緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

いやいや痛み止めじゃないですよ(2)抗うつ薬

2008年01月29日 | 医療

その薬局では 薬の説明は
一律に保存してあるフォーマットを
打ち出して渡しているようでした。 

そこには、もちろん 痛みのことは触れられていません。
(そこは、保険適応外のことなのでしょうがありません)

「気持ちが元気になる薬」と書いてありました。
「これは何のことか」と患者さん。
「これはうつの薬だ」と薬剤師さん。

すかさず、「痛み止め?
 まあ、気持ちと痛みは関係がありますからねえ。」と意味深・・
トーゼン、私の説明はすっかり飛んでしまい
騙されて一服盛られてしまった・・と思ったようでした。

抗うつ薬は、神経から神経に伝達する物質の
ノルアドレナリン、セロトニンが再吸収されるのを防ぐことによって
神経間にノルアドレナリン、セロトニンを
十分満たしておく作用があります。 
どちらかというと
セロトニンは情動に、ノルアドレナリンは疼痛に関連性があり
神経間にこのノルアドレナリンが十分あると
下行抑制系神経を活発化することが知られています。 
つまり、ビリビリ痛むような過敏な状況を
まあまあ静まりましょうよと
沈静化(抑制)する神経を元気にしてくれ痛みを取り除くのです。
 
ですから、痛くて気持ちが晴れ晴れしないから
うつの薬を出すということと、積極的除痛目的ということは
意味合いが異なります。 
調剤薬局さんの説明は、私から見れば
ちょっと・・いや、とても困った説明だったのです。
(つづきます)


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5 コメント

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それでも・・・ (ポニー)
2008-01-30 15:54:21
昨日はちょっとフライング気味のコメントをしてしまい、申し訳ありませんでした。

同業ですが、やはり勉強不足とコミュニケーションのとりかたが下手としかいえないかも・・・

いくらルーチンの処方でなくてもどこかで察知すべきなのでは。

もっと勉強しなくてはいけないと反省するお話でした。
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適応外 (EB)
2008-01-30 21:19:06
病院で薬剤師をしているものです.先生の講演を以前聴かせていただき,大変わかりやすい講演でした.
私は主に,外来処方箋の鑑査をしています.適応外で処方する際には,外来処方箋の備考欄に鉛筆書きでコメントをつけるとよいでしょう.例えば,トリプタノールを出したのであれば,「鎮痛補助剤として処方」と一言.添付文書に鎮痛補助剤とは書かれていない以上,調剤薬局の薬剤師さんは抗うつ剤と説明しても仕方がないと思います.このようなメモを書けば,疑義照会などもなく,スムーズに服薬説明ができてお薬が患者さんのもとにわたると思うのですが?調剤薬局の薬剤師さんにもちょっとした気配りは必要ではないかと考えます.患者さんやお互い(医師・薬剤師)のために.
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コメントありがとうござます。 (aruga)
2008-01-30 23:15:08
ポニーさん
こんにちは!!30日も、さらに、続きますよ~
難しいなあって思います。施設を越えると・・・

EBさん
なるほど、鉛筆書きですね。
電子化が進むほど、鉛筆が院内から消えています。処方を書くとき、もっと意識して手元に置き、書いてみます! 30日の記事の続きにも思うところを書いております。
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55年通知 (itopie)
2008-02-01 15:12:29
55年通知
保険診療における医薬品の取扱いについて(昭和五五年九月四日)所謂55年通知は、厚生労働大臣の承認(添付文書での効能効果、あるいは保険適応)がな
くても、支払基金が支払いを認めることができるとした通知です。
昨年9月「カルバマゼピン」を「がん性疼痛」に対し処方した場合でも査定を受けない(2007年10月13日既報)とする支払基金の根拠となる通知です。しかしながら全ての適応外使用を認めている訳ではありません。また県によっても対応が違うようです。私の経験では、吐き気止めとしての「オランザピン」や鎮痛補助剤としての「ガバペンチン」はまだ基金側の理解を得ていないようです。学会等で声を大にして要望していきましょう
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itopieさん (aruga)
2008-02-01 22:46:32
本当にそうですね。
カルバマゼピンについては昨年記事にしました。
http://blog.goo.ne.jp/e3693/d/20071013
適応外投与は、十分なICの上処方すべきだと思っています。基金がよしとするのは支払い面だけで、副作用における責任は処方医にあることは忘れないようにしなければ・・と思っています。
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