かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 350

2024-11-24 11:09:29 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究42(2016年9月実施)
    『寒気氾濫』(1997年)【明快なる樹々】P143~
     参加者:M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放


350 樹々の根のあらわな崖に音たてて春の疾風がぶつかりつづく

    (レポート)
 山の中では崖崩れなどによって樹々の根があらわになっているところをよく見かける。そこに春の疾風が容赦なく打ち付けて、さらに浸食はすすむだろう。山中の森の樹々といえどけっして安泰ではなく、日常の大きなうねり、返歌の中でかろうじて命を繋いでいる樹々もあるのだ。(鈴木)


    (当日意見)
★簡潔に状況を捉えた歌いおこしがすてきだなあと思いました。滋味だけどとてもい
 い歌。( 慧子)
★崖崩れでなくても根のあらわな崖はよく見かけますね。樹にとっては「春の疾風がぶ
 つかりつづく」のは辛い状況でしょうが、読む方は小気味よい感じがしますね。爽快
 な感じ。(鹿取)
★これは春一番を歌っている気がします。その後、春が来て芽吹きが始まるんですね。
   (M・S)
★春一番も含むでしょうが、「ぶつかりつづく」だから、ある一日のことではなくもう少
 し長いスパン、この所毎日毎日「疾風がぶつかりつづく」状態なのだと思います。
   (鹿取)

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