かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 267(韓国)

2019-11-16 20:30:07 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠 35(2011年1月)【白馬江】『南島』(1991年刊)P78
     参加者:K・I、N・I、佐々木実之、崎尾廣子、T・S、曽我亮子、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:佐々木実之 まとめ:鹿取未放


日本書紀では白村江(はくすきのえ)。天智二年秋八月、日本出兵して
    ここに大敗したことを太平洋戦争のさなか歴史の時間に教
                へた教師があつた。その記憶が鮮明に甦つてきた。


267 百済出兵の野望に泣きし役(え)の民の裔(すゑ)なるわれが見る白馬江

(レポート)
 「役」とはこの場合「兵役」ではなく労働としての納税である。書記では当然のごとく百済出兵の増税については触れていない。その触れていない部分に目をあてると当然のごとく我々はみな「役」に服したものの子孫であることに気づく。その野望に泣き働いた民の末裔として白馬江を見る時、単に労働を強いられた恨みをのみ思うのであろうか。日本は朝鮮を35年支配した。ガイドから見ると日帝も天智天皇も加害者であり、我も加害者の末裔である。しかしながら一方では、斉明・天智の「野望」の被害者である。その複雑な立場をこの一首は渾然と詠んでいる。日本が白村江に出兵したのは、帝国主義的な野望ではなく、友好国百済の復興のためであって、たとえば任那を復興するというような今でいう帝国主義的な野望からではない。それにもかかわらず野望と言い切ったので右のような複雑な感情を読者に伝え得るものとなった。
 豆知識:「役」は漢音で「エキ」、呉音で「ヤク」。「(音読みの末尾が)フクツチキ平音なし」といわれるが、入声の仄音である。今のカタカナで書くと「エッ」に近い。これを「え」と読むのは労役の場合だけに残っている。(実之)


 
                  
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