ある小学校である。
ある時の、ある小学校の社会科の授業の時である。
社会科の先生が、授業の合間に、
「中国やアメリカ、北朝鮮、など軍備を拡大していて困るな」
と、ボソッと、ため息まじりの独り言をつぶやいた。
「先生。どうして軍備を拡大しなければならないのですか?」
と、吉田健太という生徒が聞いた。
健太には、どうして、各国が軍隊を持たねばならないのか、わからなかったのである。
まあ、それは、小学生では、わかる生徒の方が少ないだろう。
健太は、野球が好きで、学科の勉強は、あまりよく出来なかった。
他の生徒も、健太と同じよう、に、そのことは、わかっていない顔つきだった。
「私もわかりません」
「僕もわかりません」
皆が言った。
「先生。学校でも、腕力の強い人はいます。そして、弱い、おとなしい生徒を、暴力を振るって、いじめることは、あります。しかし、そういう乱暴な人は、先生に注意されます。大人でも、パワハラしている人はいます。しかし、そういう人は、上司に注意されます。それでも、聞かない乱暴な人は、訴えられれば、負けます。だから、暴力を振るう人は、負けてしまいます。では、どうして、世界の国々は軍隊を持って、核兵器をたくさん、作ったり、軍備を増強したりするのですか?」
健太が先生に聞いた。
「そうだね。健太。君の言う通りだ。学校や社会では、暴力を振るう人間は負けてしまうね」
先生が言った。
「じゃあ、どうして、世界の国々は、軍隊を持ったり、核兵器を持ったり、軍事費にお金をかけたりしているのですか?」
健太が先生に聞いた。
「他国に戦争をする国には、食料や、エネルギー資源などの、貿易をやめてしまえば、それで解決すると、思います」
社会科に、少し詳しい、佐藤由美が言った。
「ああ。経済制裁だね。確かに、食料やエネルギー資源などが、なくなったら、戦争どころか、その国は、やっていけないね」
先生が言った。
「じゃあ、どうして、そうしないんですか?」
佐藤由美が聞いた。
「それは、一般人の暴力と、国家間の戦争の違いさ」
先生が言った。
「どういうことなんですか。よくわかりません」
佐藤由美が言った。
「どんな国でもいいから、一つの国を考えてごらん。日本でもいいし、アメリカでもいいし、中国でもいいし、北朝鮮でもいい。国家とは、どういうものか。どんな国でも、警察があるし、法律があるよね。それは、独裁国家である、中国や北朝鮮でも、そうだよね。もし、警察や法律がなかったら、それは、犯罪者だらけの国家になってしまうよね。だって、警察も法律もないのだから、犯罪者がどんな凶悪な犯罪を犯しても大手を振っていられることになってしまう。他人に対する、暴力行為だけではなく、人殺しをしても、銀行強盗をしても、警察も法律もなかったら、その国は、犯罪者だらけの国になってしまうね。それは、わかるかな?」
先生が言った。
「ええ。確かにそうですね」
健太が言った。
「中国や北朝鮮は、独裁国家と言われているけれど、ちゃんと、警察もあれば、法律もあるよね。確かに、独裁国家では、政府を批判する言論を、することを、犯罪としているね。それは、良くないことだけど、犯罪者を取り締まる、法律や警察は、独裁国家でも、民主主義国家でも、ちゃんとあるよね。そうでないと、国家の治安が滅茶苦茶になってしまうからね」
先生が言った。
「そうですね」
健太が言った。
「しかし、世界というものを考えてごらん。世界のどこかの国が、他国を侵略した時、それを、取り締まる、警察や法律というのは、あるかね?」
先生が聞いた。
「国連の安全保障理事会というのがあるじゃないですか?あれが、世界の法律なんじゃないですか」
健太が言った。
「ああ。確かに、国連の安全保障理事会というのは、あるよね。ところで、安全保障理事会の常任理事国はどこか、知っているかね?」
先生が聞いた。
「アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランス、ですよね」
佐藤由美が言った。
「そう。その通り」
「じゃあ、その5カ国が、多数決で法律をつくれば、いいじゃないですか?」
佐藤由美が言った。
「ところがだね。安全保障理事会では、大国一致の原則、というのがあってね。世界の法律は、5カ国の多数決で決めているんじゃないんだ。5カ国、すべての国の意見が一致しないと、法律は決められないんだ」
先生が言った。
「どうしてですか?」
「それは、ちょっと、難しいことなんだ。もっと勉強すれば、わかるようになるだろうけどね。ところで、5カ国の意見が一致して、法律が出来たとしよう。そうなれば、安全だと思うかね?」
「安全になると思います」
「そう。確かに、法律は出来るよね。しかし、その法律を破る国があったとしようね。そうしたら、どうしたらいいと思うかね?」
「5カ国は軍隊を持っていますよね。なら、5カ国の軍隊が力を合わせれば、警察の役割りになるんじゃないでしょうか?」
「そこが問題なんだ。悪い事をした国を、5カ国の軍隊が協力して、警察の役割りになるということは、まずないんだ」
「どうしてですか?」
「それぞれの国は、それぞれの国の利益を大事にしようとする。たとえ、悪い事をした国があったとしても、その国が、貿易などで、自分の国に必要な国だとすれば、その国を罰するということは、出来にくいんだ。たとえば、北朝鮮が悪いことをしたとしても、中国は北朝鮮と仲がいいから、中国は北朝鮮に軍隊を送り込む、ということはしないんだ」
先生は続けて言った。
「法律があっても、法律を守らせるためには、武力を持った、警察が必要なんだ。それは、わかるかね?」
「ええ。何となく、わかります」
「どんな立派な法律を作ったとしても、その法律を破る犯罪者が出た時には、武力を持った警察が必要なんだ。そうでなければ犯罪者を取り締まることは出来ない。犯罪者を罰することも出来ない。それは、わかるかね?」
「わかります」
「世界で一番、強い軍隊を持っている国はどこだと思うかね?」
「北朝鮮だと思います。テレビのニュースで、北朝鮮が軍事パレードをしている映像を見たことがあります。ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験も、よくニュースで見ますし」
健太が言った。
「私は中国だと思います。中国も軍事パレードをしているのをテレビで見たことがあります」
佐藤由美が言った。
「ははは。健太。確かに、北朝鮮の、ミサイル発射実験はよくニュースで、報道されるね。それは、北朝鮮がよく、ミサイル発射実験を行っているからだよ。他の国は、ミサイル発射実験を、北朝鮮のようにしないから、目立たないので、ニュースには、ならないから、報道されないだけだよ。正解を言うと、世界で一番、強い軍隊を持っているのは、アメリカ、と中国なんだ。それと、ロシア、や、インド、も強い軍隊を持っているけどね」
先生が言った。
「では、どうして北朝鮮は、何度も、ミサイル発射実験をしているのですか?」
健太が聞いた。
「それは本質的な問題だね。もし、ある国、たとえば、中国が、アメリカに、いきなり、核ミサイルを何発も打ち込んだら、どうなると思う。アメリカは怒って、仕返しに、中国に、核ミサイルを打ち込んで、アメリカと中国とで、戦争になるだろうね。それで、もし、中国が、アメリカに勝ったら、どうなると思うかね」
先生が聞いた。
「アメリカは、ヨーロッパの国々と、NATO(北大西洋条約機構)を結んでいますから、中国は、勝てないと思います」
佐藤由美が言った。
「そうだね。しかし、戦争は、やってみないと結果はわからないね。北朝鮮は、間違いなく、中国に協力して、アメリカと戦うだろうね。それに、ロシアもアメリカと仲が悪いね。しかし、これは、仮定の話だよ。中国が、アメリカ、や、中国に反抗する国に、核ミサイルを、どんどん、打ち込んで、中国が、勝ってしまって、中国が世界を支配するようになったら、どうなると思うかね?」
先生が言った。
「・・・・負けた国は、中国に経済制裁をすればいいと思います」
佐藤由美が言った。
「ははは。佐藤さん。戦争で負けた国が勝った国に経済制裁をすることなんて出来ないよ。言う事を聞かなかったら、中国の軍隊が、武力で、おどしたり、それでも聞かなかったら、さらに、核ミサイルを打ち込めば、中国の言う事を聞かなくてはならないよ。それに、中国の食料自給率は、100%だからね。経済制裁は、ほとんど意味がないんだ」
先生が言った。
「じゃあ、戦争で勝った国が世界を支配できるんですね?」
健太が言った。
「そう。残念ながら、そうなんだ。残念ながら暴力(武力)の一番、強い国が世界を支配できるんだ。だから、どこの国でも、軍隊を持っていて、出来れば、核ミサイルを持ちたいと思っているんだ。だから、どこの国でも、毎年、軍事費に、国民の税金のかなりを、投入しているんだ」
先生が言った。
ある時の、ある小学校の社会科の授業の時である。
社会科の先生が、授業の合間に、
「中国やアメリカ、北朝鮮、など軍備を拡大していて困るな」
と、ボソッと、ため息まじりの独り言をつぶやいた。
「先生。どうして軍備を拡大しなければならないのですか?」
と、吉田健太という生徒が聞いた。
健太には、どうして、各国が軍隊を持たねばならないのか、わからなかったのである。
まあ、それは、小学生では、わかる生徒の方が少ないだろう。
健太は、野球が好きで、学科の勉強は、あまりよく出来なかった。
他の生徒も、健太と同じよう、に、そのことは、わかっていない顔つきだった。
「私もわかりません」
「僕もわかりません」
皆が言った。
「先生。学校でも、腕力の強い人はいます。そして、弱い、おとなしい生徒を、暴力を振るって、いじめることは、あります。しかし、そういう乱暴な人は、先生に注意されます。大人でも、パワハラしている人はいます。しかし、そういう人は、上司に注意されます。それでも、聞かない乱暴な人は、訴えられれば、負けます。だから、暴力を振るう人は、負けてしまいます。では、どうして、世界の国々は軍隊を持って、核兵器をたくさん、作ったり、軍備を増強したりするのですか?」
健太が先生に聞いた。
「そうだね。健太。君の言う通りだ。学校や社会では、暴力を振るう人間は負けてしまうね」
先生が言った。
「じゃあ、どうして、世界の国々は、軍隊を持ったり、核兵器を持ったり、軍事費にお金をかけたりしているのですか?」
健太が先生に聞いた。
「他国に戦争をする国には、食料や、エネルギー資源などの、貿易をやめてしまえば、それで解決すると、思います」
社会科に、少し詳しい、佐藤由美が言った。
「ああ。経済制裁だね。確かに、食料やエネルギー資源などが、なくなったら、戦争どころか、その国は、やっていけないね」
先生が言った。
「じゃあ、どうして、そうしないんですか?」
佐藤由美が聞いた。
「それは、一般人の暴力と、国家間の戦争の違いさ」
先生が言った。
「どういうことなんですか。よくわかりません」
佐藤由美が言った。
「どんな国でもいいから、一つの国を考えてごらん。日本でもいいし、アメリカでもいいし、中国でもいいし、北朝鮮でもいい。国家とは、どういうものか。どんな国でも、警察があるし、法律があるよね。それは、独裁国家である、中国や北朝鮮でも、そうだよね。もし、警察や法律がなかったら、それは、犯罪者だらけの国家になってしまうよね。だって、警察も法律もないのだから、犯罪者がどんな凶悪な犯罪を犯しても大手を振っていられることになってしまう。他人に対する、暴力行為だけではなく、人殺しをしても、銀行強盗をしても、警察も法律もなかったら、その国は、犯罪者だらけの国になってしまうね。それは、わかるかな?」
先生が言った。
「ええ。確かにそうですね」
健太が言った。
「中国や北朝鮮は、独裁国家と言われているけれど、ちゃんと、警察もあれば、法律もあるよね。確かに、独裁国家では、政府を批判する言論を、することを、犯罪としているね。それは、良くないことだけど、犯罪者を取り締まる、法律や警察は、独裁国家でも、民主主義国家でも、ちゃんとあるよね。そうでないと、国家の治安が滅茶苦茶になってしまうからね」
先生が言った。
「そうですね」
健太が言った。
「しかし、世界というものを考えてごらん。世界のどこかの国が、他国を侵略した時、それを、取り締まる、警察や法律というのは、あるかね?」
先生が聞いた。
「国連の安全保障理事会というのがあるじゃないですか?あれが、世界の法律なんじゃないですか」
健太が言った。
「ああ。確かに、国連の安全保障理事会というのは、あるよね。ところで、安全保障理事会の常任理事国はどこか、知っているかね?」
先生が聞いた。
「アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランス、ですよね」
佐藤由美が言った。
「そう。その通り」
「じゃあ、その5カ国が、多数決で法律をつくれば、いいじゃないですか?」
佐藤由美が言った。
「ところがだね。安全保障理事会では、大国一致の原則、というのがあってね。世界の法律は、5カ国の多数決で決めているんじゃないんだ。5カ国、すべての国の意見が一致しないと、法律は決められないんだ」
先生が言った。
「どうしてですか?」
「それは、ちょっと、難しいことなんだ。もっと勉強すれば、わかるようになるだろうけどね。ところで、5カ国の意見が一致して、法律が出来たとしよう。そうなれば、安全だと思うかね?」
「安全になると思います」
「そう。確かに、法律は出来るよね。しかし、その法律を破る国があったとしようね。そうしたら、どうしたらいいと思うかね?」
「5カ国は軍隊を持っていますよね。なら、5カ国の軍隊が力を合わせれば、警察の役割りになるんじゃないでしょうか?」
「そこが問題なんだ。悪い事をした国を、5カ国の軍隊が協力して、警察の役割りになるということは、まずないんだ」
「どうしてですか?」
「それぞれの国は、それぞれの国の利益を大事にしようとする。たとえ、悪い事をした国があったとしても、その国が、貿易などで、自分の国に必要な国だとすれば、その国を罰するということは、出来にくいんだ。たとえば、北朝鮮が悪いことをしたとしても、中国は北朝鮮と仲がいいから、中国は北朝鮮に軍隊を送り込む、ということはしないんだ」
先生は続けて言った。
「法律があっても、法律を守らせるためには、武力を持った、警察が必要なんだ。それは、わかるかね?」
「ええ。何となく、わかります」
「どんな立派な法律を作ったとしても、その法律を破る犯罪者が出た時には、武力を持った警察が必要なんだ。そうでなければ犯罪者を取り締まることは出来ない。犯罪者を罰することも出来ない。それは、わかるかね?」
「わかります」
「世界で一番、強い軍隊を持っている国はどこだと思うかね?」
「北朝鮮だと思います。テレビのニュースで、北朝鮮が軍事パレードをしている映像を見たことがあります。ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験も、よくニュースで見ますし」
健太が言った。
「私は中国だと思います。中国も軍事パレードをしているのをテレビで見たことがあります」
佐藤由美が言った。
「ははは。健太。確かに、北朝鮮の、ミサイル発射実験はよくニュースで、報道されるね。それは、北朝鮮がよく、ミサイル発射実験を行っているからだよ。他の国は、ミサイル発射実験を、北朝鮮のようにしないから、目立たないので、ニュースには、ならないから、報道されないだけだよ。正解を言うと、世界で一番、強い軍隊を持っているのは、アメリカ、と中国なんだ。それと、ロシア、や、インド、も強い軍隊を持っているけどね」
先生が言った。
「では、どうして北朝鮮は、何度も、ミサイル発射実験をしているのですか?」
健太が聞いた。
「それは本質的な問題だね。もし、ある国、たとえば、中国が、アメリカに、いきなり、核ミサイルを何発も打ち込んだら、どうなると思う。アメリカは怒って、仕返しに、中国に、核ミサイルを打ち込んで、アメリカと中国とで、戦争になるだろうね。それで、もし、中国が、アメリカに勝ったら、どうなると思うかね」
先生が聞いた。
「アメリカは、ヨーロッパの国々と、NATO(北大西洋条約機構)を結んでいますから、中国は、勝てないと思います」
佐藤由美が言った。
「そうだね。しかし、戦争は、やってみないと結果はわからないね。北朝鮮は、間違いなく、中国に協力して、アメリカと戦うだろうね。それに、ロシアもアメリカと仲が悪いね。しかし、これは、仮定の話だよ。中国が、アメリカ、や、中国に反抗する国に、核ミサイルを、どんどん、打ち込んで、中国が、勝ってしまって、中国が世界を支配するようになったら、どうなると思うかね?」
先生が言った。
「・・・・負けた国は、中国に経済制裁をすればいいと思います」
佐藤由美が言った。
「ははは。佐藤さん。戦争で負けた国が勝った国に経済制裁をすることなんて出来ないよ。言う事を聞かなかったら、中国の軍隊が、武力で、おどしたり、それでも聞かなかったら、さらに、核ミサイルを打ち込めば、中国の言う事を聞かなくてはならないよ。それに、中国の食料自給率は、100%だからね。経済制裁は、ほとんど意味がないんだ」
先生が言った。
「じゃあ、戦争で勝った国が世界を支配できるんですね?」
健太が言った。
「そう。残念ながら、そうなんだ。残念ながら暴力(武力)の一番、強い国が世界を支配できるんだ。だから、どこの国でも、軍隊を持っていて、出来れば、核ミサイルを持ちたいと思っているんだ。だから、どこの国でも、毎年、軍事費に、国民の税金のかなりを、投入しているんだ」
先生が言った。