妻の体力は徐々に弱って、シャワーチェアから立ち上がれなくなったり、トイレから立ち上がれなくなったりし、生活に大きな支障を来たすようになってきた。「立てない。立ち上がらせて!」と言われ、立ち上がりの介助を求められることが多くなった。椅子がもう少し高ければ、何とか自力で立ち上がれるかもしれないとの思いから、座面の高さを少し上げることにした。
シャワートイレは、厚さ2センチの発砲スチロール板を2枚重ね合わせ、4センチ高くすることができた。しかし、4センチ上げてしまうと、今までとのギャップが大きすぎると考え、高さ調整機能を使い、1センチ縮め、3センチ上げることにした。結果としてはこれがかなり効果があったようで、一人で立ち上がることができるようになった。体力の消耗も少なくて済むような気がした。
次に、少し加工の面倒なトイレに取り掛かった。はじめ、シャワーチェアと同じように4センチで考えたが、シャワートイレの取り付けボルトが短く、4センチ上げてしまうとボルトで締めることができないことが判明。上げることができるのは3.5センチと分かり、急遽、発砲スチロールの板の厚みを削って3.5センチが上げた。トイレの座面を高くしてからは、用を足した後に、自力で立ち上がり、水を流し、手洗いも済ませることができるようになった。普通の人にとっては3.5センチの高さの違い、小さいものだが、妻にとってはこれが大きな違いなのだとつくづく思う。
何しろ、立っていられる時間が1、2秒あるかないかで、すぐに何かにつかまらないと立っていられない。立ち上がるために体力を使い果たしてしまうと、その後の動作が全くできない。ウルトラマンは胸のランプが点滅し始めると、活動できる時間が残り少なく、宇宙へ帰らなくてはならないのだが、妻も、一時に消費できる体力に限界があり、その時間内に動作を終えねば、全く動けなくなってしまうのだ。
今回は、座面を上げることで、再び自力で立ち上がれるようになったが、これも一時的に先延ばしにしたに過ぎないことは分かっている。何れは、立ち上がることもできなくなるだろうし、自分で食べ物を口に運ぶこともできなくなることだろう。ただ、多少、工夫することで、少しだけ自力でできる時間を延ばすことができれば、それはそれで、良いことなのだろうと思う。