かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の164

2019-05-06 18:53:19 | 短歌の鑑賞

◆ICレコーダーの調子が悪かったので、とりあえず2回分飛ばして掲載します。

    渡辺松男研究2の23(2019年4月28日実施)
     Ⅲ【交通論】『泡宇宙の蛙』(1999年)P109~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


164 くぐもりて雉鳩は鳴く花曇り すめらぎという大妣ありき

     (レポート)
 崩御した皇太后を皇妣というが、下の句の「すめらぎという大妣」はもっと大きくとらえ、日本神話の女神である天照大神を詠っているように思える。上の句には、キジバトが鳴くと雨が降るという言い伝えを下敷きに、花曇りの重たい空の質感が手渡される。デデッポーと耐え忍ぶようにくぐもった声で鳴く雉鳩には、虐げられた者たちの声にできない声も連想でき、その声をはるか彼方から見守っている大いなる母(妣)、といったような大きな光景をおもい浮かべた一首だった。(真帆)


     (当日意見)
★わたしは大妣を、例えば持統天皇のような人を思い浮かべました。限定するわけではないで
 すが、この連の展開を見ると坂口弘とか青木伊平とか血なまぐさい事件が次々出てきます。
 それ考えると皇位継承を巡って血で血を洗う時代に、残忍なことをやっていた持統天皇なん
 かがふさわしいのではと。松男さんには、別の歌集だったかな、「うののさらら」としてそ
 の血なまぐささを歌っている一連がありました。ここでは、天照大神みたいな古代的でおお
 らかな女性性より、謎に満ちた禍々しい残忍な女性の方が一連の展開としてはふさわしいか
 なって。それにしても上の句の設定が見事だと思います。(鹿取)
★渡辺さんの歌の読み方ですけど、書いてあることだけをぱっと読めばいいかなと思い始めま
 した。上の句からはぼわーんとした変な重い感じ、そういう空気感の中で「すめらぎという
 大妣ありき」とこの人は思ったんだと。上の句が下の句を納得させる景ですね。そうすると
 下の句は日本の歴史のある怪しげなものというか不穏なものというかそういうものが在っ 
 て、今自分はここに存在している。持統という野心満々の恐ろしい女性がいたということが
 実感できる。雉鳩の声は聞こえるけど空間は動かない。時間と空間があって、だからなんな
 のと言われると分からないけど共感ができる。(A・K)
★上の句、下の句の間が1字分空いている理由が今の説明で分かりました。(岡東)



      (後日意見)
 鹿取の発言中にある「うののさらら」(鹿取注:持統天皇の別名)の歌は、第3歌集『歩く仏像』の「かわひらこ」(鹿取注:蝶の古名)一連にある。まがまがしい一連だが7首中3首のみ抽出する。(鹿取)
      名神を百四十キロで飛ばしつつ蒲生とありむらさきのよぎるいっしゅん
      かわひらこぴぴるぱぴよんぴるぴるとどこみてもうののさららのみどり
      大和に火の小綬鶏が鳴きあらそわばみな死ぬほどの狭きまほろば



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