってお母さんの顔を見ると、安心して、自分のフラストレーションのようなものを発散して、心のバランスをとっているのではないでしょうか。
家の外では「いい子」を演じているところもある。
でも家には、ダメな自分もイヤな自分も、すべてをひっくるめて「好きだよ」と言ってくれる親がいる。
とても健康的な状況だと思います。(遠藤利彦氏)

これはありがちなパターンですね。
この逆のパターン、つまり「家ではいい子、園では乱暴者」は危ないとされてます。
家で緊張して素を出せないのは、リラックスできる雰囲気がないと云うこと。

・自我が発達してきた子どもの場合は、自分で選ばせるのもよいですね。
例えば、「トイレに行ってほしい」と伝えたいとき、「行って!」「でない!」の言い合いになるようであれば、「ママとお歌を歌ったあとに行く? それとも時計の針が3になったら行く?」のように、選択肢を与えてみる。
「自分」が出てきている子どもは、「自分で決めた」と思えるほうがよいと思います。(井澗知美氏)

この辺の対応は、前項目“イヤイヤ期”と共通するものがあります。
命令ではなく、選択肢を含んだ提案なら、自我が否定されずに済みます。

次は「気に入らない」「思い通りにならない」と泣き叫んで手がつけられない、という相談に対する回答です。

・かんしゃくを起こしている子どもは、混乱していて、うまく頭を働かすことができません。
そのため、わかりやすく伝えることが大切です。
例えば、「ジュースがほしい!」とかんしゃくを起こしているとき、「お風呂から出てからにしようか」だけだと、うまく伝わらず「飲めないんだ」と思ってしまうかもしれません。
「お風呂から出たら、ジュースを飲もうね。おいしいよ」など、丁寧に伝えてみてください。
子どもが「ジュースを飲むためには、お風呂に入ればいい」とわかるように伝える工夫が大切です。(井澗知美氏)

・騒いでいるときは少し待ってあげることが大切です。
泣きやんで、少し落ち着いたところで、「ジュースを飲もうか」「ちょっとママとどこかに行こうか」のように声をかけるのがよいでしょう。
子どもは、親から声をかけられる、つまり、親から温かい注目をしてもらえる体験をすることで、心が安定していきます。(井澗知美氏)

“かんしゃく”を起こしている子どもは“混乱していて自分でもどうしてよいかわからない”と解説していますが、
お風呂に関係なくジュースが欲しいと訴える場合も有りますから、この対応は応用範囲が狭いと思われます。
「少し待ってあげる」「泣き止んで少し落ち着いたところで」とありますが、
数十分泣きわめいている状況を放置して周りからの冷たい視線に耐えるのは無理です。
残念ながら井澗氏のコメントでは「泣き叫んでいる子どもへの対応は困難、泣き止むまで待つ」という結論になってしまいます。

・古代ギリシャ哲学者のアリストテレスも言うように、怒りというものは、怒る対象、怒るタイミング、怒る方法を間違えると、その効果がなくなってしまいます。
例えば、言葉でわかってもらえる相手なのに、人やものにあたってしまう。
いってみれば、かんしゃくは対象・タイミング・方法を間違えた怒りではないでしょうか。
子ども自身も、いつのまにか、かんしゃくのような怒りは「自分のためにならない」と気づいて、発達とともに減っていくのではないかと思います。(遠藤利彦氏)

遠藤氏も解決法は示せず、子どもの成長を待つという結論にとどまります。

・子どもの怒りを抑えつけるのではなく、怒り方を学ぶ機会だと考えてみましょう。
このとき、子どもが自分の感情を理解することが大切になります。
子どもが感じている気持ちにふさわしい言葉を、タイミングよく貼ってあげる、「感情のラベリング」をしてあげるのです。(遠藤利彦氏)

・例えば、ゲームに怒ったときに、「うまくいかなくて、悔しかったね」「負けちゃって、がっかりだよね」といった声をかけます。
感情のラベリングは、子どもが自分の感情を理解するために、周りの大人が心掛けたい働きかけです。
ラベリングをしてあげることで、子どもは徐々に「今の自分の感情」がどのようなものかを理解していきます。
理解できるようになると、自分の感情とうまくつきあえるようになっていくと思います。(遠藤利彦氏)

できることは、混乱している子どものこころを言語化して整理するサポート(感情のラベリング)、でしょうか。

次は“かんしゃく”ではなく“グズリ”の相談に対する回答です。

・「この子はちょっと時間のかかる子だな」と思って声をかけると、声のトーンから切迫感がなくなり、やわらかくなると思います。
・・・子どもができていることを、もう少しほめてあげてくださいね。(井澗知美氏)

できないことを責めると子どもは追い詰められてしまう、できることをほめると子どもは自信を持ち、グズリは減るかもしれない・・・。

最後にお二人からのコメント;

・基本的に、プラスの感情もマイナスの感情も、自然に経験して、自然に表現されることが、子どもにとって健康な状態だと考えてください。
そういった感情について、子どもが落ち着いているときに話をしましょう。(遠藤利彦氏)

・グズりやかんしゃくは、とても大変な行動です。
でも、大変な面ばかりを注目するのではなく、いろいろできるようになってきた子どもでも、まだまだ甘えたい部分もあると考えてください。
1日に10~15分でも、短い時間でいいので、子どもがグズってないときに、一緒に遊ぶような時間を持ちましょう。
そんな時間があれば、子どもの気持ちが落ち着いていくと思います。
いろいろと工夫しても、うまいかない場合もあります。
そんなときは、地域の保健センターや子ども家庭支援センターなど、
発達の専門の所に相談する方法もあります。(井澗知美氏)

いずれにしても、前項目の“イヤイヤ期”、今回の“かんしゃく”や“ぐずり”は子ども本人が困っていることが共通点として存在すると感じました。
その“困った感”を大人は“どすこい!”と受け止めて、サポートしたり、待って成長を見守ったり・・・なんだか思春期の反抗期への対応と似てますね。

最後になりましたが、私は“かんしゃく”と“ぐずり”に困っている方には漢方薬の使用を提案しています。
よく処方する抑肝散は500年前、小建中湯は2000年前から使われてきた方剤です。
昔からこのような子どもは当たり前に存在し、それに対応するため知恵を絞った成果として伝わってきたお薬ですので、利用しない手はありません。


<参考>

▢ どうする? 子どものグズるキレる(すくすく子育て)

▢ 印象に残る症例②
なかしまこどもクリニック 院長 中島 俊彦

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