緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

ご夫婦(3)

2014年02月16日 | 医療

「後、2~3週間の命かなあ・・と思います」
ご本人から言われました。

残念でしたが、2~3週間のゆとりはないと思われました。

私の中では、急変の可能性を考えると
後、数日・・の可能性も高いと考えていました。



命の長さと 
何かができる長さは 
異なること

これはと思うことは
出来るだけ早く行ったほうがよいことを
お伝えしました。






多くを伝えていなかったお母様にすぐに会い
お礼と別れをお伝えすることができたことは

出来るだけ早く・・
そう伝えたことに 意味を持たせてくれました。



「主人の意志を現実にしてくれた
医療スタッフに感謝しています」と
言ってくださったときは、
治療主科の医師、
在宅スタッフ
緩和スタッフの顔が
走馬灯のように思い出されました。


最後まで
多くのご友人が
ご自宅に出入りしてくださっていたそうです。

仕事のお仲間のようでしたが
自宅に来てくださり
何かをしようとするのではなく
ただ、共に同じ空気をすい
同じ時間を過ごしていたようでした。





そして、今まで撮りためた写真とエッセイをまとめた本を
数ヶ月前に出版されたとのことにて
その一冊を見せて頂きました。

都会の雑踏の一瞬を
元新聞記者さんらしい目線で とらえていらっしゃいました。

 

初診のとき
再度治療につないでいったとき
記者さんらしく
細かなメモと詳細なデータ整理をなさっていました。






他の医療者から、
とても、細かくて、閉口しています・・
と言われたことも、
実は・・ありました。

その細かさが、
医療を受けるうえで、
若干わずらわしさに
繋がっていたこともあり、

患者さんがよりよい医療を享受していただくためにも、
その細かさを もっと柔軟にできないかと
主治医がつぶやいたこともありました。

でも、それは、変わることはありませんでした。
患者さんの求める細やかさを
奥様が埋める役割を担っていらっしゃいました。
いつの間にか、私もそこをお手伝いしていました。





私自身を考えても、
変えなければとか、変えた方がよいと思っても、
自分の芯なるものは
そうそう変わるものではないことを経験しています。

その人らしさ、
その方ならではの歩み方、
人のコアになるもの、
こうしたことは、何らかの力が働いても、
変わらないものは変わらないものです。

それを大切にすることが尊重でもあり、
そのことを、その方が生きてきたように生き、
生きてきたように逝くと表現されてきました。

一見、医療者からみると
負の性格のように思われた細かさも、
奥様は、あたりまえに、
そして、自然に、
尊重されていて、
その姿勢に、私たちも原点に立ち戻ったような感覚でした。




 

奥様が話してくださいました。

「苦しそうな呼吸に見えていたのですが
 次第に間隔が長くなっていって
 あ・・と思ったとき、ふっと止まりました。」

悲しいという感情ではなく
望んでいた通りの最期に行き着いたというような
達成感にも似た瞬間だったそうです。

(つづきます)


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3 コメント

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初めまして (ふみあき)
2008-02-07 16:51:34
初めまして。
一般病院の看護師をしています。認定看護師としてがんの患者さんのケアに苦労しています。
緩和ケア科を持たない病院なので、当然医師も一般臨床医のみで、がん性疼痛の薬剤もオピオイドとせいぜいNSAIDという感じで、日々戦いです。
今は育児休暇中で、復帰した後の自分の戦法を考えている時間です。
自分がいくら勉強して知識を付けても、結局は医師を納得させなければ薬は使えませんから、勉強するよりそちらの手腕の方が課題になってます。

緩和ケアに理解のある医師と働きたい・・・・・
先生のブログを見てつくづくそう感じました。

時々おじゃましに来ます。
頑張ってくださいね。
返信する
こちらこそ、はじめまして! (aruga)
2008-02-07 23:52:40
皆経験するところです。人を動かすということは大変なエネルギーがいるものです。
一方で、緩和ケアチームは支援チームですから、目標は、治療中はがん治療が上手く進んでいくことにあります。患者ー主治医関係がよりよく保てるように支援することも大切です。理想的な疼痛緩和にだけ目がいってしまい、この関係を崩してしまってはこともこもありません。育児と同じです。本当に手がかかってすみません。医師もどうか、育ててやってください。医師不足の中、超多忙な勤務医は本当によくやっていると思うのです。
返信する
そうですね (ふみあき)
2008-02-08 11:44:45
本当にそうなんです。外来こなして、病棟こなして、オペして・・・。時間足りないと思います。本当に良い医者が多いんです。今の勤務先では。普通に急性期の患者さんについてはやりやすくお互いに尊重し合ってると思うんですが、こと、がんの末期の患者さんになってしまうと・・・。何故なんでしょう??
看護師が専門的な知識を付けて論戦しに行くと身構えるというか・・・。
先生が時間なくて大変な部分を補って助け合ってると思ってるのにねぇ・・・。
これはこっちの独りよがり???

それでも私は戦います♪
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