また痛ましい事故が起こってしまった。スキーバスが道路から外れ転落、多くの死者が出た事故だ。この事故、単純に考えれば、下りカーブでスピードが出すぎて、回りきれなかったという単純な事故に思える。しかし、少し考えてみると、いくつか腑に落ちないことが出てきた。
1つ目は、なぜ、高速道路ではなく、一般道を走っていたのか?旅行会社の説明では、高速を使う指示書を出していたという。しかし、実際は、一般道(碓氷峠)で起こっている。もし、ETCを使っていれば、高速を下りて、一般道を走っても、運転手には負担や危険が増えるだけで、何のメリットもないはずだ。バス会社は、運転手から行程の変更の連絡はなかったという。まともな会社ならば、ETCの利用歴をチェックし、高速道路を使っているか否かはすぐに分かってしまうだろうし、タコグラフの分析でも、分かってしまうだろう。そんなリスクを犯してまで、高速道路から一般道路に変更するメリットは、運転手にはないのだ。それでは、時間調整か?他に目的地があるわけではなく、スキー場に時刻どおりに着いていれば良いだけのこと、時刻前についても、駐車場で寝ていれば良いだけのこと。普通の心理なら、早く着いて、ゆっくりと休みたいと思うだろう。だから、高速を下りて、一般道路を走るメリットは運転者にはないと思うのだが、実際は、どうなのだろうか?
2つ目は、運転者の年齢が65歳と57歳だったということ。一般の運送会社が65歳の人に、長距離でしかも乗客を大勢乗せた運転を任せるだろうか?運転手が大丈夫だと言っても、良識のある監督者なら、ストップを掛けるだろう。確かに、個人差があるにしても、リスクが大きすぎることには変わりがない。一方、運転手側から見て、年齢から体力や注意力の低下は否定できない。運転好きの私でも、長距離は車をやめて電車で移動するようになってきた。それは、長時間の運転することに危険を感じるようになったからだ。ましてや、大勢の乗客を乗せているという責任の大きさを考えると、躊躇するのが常識的な発想だろう。
3つ目は、乗客は格安、激安のツアーにリスクを感じなかったのだろうかということ。まあ、リスクを感じていたならば、乗らなかっただろうから、愚問と言えるかも知れない。私は、移動手段の安全度の高い順に、電車・列車、飛行機、バス、自家用車の順だと思う。バスと自家用車の順序は、自分の運転の危険回避能力を低く見積もっているためです。自分ほど信用できない生き物はいないと常々思っているので、こういう順番になる。
ところで、世の中には格安、激安という言葉が溢れている。しかし、格安、激安には当然、リスクが伴う。例えば、100円ショップで何かを買ったとする。例え買った品物がすぐに使い物にならなくなったとしても、文句を言う人はあまりいないだろう。それは、そういうリスクがあることを承知で買っているからだ。リスクを避けたいのならば、普通の値段の品物を買えば良いだけのことだ。移動手段についても、同様のことが言えるのではないだろうか?格安航空券、それは、どこかで経費をケチっているから、格安に収まるわけだ。従業員の給料をケチる、整備費用をケチる、保険料をケチる等々、ケチることで、格安でも利益を出しているわけだ。まあ、100円ショップの品物が外れたからといって大したことには至らないが、移動手段をケチると、大変なことになるということを肝に銘じておこうと思う。