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「歌を盗られたカナリヤは(その1)」
ひと頃、ちあきなおみのファンの間で、彼女が呟いたとされる「歌を盗られた」
が、どの曲なのか憶測が飛び交ったことがあるのですよね。
いつそれを呟いたのか、それがハッキリすれば絞り込むことも可能になるのです
が、分からないが故に次のようなものが取り上げられました。
まずは、コロムビア時代の「矢切の渡し」。後に細川たかしが歌って、レコード
大賞に輝いた石本美由紀作詞、船村徹作曲のちあきにとって代表曲の一つ。
でもね、コロムビアを去った(1978年7月21日契約解除)後に誰が歌おうと競作
扱いならば、盗られたとは云わない。ましてや自分がレコード大賞を獲れたかど
うかわからないものをやっかんで口走るほど彼女は迂闊でも愚かでも無い。
それにちあきは、テイチク時代に「矢切の渡し」を再レコーディングしてもいる。
盗られたとは言い難い。
ちあきを筆頭として、84名(組)のアーティストがJASRACに登録されている。
※JASRACは、一般社団法人日本音楽著作権協会のこと。
ちあきの「矢切の渡し」は、初めは「酒場川」のB面曲だったが、後に梅沢富
美男が芝居でのBGMとして使用したことから話題となり見直されるようになっ
た。
(ちあき本人は「酒場川」の方が気に入っていた。僕もこの曲の方が優れて
いると思うけど、一般大衆に受けることとは別の話。ちあきにミリオンセラ
ーが無いのも彼女の歌が大衆向けではないからだと思う。)
次に上がったのがサントラ『象物語』に収録された「風の大地の子守唄」と「ア
フリカン・ナイト」。シングル化にあたって黛ジュンに替わったことからその
ような見方がされたのですが、映画が劇場公開されたのが1980年3月20日なので、
ちあきは無所属の状態で引き受けたことになり、後にそれらの版元であるCBS・
ソニーに移籍した黛ジュンがシングル盤でリリースするのは自然の流れ。
(JASRACにはアーティストとして黛ジュンの名しか無かったことからも、ちあき
側とは相互了承済みの映画だけでのワンポイント・リリーフであると考えるのが
妥当だ。以前にも書いたように本来はCBS・ソニー所属の山口百恵が歌うことに
なっていたのが結婚のゴタゴタからフリーのちあきにお鉢が回ってきた。)
これまた盗られたとは言い難い。
黛ジュンは、1980年に東芝音楽工業からCBS・ソニーに移籍した直後の2月25日
に上記2曲のシングル盤をリリースしている。レコーディング時期は不明だが、
短期間での発売に至るためには、ちあきの歌を参考にできる状況にあったと
考えることができる。
次に取り上げられたのは、テイチク時代にレコーディングされた「母のいない故
郷(ふるさと)」。
これはこの後に解き明かして行く曲でもあるので、ここでは簡単に触れると、
当初JASRACでのアーティスト登録に他の歌手の名はあってもちあきの名が無かっ
たことから生じた疑惑でした。
現在は、5人中の4番目にちあきも登録されています。ちあきの曲がしばらくお蔵
入りしていて、それが解禁されて世に出た時期が遅かっただけなのですが、その
時期がちあきが長期の活動休止に入った後なので、いかにも怪しげですが、後に
述べる理由から、この曲もちあきが口走ったものとは違うと思います。
では、ちあきが盗られた曲は何だったのだろうか。
ここからは、憶測の域を出ませんが、ヒントにはなると思えることを縷々(るる)
述べて行きます。
その手掛かりとなったのが、冒頭に掲げた見出し用の画像で、ちあきが最初に手
掛けたソロ・ミュージカル『LADY DAY』の宣伝用ポスターでした。
正確に云うと、初演(1989年11月)でのものでは無く、好評を得て再演(1990年
5月)したときのものです。、
『LADY DAY』は、ちあきとピアノ(倉田信雄)だけのひとりミュージカルで、
オリジナルはロネット・マッキーの『Lady Day at Emerson's Bar & Grill』。
死と向き合ったビリー・ホリディをロネットがニューヨークの小さなホールで
演じて絶賛された。ロネットが歌ったジャズの名曲の数々を吉田旺が和訳し、
ちあきが歌い演じ、いまや伝説と化した舞台です。
※「LADY DAY」は、ビリー・ホリディの呼称。
初演のときの協賛は「金鳥」だけでしたが、再演のときには「テイチク」も名を
連ねているのは、好評を得たことから商売になると踏んだからだけなのか?
シアターVアカサカというキャパが250人ほどの小さな劇場での公演であり、
当初は評判にもならなかった代物。当該劇場は小さいながらも、俳優で演出
も手掛けたことのある瑳川哲朗が1989年2月に設立・運営したものであり、
収録機材は揃っていた。
でもそれだけではないと思うのは、歌を盗られたことと関係がありそうだから。
映像が未だに日の目を見ないのもそれゆえと思えるから。
画像下側の白い帯の左側にある赤い楕円の中、少し小さいので読み難いのですが、
“『紅とんぼ』から1年半、ちあきなおみの新境地を開く、待望のオリジナル・
アルバム6月21日発売予定”と書いてあります。
ところが、この再演直後に発売予定とされていたオリジナル・アルバムは発売さ
れなかったのです。
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