かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 75

2020-08-25 21:42:15 | 短歌の鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究⑨(13年10月)
       【からーん】『寒気氾濫』(1997年)33頁~
        参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
         レポーター 鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放


75 見付けたきもの見付からぬ倉庫にて物言わぬ荷に視姦されいき

      (レポート)
 たぶん家業の手伝いのために、普段あまり入らない倉庫に入って物を探したのだろう。「私が物を見る」ということは、同時に「私は物から見られている」ということでもある。倉庫に入って意識的にものを探しているときには、「物を見る」という私の主体が強く働いている。ところが、当のものが見つからないとき、主体は肩透かしを食らって、今度は一転、私は客体に転化し、「物から見られている」という意識が強く浮上してくる。物言わぬ荷にまじまじ見つめられて、まるで視姦されているかのようだ。(鈴木)

  (意見)
★私もよくこういうことがあります。本当はあるんだけど、見つけることができなくて、
 向こうから見られている感じ。(曽我)
★こういう場面はけっこうある。特に人気のない倉庫だと怖くて、物に見られている感じ
 がする。子供がまだものが言えない赤ん坊の時、ふたりきりでいたら、赤ん坊の視線が
 とっても怖いと思ったことがある。我が子なのに目の奥に異星人みたいな得体の知れな
 いものが潜んでいて覗かれているようで怖かった。それとこの歌の感覚は似ている気が
 する。(鹿取)
★こういうのを歌にするのは難しいことだし、こういうの歌になるかしらと思ってなか
 なか作れないですね。どう歌って良いか分からないし。こういう経験を即、まあ即か
 どうか分からないけど、歌にしてしまうところが渡辺さんのすごいところ。(鈴木)

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