さみしん坊
冬の街の空を見上げ物思いに耽って歩いてる。
彼は心の弱い人間だ。
いつも、過去と未来のことをくよくよ考えている。
そして後悔と不安の中で生きている。
彼の心はいつも悲しいことのほうにばかり向いてしまう。
人の心をキズつけることが出来なくて、いつも自分の心をキズつける方を彼は選ぶ。
そんな彼を彼は自分でさみしん坊と名づけた。
◇ ◇
人間には喜怒哀楽の四つの感情がある。
そして人間はその四つの感情のうちどれが心の基本になっているかで四つのタイプにわけられる。
喜ぶ人は実業家。怒る人は政治家。楽しむ人は勤め人。悲しむ人は哲学者。
彼の心基本、それは「哀」だった。
もちろん彼にだって他の三つの感情が起こることはある。
でもそれらの感情が起こる場合でも必ず「哀」の感情はついてきた。
「哀」以外の感情は彼にとっていつも一時的なものであり、それらが過ぎ去ったあと彼の心はまたいつもの「哀」にもどるのだった。
彼は「哀」とともに生きる宿命の人間なのだ。
でも彼はどんなに小さなことでもうれしいことがあると涙が出るほど笑ってしまう。
彼の心は「よろこび」に飢えているからだ。
◇ ◇
人間は母性愛と父性愛をうけてそれを身につけて大人になる。
父性愛は人を自立させる源。
母性愛はすべてを受け入れ庇い守る優しさ。
彼の心は母性だけでつくられた。
彼は母性愛的人間になった。
人に母性愛を求め、人を母性愛で愛した。
彼は思いやるか甘えるか、なのだ。
なせだか彼には父性が育たなかった。
そのため彼はちょっと自立心に欠ける。
でも心は一生懸命自立したがってる。
◇ ◇
さみしん坊は弱い心の持ち主だ。
夕方になるといつもうつ病がでてくる。
いいようのない寂しさと虚しさ。
そんな時、彼はビデオを見る。
かれの見るビデオは哀しいものばかり。
自殺した少女のドラマ。切腹する若者。死ぬまで戦いつづける闘士・・・・。
そんなのを見てると心が落ち着いてくる。
そうこうしているうちに日が暮れる。
「もう寝よう、あしたになればまた元気も出るさ。」そう自分を励ましして睡眠薬を飲んで床につく。
眠りに入るまでの時間が彼のちょっとした、でも一番幸福な時間。小説の続きを読む。
やがて睡眠薬の作用で吸い込まれるように眠りに入ってゆく。
◇ ◇
翌日は日曜日だった。彼は日曜日が苦手だ。
昼近くまでとりとめのないことを考えてボーと過ごす。
自分は何のために生きているんだろう・・・・・。
自分は何のために生きるべきなんだろう・・・・・。
だんだん不安がつのってきて気が狂いそうになる。
それでそれに耐えきれなくなって街に出掛ける。
街を歩きながら空を見上げる。
青空が見えると心もちょと晴れる。
ああ、空はこうして同じような表情で昔から人々の営みを見守って来たのだな。
人はかわってゆく。
街もかわってゆく。
でも空はかわらない。
十年前の空も、二十年前の空も、三十年前も、紀元前の空もこれと同じ表情なのだ。
そして私が死んだあとも・・・・・。
時と流れはむなしいものだ。
すべてのものを消してしまう。
そんなっことを考えると人生のはかなさが感じられ、むなしい気持ちになる。
でも、気を取り直して、そんなはかない人生だからこそせいっぱい生きなきゃ、と自分を励ます。
図書館に入って机にむかう。
勉強しなきゃと思いながらも彼は集中力がないのですぐにとりとめのないことを考えてしまう。
そしてやがてそれに耐えきれなくなって図書館の中をブラつく。
何かの本をパラパラみる。
それにも飽きて図書館を出る。
喫茶店に入る。
ウェイトレスが注文を聞きにくる。
人間恐怖症の彼にはこのときがつらい。
グラタンと紅茶を注文する。
食事を前にしてもすこしも食欲は起こらない。
でも彼は食べないと痩せ衰えて死んでしまうような気がして、それがこわくてムリして食べるのだ。
ちっともおいしくない。
夕方になって寒くなってくると神経衰弱が起こってくる。思考がスムーズに進まない。
同時に得体の知れない腹痛も起こってくる。
こんな病気にさいなまれながら生きてゆかなくてはならないかと思うといいようのない不安と焦りがおこる。
もう帰ろう・・・・・。
喫茶店を出て駅へ向かう。
冬の風はしんから冷える。
帰りの電車の中では寒さで本も読めない。
ポケットに手を突っ込んでブルブル震えながら寒さに耐える。
さみしい我が家(アパート)につく。
何かしなくちゃと思いながら何も出来ないままこたつにちぢこまって時間を過ごす。
気が付くともう夜の十二時。
「ああ、またむなしい一日が過ぎた。」と溜息をついて、睡眠薬を飲んで床に就く。
さみしん坊はそんな日々を送っている。
◇ ◇
彼は現実世界で生きていけない人間だ。
この世に彼の生きれる場所なんてない。
だからついつい彼は夢の世界に引きこもる。
さみしん坊は夢見る人間だ。
彼はいろんな夢を見る。夢の世界だけは彼を慰めてくれる。
そんな彼に声をかけてくれる人もいる。
そんなとき心では嬉しいのに彼は人をうけいれることが出来ない。
さみしん坊はへそまがり。
でも人一倍寂しがり屋
◇ ◇
さみしん坊は人が恋しくて医者になろうと思った。
彼はかなしい人の気持ちが分かるから患者に好かれるかもしれない。
でも彼は結局は誰にも心を開けないから個独は死ぬまで続くだろう。
それでもいいや、とかれはかなしく諦めた。
でも彼は心の片すみにはかない希望をもっている。
いつか人と心が通じる日が来ることを・・・。
いつか幸せになれる日が来ることを・・・。
それは夢かもしれない。
でも彼は信じてる。
ひとりぼっちで生まれ、一人ぼっちで生き、そして一人ぼっちで死んで行く。
さみしんぼさん。くじけないでね。
冬の街の空を見上げ物思いに耽って歩いてる。
彼は心の弱い人間だ。
いつも、過去と未来のことをくよくよ考えている。
そして後悔と不安の中で生きている。
彼の心はいつも悲しいことのほうにばかり向いてしまう。
人の心をキズつけることが出来なくて、いつも自分の心をキズつける方を彼は選ぶ。
そんな彼を彼は自分でさみしん坊と名づけた。
◇ ◇
人間には喜怒哀楽の四つの感情がある。
そして人間はその四つの感情のうちどれが心の基本になっているかで四つのタイプにわけられる。
喜ぶ人は実業家。怒る人は政治家。楽しむ人は勤め人。悲しむ人は哲学者。
彼の心基本、それは「哀」だった。
もちろん彼にだって他の三つの感情が起こることはある。
でもそれらの感情が起こる場合でも必ず「哀」の感情はついてきた。
「哀」以外の感情は彼にとっていつも一時的なものであり、それらが過ぎ去ったあと彼の心はまたいつもの「哀」にもどるのだった。
彼は「哀」とともに生きる宿命の人間なのだ。
でも彼はどんなに小さなことでもうれしいことがあると涙が出るほど笑ってしまう。
彼の心は「よろこび」に飢えているからだ。
◇ ◇
人間は母性愛と父性愛をうけてそれを身につけて大人になる。
父性愛は人を自立させる源。
母性愛はすべてを受け入れ庇い守る優しさ。
彼の心は母性だけでつくられた。
彼は母性愛的人間になった。
人に母性愛を求め、人を母性愛で愛した。
彼は思いやるか甘えるか、なのだ。
なせだか彼には父性が育たなかった。
そのため彼はちょっと自立心に欠ける。
でも心は一生懸命自立したがってる。
◇ ◇
さみしん坊は弱い心の持ち主だ。
夕方になるといつもうつ病がでてくる。
いいようのない寂しさと虚しさ。
そんな時、彼はビデオを見る。
かれの見るビデオは哀しいものばかり。
自殺した少女のドラマ。切腹する若者。死ぬまで戦いつづける闘士・・・・。
そんなのを見てると心が落ち着いてくる。
そうこうしているうちに日が暮れる。
「もう寝よう、あしたになればまた元気も出るさ。」そう自分を励ましして睡眠薬を飲んで床につく。
眠りに入るまでの時間が彼のちょっとした、でも一番幸福な時間。小説の続きを読む。
やがて睡眠薬の作用で吸い込まれるように眠りに入ってゆく。
◇ ◇
翌日は日曜日だった。彼は日曜日が苦手だ。
昼近くまでとりとめのないことを考えてボーと過ごす。
自分は何のために生きているんだろう・・・・・。
自分は何のために生きるべきなんだろう・・・・・。
だんだん不安がつのってきて気が狂いそうになる。
それでそれに耐えきれなくなって街に出掛ける。
街を歩きながら空を見上げる。
青空が見えると心もちょと晴れる。
ああ、空はこうして同じような表情で昔から人々の営みを見守って来たのだな。
人はかわってゆく。
街もかわってゆく。
でも空はかわらない。
十年前の空も、二十年前の空も、三十年前も、紀元前の空もこれと同じ表情なのだ。
そして私が死んだあとも・・・・・。
時と流れはむなしいものだ。
すべてのものを消してしまう。
そんなっことを考えると人生のはかなさが感じられ、むなしい気持ちになる。
でも、気を取り直して、そんなはかない人生だからこそせいっぱい生きなきゃ、と自分を励ます。
図書館に入って机にむかう。
勉強しなきゃと思いながらも彼は集中力がないのですぐにとりとめのないことを考えてしまう。
そしてやがてそれに耐えきれなくなって図書館の中をブラつく。
何かの本をパラパラみる。
それにも飽きて図書館を出る。
喫茶店に入る。
ウェイトレスが注文を聞きにくる。
人間恐怖症の彼にはこのときがつらい。
グラタンと紅茶を注文する。
食事を前にしてもすこしも食欲は起こらない。
でも彼は食べないと痩せ衰えて死んでしまうような気がして、それがこわくてムリして食べるのだ。
ちっともおいしくない。
夕方になって寒くなってくると神経衰弱が起こってくる。思考がスムーズに進まない。
同時に得体の知れない腹痛も起こってくる。
こんな病気にさいなまれながら生きてゆかなくてはならないかと思うといいようのない不安と焦りがおこる。
もう帰ろう・・・・・。
喫茶店を出て駅へ向かう。
冬の風はしんから冷える。
帰りの電車の中では寒さで本も読めない。
ポケットに手を突っ込んでブルブル震えながら寒さに耐える。
さみしい我が家(アパート)につく。
何かしなくちゃと思いながら何も出来ないままこたつにちぢこまって時間を過ごす。
気が付くともう夜の十二時。
「ああ、またむなしい一日が過ぎた。」と溜息をついて、睡眠薬を飲んで床に就く。
さみしん坊はそんな日々を送っている。
◇ ◇
彼は現実世界で生きていけない人間だ。
この世に彼の生きれる場所なんてない。
だからついつい彼は夢の世界に引きこもる。
さみしん坊は夢見る人間だ。
彼はいろんな夢を見る。夢の世界だけは彼を慰めてくれる。
そんな彼に声をかけてくれる人もいる。
そんなとき心では嬉しいのに彼は人をうけいれることが出来ない。
さみしん坊はへそまがり。
でも人一倍寂しがり屋
◇ ◇
さみしん坊は人が恋しくて医者になろうと思った。
彼はかなしい人の気持ちが分かるから患者に好かれるかもしれない。
でも彼は結局は誰にも心を開けないから個独は死ぬまで続くだろう。
それでもいいや、とかれはかなしく諦めた。
でも彼は心の片すみにはかない希望をもっている。
いつか人と心が通じる日が来ることを・・・。
いつか幸せになれる日が来ることを・・・。
それは夢かもしれない。
でも彼は信じてる。
ひとりぼっちで生まれ、一人ぼっちで生き、そして一人ぼっちで死んで行く。
さみしんぼさん。くじけないでね。