緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

組織目標の中の緩和ケア

2006年11月21日 | 医療

大学時代、病院経営学を教えてくださった紀伊国献三先生は
もう、80歳近くになられると思うのですが、
今だWHOで活躍されている先生。
その先生に、
「病院経営学とは、単に収支が黒字になることを目標とするのではない。
組織目標の達せいこそ、目指す所である。」
と教えられました。
病院という組織が、あるべき姿を描き、
それを具体化することが目標であり、
収支はその中の一部であるとおっしゃられたのだと理解しています。

今の急性期病院に移ってきた時、
急性期病院の目指すところに沿った緩和ケアでなければ
組織全体が目指す目標と相反してしまうと考えました。

緩和ケア科で入院病床を持てば、
必然的に終末期の患者さんが沢山集まってくることになります。
緩和ケアの役割を考えればそれは大変重要なことなのですが、
急性期病院という組織目標とは異なる方向に向いてしまいます。

緩和ケア病棟計画がある新棟が出来るまでは、
がん治療過程の患者さんの緩和ケアに徹することとしました。
ただ、救急で搬送されて初めてがん末期であることがわかった患者さんや、
病院内に入院中で多くの医療を希望されない自然死を望まれるような方のために
適宜2床を越えない入院を持つ事にしています。

多くの場合、事前にご説明しますが、
外来での症状コントロール目的の来院ながら、
実は入院を必要としていることがわかったような時、
希望に沿うことが出来ずとても心苦しい気持ちになってしまいます。
早く、病棟ができれば・・と思う日々です。

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3 コメント

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すばらしい言葉ですね (runa123)
2006-11-22 08:45:58
先生のブログを拝見すると心を打たれる言葉に良く出会います。ありがとうございます。
先生のように目標に向かって一歩一歩がんばっていける医師になれるよう、私も努力します。
返信する
Unknown (たか)
2006-11-22 11:55:34
海堂尊氏の小説「チーム・バチスタの栄光」からの抜粋です。
『死は、特別なものじゃない。病に倒れるということは、無に還れという天からの指令です。それをヒトの力でねじまげようとする方が傲慢(ごうまん)だ』
『そんなヤツには、医師の資格はない』
『そうですね。でもそれを言うなら、本当に医師の資格を持っているヤツがいるか、と問うことの方が先でしょう。(略)大部分のヤツは、食っていくために医者をやっている』

医療って難しいな~矛盾を一杯抱えているうえで、私たちが生きているんだなということを、改めて考えさせられた気がしました。
http://blog.livedoor.jp/tarotohachinosu/
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お立ち寄りありがとうございます (aruga)
2006-11-22 23:11:27
runaさま
コメントありがとうございます。長期的な大きな目標と、目の前の小さな目標。一つ一つ地道にいきましょう!お互いに!!

たかさま
コメントありがとうございます。沢山の矛盾の中で、自分にできることは何か、模索を続けていきたいと思っています。

これは、11月17日の「阿留辺幾夜宇和(あるべきやうわ)」にまさしく繋がることだと思っています。
http://blog.goo.ne.jp/e3693/e/70dd6e20fc96daf348285c583133ea51 
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