かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

改訂版 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 31

2022-04-13 11:02:14 | 短歌の鑑賞
 ※既にアップした『泡宇宙の蛙』2の1~2の5までの鑑賞を大幅に変更した歌について、
  改訂版を1首ずつ載せてゆきます。
この後、本日2回目になる通常の鑑賞を載せます。  


  改訂版 渡辺松男研究2の4(2017年9月実施)
    『泡宇宙の蛙』(1999年)【大雨覆】P24~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
       レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     

31 まぼろしがおき去りにせししんじつのひとつの尾羽足元に見る

       (レポート)
 「真実の尾羽」とは、作者の足もとに、ひらりと落ちている羽のことだろうか。いや、前の30番のうた(地に落ちしわれ人間となりきりて夕鶴のごと生きたかりしを)の夢想を受け、それが幻と消えてしまったことを詠み、尾羽の具体を余情とともに目にみせたのだろう。(真帆)


        (まとめ)
 映画などでも、ではあれは全て幻だったのかと思っていると、幻ではなかった証拠のように現実のモノ(この歌では尾羽)が残っている、というような謎を残しつつ終わる手法がある。幻とも現実ともつかないような、そのあわいのようなところで主人公が呆然としている、そんな感じだ。しかしこの歌では敢えて「しんじつの」と言っているのでどうなのだろう。前の歌「地に落ちしわれ人間となりきりて夕鶴のごと生きたかりしを」が本当は鳥である〈われ〉が人間として生きようとしたという設定が日常感覚を超えているので、少し韜晦したいのであろうか。(鹿取)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
«  渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一... | トップ |  渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事