かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 329

2024-10-22 15:27:55 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究40(2016年7月)
    『寒気氾濫』(1997年)
    【明快なる樹々】P136~
     参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取 未放


329 レタスの葉こころの襞を一葉ずつ洗いて盛りて君とのランチ

      (レポート)
 粗く扱うと壊れやすい心と、ごわごわと入り組んだレタスの質感とが絶妙に合っている歌だと思う。ただ、「君とのランチ」の解釈にすこし迷う。いそいそとランチを準備しつつ君を待つ作者なのか、それとも君と二人でキッチンに立ち話しながらランチを作っているのか、つまり登場人物が一人なのか二人なのかに迷った。一人と取れば上句のレタスは、君を待ち千々に乱れる作者の心の襞と思え、二人と取れば互いの心を素にしている場面とも思える。どちらかといえば、一人でレタスの葉を洗いながら、これから迎える君とのランチにややナーバスに一喜一憂しつつ、洗ったレタスの葉をサラダボールに入れている場面を思い浮かべた。(真帆)


      (当日意見)
★こころの襞をひらくって、少しずつ心を開いていくことだととったのですが。(曽我)
★そういうことだと思いますよ。(鹿取)
★レポーターはひとりとかふたりとかにこだわっていますが、奥さんとランチを作って
 いるってとりました。レタスを洗うことはお互いの気持ちの通い合いでもあるわけで
 す。そしてふたりで楽しくランチを食べたと。だから心が乱れたとかは感じませんで
 した。(鈴木)
★私はこの1首の場面は一人だけ登場しているのか、君と二人なのか迷ったのです。
   (真帆)
★私は単純に二人で準備して二人で食べていると。(鈴木)
★妻とのランチにしては随分初々しいと思います。もちろん夫婦だって葛藤もすれ違い
 もあるし修復を試みて二人で旅したり食事したりすることもあるけれど。もちろんい
 つも仲の良い夫婦もあるだろうけど、この初々しい感じは一人で作って恋人と食べる
 ために準備しているという真帆さんの説の方をとりたいような。(鹿取)
★私は一連読んでてそういう雰囲気が漂っているからそう考えたので、この1首だけで
 言っていはいないです。相手への愛情がどの歌からも感じられるので。それから私は
 妻とは言っていないので、君でいいのじゃないか。作者も妻とは言っていないですか
 ら。妻であっても妻って言わないところがふくらみがあってよい。その方が「個」を
 離れる豊かさが出る。(鈴木)
★いや、鈴木さん最初に「奥さんとランチを作っているってとりました」と発言され
 ていますよ。(鹿取)


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