緩和ケアは、疾病を持った患者さんやご家族の苦しさに対処してきました。
苦しさとは、何なのでしょうか。
様々な辛さは、苦痛として存在します。
この苦痛を認識し、経験することが苦悩として表現されています。
苦悩とは、
いのちや生活の質を根底から脅かす、我が身に起こった苦痛として認識される 嫌な体験
と定義されています
(J Palliat Care 10: 57-70, 1994)
こうしたものを読むと、
わかっていたつもりだった苦痛と苦悩が
実は異なることをさしていたことを
改めて認識します。
例えば、
痛みは、苦痛です。
その苦痛を、
ああ・・痛いなあ、これは病気なのかなあ、
それ何か悪いものではないかなあ、
検査に行くのは面倒だけど、
何かあったら嫌だしなぁ・・・
と、痛みを認知し、
あれこれ思いを巡らすことが
苦悩として捉えられます。
そして、苦悩は、
苦痛の強さや数によるのではなく、
それがもたらす気持ちや社会的な問題など
複雑なものに影響を受け、
その苦痛は何なのだろうという評価、
ああやっぱりこれが問題だったのだといった認識にも左右されます。
さらに、その時だけではなく、将来にさえも意味をもたらしてくることも
重要な点であると言われています。
苦痛はなさそうだから、大丈夫・・
に留まらず、
体は大丈夫でも、生きることも辛いよね、それも苦しさだよね・・
苦悩は
私達に気づきを促したり、
時に成長させてくれたりもします。
苦痛は
それをじゃまします。
立ち直るとは、つらさの中にこれからに生かされる何かを見出すこと
(J Palliat Care 10: 57-70, 1994)
( N Engl J Med 320: 844-849, 1989)
素敵な言葉だなあと思います。
でも、その立ち直るとき、痛みなどの苦痛があるとエネルギーは無くなってしまいます。
なので、緩和ケアでは、苦悩から立ち直っていくためにも
苦痛を緩和していきます。
緩和ケアのことを書きましたが、
こうしたことは、
緩和ケアという言葉に代表されるようなものではなく、
社会の中での生き辛さのようなものとも関係している、
今を生きる人々の問題を共に考えていくための
共通した大切な言葉であろうと思います。