研究2の9(2018年2月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
【白鳥】P44~
参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
69 白鳥はふっくらと陽にふくらみぬ ありがとういつも見えないあなた
(レポート)
「白鳥はふっくらと陽にふくらみぬ」とはあたたかそうでみている者の至福感がつたわる。これは今はもういないたれかへの感謝の気持とも考えられる。あるいは、今在ることの命がしみじみ嬉しく、誰とはしらず、おのづから感謝している心として読みとれる。いづれにしても上句の端的な表現と下句の心の表白が感覚的によく照応する。(慧子)
(当日意見)
★そうですね、レポートのとおりですが、感謝の対象は「いつも見えないあなた」だからもう少し
汎神的な何か、神と言ったら違うんだろうけど、自分や白鳥やもろもろを包み込んでくれるある
大きなものなんでしょうね。この歌は馬場先生が大会の時採り上げてコメントされたことがあ
ります。また、本人が「かりん」の渡辺松男特集号で『泡宇宙の蛙』の自選五首にこの歌を選ん
でいて、ご自分の思いを書いているので読んでみます。(鹿取)
※冬の陽のあたたかいときなどに感じる、何かに包まれているという感覚と、白鳥を存在させ
ているものは同時に私を存在させているものだという感覚は、同じようなものなのです。そ
の感覚を「あなた」と言っています。「ありがとう」という言葉ですが、そう思える自分は
自分のこころの全体の三分の一でした。あとの三分の一はそんなことないよ、嘘だ、欺瞞
だ、と。あと三分の一は恥ずかしいと思っていました。今これを書いている二〇一〇年八月
二十九日時点では、こういう歌を詠んだ自分を肯定しています。「ありがとう」と言ってお
いて良かったと思います。(「かりん」2010年)
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