私は中学高校時代、SF小説を読みふける、ちょっと変わった少年でした。
海外の作品がメインで、日本人SF作家による作品は少なかったのですが、
光瀬龍、眉村卓、小松左京はお気に入りでした。
小松左京は短編をよく読みました。
そのストーリーの壮大さに度肝を抜かれることしばしば。
今での印象に残っているワンシーンがあります。
子どもの探検ごっこで、ちょっとした洞穴のようなところに迷い込み、
その先にあった光景は・・・「赤茶けた土埃が舞う廃墟」だった。
背中がゾクゾクしたことを覚えています。
小松左京の代表作である「復活の日」「日本沈没」も本棚にはあったのですが、
映画化されて話題作になったため、天邪鬼の私は敬遠して読まなかったような気がします。
さて、NHK-BSの「アナザーストーリー」で小松左京が取りあげられました;
■ “復活の日”の衝撃〜コロナ“予言の書”(初回放送:2020.9.1、2021.8.19再放送)
新型コロナウイルスの猛威を半世紀以上前に予言した小説があった!
小松左京のSF小説「復活の日」。人を死に至らしめる未知のウイルスが世界中にまん延し、人類が滅亡の危機に立たされる!
小松は「日本沈没」でも大震災後の日本の危機を予見。なぜここまでリアルに未来を予想できたのか?そして、現実がその小説世界を後追いしたとき、彼はどうしたのか?原点となる戦争体験、絶望の果てに見た未来への希望を解き明かす。
彼の知人たちの“小松左京論”が次々と紹介されます。
SF作家仲間の豊田有恒、筒井康隆、
ウイルス学者の畑中正一、
文化人類学者の加藤秀俊・・・
知人たちの分野が多岐にわたり、私は“京都学派”という言葉を思い出しました。
狭義には西田哲学の流れを指しますが、より広く派生した京都学派の私のイメージは、
「専門分野の垣根を越えた学問を創り出す学風」。
専門分野をひたすら追求する東京大学と違って。
例えば、梅原猛、例えば、梅沢忠夫。
小松左京も博識で、専門家も唸らせる科学的知識に裏付けされたSF小説を得意としました。
彼の自伝で、ノーベル賞学者の湯川秀樹博士のインタビュー取材をしたことがあり、
湯川博士と同じレベルで会話ができるのでたいそう盛り上がったと書いてありました。
前置きが長くなりましたが、小説「復活の日」。
これはウイルス兵器が漏れ出して世界に広がり、人類絶滅の危機を迎えるというストーリー。
ウイルスによるパンデミックの状況を細部まで描写し、
それがあまりにもリアルなので50年以上たった今、
「予言の書」と呼ばれるようになりました。
一方で「細菌兵器による戦争」という側面も持ち合わせます。
そして難局に残された1万人弱のサバイバルがはじまるという結末。
彼の世代は終戦を経験しています。
空襲の焼け野原に焼け焦げた死体の山が目に焼き付いている、と云います。
小松左京がSF小説を書くキッカケになったのは、やはり戦争体験であることを番組は紹介していました。
彼が晩年に残した、阪神淡路大震災の取材記、
それと東日本大震災の手記を読み直してみたいと思いました。