欠陥建築バスターズ

土地・建物の調査研究が専門。日本の地震や災害に備えた建築や、不動産市場や世界経済の未来鳥瞰について述べています。

歴史的欠陥建築物(欠陥住宅) No.3弘前城

2013年02月19日 19時02分45秒 | 歴史的欠陥建築物(欠陥住宅)





『津軽10万石の弘前城にも隠れた欠陥があった!』




築城400年を迎えた、弘前市の弘前城。

桜の時期になると、必ずTVでも紹介されますね。


内堀の規模だけ見ると、何と江戸城や大阪城にも匹敵する大きさなんです!

田舎侍の城としては、大きすぎる城なのです。


さて、そんな壮大な規模の弘前城ですが、天守閣は実にかわいくて小さい

のです。

高さは三階建ての普通の住宅とほとんど同じ高さです。


もともと、今の天守閣が、本来の天守閣ではありませんでした。

最初の天守閣は、完成してすぐに、落雷により焼失してしまいました。

正確には、焼失と言う感じでなくて、城内部に蓄えた弾薬が爆発して、城

の屋根が数キロ飛ばされるほどの、大爆発によって失われたのです。


…すぐにでも天守閣を再建したかった大名の津軽氏でしたが、当時は、

「一国一城令」と言う法律みたいなものがあって、天守閣の再建は出来ま

せんでした。


そこで、仕方なく、元々城の石垣の隅の部分をまもる為の「櫓」(やぐら)

を改築して、天守閣の様な形につくりかえました。


それが、現在の弘前城天守閣です!


このお城は、本当に小さいので、実際よりも大きく見える工夫があちこち

にされています。

弘前城の窓は他のお城の窓よりも、ずっと、小さくつくってあります。

こうする事で、目の錯覚で、実際のお城の大きさよりも、大きく見えます。


さて、この弘前城、お堀に面した石垣の角の部分にのっています!


改築する時に、通常の櫓よりも厚めに漆喰をぬったり、屋根のデコレーシ

ョンみたいな「破風」を加えたりしたので、石垣に掛かる重みが増して

しまいました。


出来るだけ天守閣を軽量化する為に、屋根瓦を使う変わりに、銅板を屋根

瓦状に加工するなどの工夫をしてありますが、それでも、石垣に掛かる

重みが、当初の設計重量よりも重くなってしまいました。


…弘前城は築城してから400年間の間に、何回も地震に遭遇してきまし

た。そして、その度に石垣の上にのる重たい天守閣が、石垣の積み石に

ストレスを掛け続けています。


その結果、石垣の一部が外側に膨らんだ様な状態になっています。


今すぐに石垣もろとも、天守閣がお堀に「落城」する事は無いと思われま

すが、非常に心配な状態です。


…これは、弘前城の天守閣の話ですが、実は、この様な「改築」「増築」

によって、皆さんの住宅も「危険な家」になってしまう事が多いんです。


私たちが調査した家の多くが、過去に「増改築」した家で、その全ての

家に重大な「欠陥」や「法令違反」が見つかりました。


それでも、家のオーナーさんは、その事実に全く気が付いていないんです。

きっと、津軽の殿様も、400年後に自分の城が大変な事になるなんて、

夢にも思っていなかったでしょうね。


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歴史的欠陥建築物(欠陥住宅) No.2ピサの斜塔

2013年02月19日 17時10分30秒 | 歴史的欠陥建築物(欠陥住宅)





『ピサの斜塔は建築中から傾いていた!』




私どものHPの冒頭に、「ピサの斜塔」の写真が使用してあります。

実は、このピサの斜塔は歴史的な「欠陥建築」なのです!


この時代の建物は、石でつくられました。

つまり、建物の重量が、非常に重いのです。


問題の物件「ピサの斜塔」は、もともとあまり地盤が良好でない場所

に建てられた建造物です。


当時の記録によると、三階あたりを建設中に、既に建物が傾斜をはじ

めていた様です。


その為に、更に上の階をつくる際に、少しづつ傾きを修正しながら石

を積み上げていったそうです。


しかし、建設当初から傾き始めた塔は、結局完成してもなおも傾き、

現在も傾き続けています。


…この塔が傾いていた事で、人類史上、重要なある実験がおこなわれ

ました。

建物が傾いている為に、最上階から落とした物体が、建物に接触せず

地面まで落下するからです。


…その実験をした人こそ、「ガリレオ ガリレイ」です。

彼の発見した「万有引力の法則」は誰でも知っていますよね。


このガリレオは、ピサの斜塔から、「重い玉」「軽い玉」を同時に落

下させ、落下音に時間差が出るかを、何回も実験したといいます。


…こんな、人類史上重要な発見をするきっかけを、与えてくれるよう

な「欠陥建築物」なら嬉しいのですが、普通は困り果てるのが普通で

す。


実は、このピサの斜塔が傾いたのと同じ原因で、大事な住まいが傾く

欠陥は多いんです。


その原因が、基礎や構造にある場合もありますが、ほとんどは地盤に

問題があります。


地盤と言うのは、生き物と同じで、ゆっくりと変化して動くんです!


我々、建築士は、その事まで見越して建物の設計をする訳ですが、小

規模の住宅の場合、地盤調査が十分でなく、建物が完成した後で問題

が生じる事もあります。


大地震の時に起こる「液状化現象」も、建築士なら誰でも予想できなけ

ればおかしいのです。


東日本大震災の際、千葉県幕張近辺の大手デベロッパーが開発した住宅

街で、「液状化現象」で大きな被害がでましたが、そんな事は、最初か

らわかっていたはずです。


被害にあった皆さんが、「こんな被害にあうなら、こんな家は買わなか

った!」と、おっしゃいます。


地盤に欠陥がある家も、やはり、「欠陥住宅」なのです!


できる事なら、最初からそんな家は買わないで頂きたいものです。

 


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歴史的欠陥建築物(欠陥住宅) No.1織田信長の安土城

2013年02月19日 16時00分51秒 | 歴史的欠陥建築物(欠陥住宅)





『織田信長の建てた安土城も欠陥建築(欠陥住宅)だった!』




今回は、プロの建築士から見た歴史上の欠陥建築(欠陥住宅)について、

書かせていただこうと思います。


さて、織田信長の生きていた時代にタイムスリップしてみましょう。


…織田信長と言う大名は、実に革新的な人物でありました。

彼の建てた「安土城」は日本で最初の天守閣を持った城でありました。


それまでの日本の城は、山の上に砦をつくるだけの簡単なもので、戦が

ある時以外は、無人の軍事施設でありました。


しかし、織田信長が考えた城は、西洋の城のごとく、天にそびえ立ち、

領主の威厳を周囲に示すものでした。


織田信長は、自分の建てたその「安土城」の中で生活もしていました。

実は、この事も日本史の中で、唯一、信長だけが行った事です。


日本にはいくつもの城がありますが、天守閣の中で生活した殿様は、

織田信長だけです。

普通、殿様になって自分の城の天守閣の最上階まであがるのは、その

殿様が生きている間に一回か二回しかなかったと言われます。


…では、何の為に城に天守閣をつくったのでしょうか?


一つは、殿様の権威の象徴です。そして、軍事施設(砦として)の

実用性もあります。でも、一番の目的は、いよいよ敵に攻められ、もは

やこれまでと、なった時に、殿様がそこで切腹する為の場所だったんで

す。


…ですから、殿様としては、そんな縁起でもない場所に、頻繁に立ち入

る事はなかった訳です。


…ここで再び織田信長の「安土城」に話を戻します!

この「安土城」は謎の多い城です。もちろん、現存していません。


現在は、城の石垣や基礎石のみ存在します。


…実は、この基礎石にミステリーと、この城の構造を解き明かすヒント

があります。


天守閣の基礎石は、碁盤の目上に、縦横に同じスパン(間隔)で並んで

いますが、中央の基礎石だけ一つ足りないのです!

発掘調査から、城の建築当初から、真ん中の基礎がなかった事が解って

います。


…建築士である私が推理するに、信長の建てた安土城の天守閣には、中

央に吹抜けがあったのでなないか! と、思うのです。


その根拠が、信長のお気に入りだったキリスト教の宣教師が書き残した

文書にあります。


「ゼウス(神)はその城が存在し続ける事をお許しにならなかった。炎

は一瞬にして、城全体を包み、燃え落ちた…」


…そんな風に書き残しています。


では、なぜ、そんなに早く火災が広がったのか?

そんな疑問がわいてくるのです。


火災になった原因は、信長の息子が火をつけて放火したからと、言わ

れています。


放火する場合、普通は一番下の階に放火するはずです。いくら木造の

城であっても、太い柱や、分厚い板に火がまわるには、かなりの時間

を要するはずです。


それが、一瞬にして城全体に火災が広がったと言う訳ですから、そこ

には何か建物が持つ特殊性があったとしか考えられません!


…私が、それらの証拠から到達した結論こそが、「安土城には下の階

から上の階まで大きな吹抜けがあった!」という事です。


現代の建物においても、吹抜けのある建物は、火災の際に非常に危険

なのです。

なぜならば、炎で温められた空気は、上昇します。その時に炎も上へ

上へと上昇します。


この現象を、「煙突効果」と言います。


デパートのような建物にも、エレベーターホールや吹抜けがあります。

現代の建築基準法では、この様な「縦穴区画」を、防火シャッターで

閉鎖できる構造にする事が、義務づけられています。


もし、デパートに行く機会があれば、エレベーターホールの辺りを、

観察してみてください。きっと、私が説明した通りのはずです。


…再び、話は安土城炎上の件にもどりますが、やはり、宣教師の目撃

談から推測するに、安土城は構造上、火災に弱い設計だったと言わざ

るを得ません。


この教訓を是非現代に生かしたいものです!


皆さんが、今お住まいの住宅に「火災警報機」を取り付ける場合は、

もし、木造の二階建てとか三階建てなら、階段をあがりきった場所の

天井に、火災警報機を取り付けましょう。


この理由は、階段室が、先ほど説明したように、煙や炎の通り道にな

るからです。


…最近、「おしゃれな吹抜けのある家」が人気ですが、火災には大変

弱い事を、是非、知って頂きたいと思います。


建物に関する調査のご連絡はこちらから→『欠陥建築バスターズ』

 


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