緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

乱用予防の合剤;飲めば鎮痛薬、他の方法で使うと効かなくなる薬剤

2018年02月19日 | 教育

ナルデメジンは、
末梢性μ受容体遮断薬で、
腸管のμ受容体をブロックすることで
オピオイドの便秘を改善させます。


実は、これよりずっと古い薬剤で、
中枢性μ受容体遮断薬の
ナロキソンという薬剤がありました。

いわゆるオピオイドが効きすぎた時、
それを打ち消す効果があり、
呼吸抑制などを生じた時に
投与します。






かなり以前のことになりますが、
海外で、医療用麻薬の乱用が生じた国で、
このナロキソンとオピオイドを合剤にしたものが発売されました。

すごいなあ・・と思ったことを思い出します。

内服すると薬剤は、まず肝臓に運ばれ、
最初に代謝を受けてから
心臓に到達し、全身を回ります。

これを初回通過効果といいます。

このナロキソンは、初回通過効果が2%と大変低く、
つまり、内服すると、肝臓でほとんどが代謝されるので、
血中にはナロキソンはでなくなります。

ですから、ナロキソンを効かせたい時は、
基本的には注射薬でした。

海外での麻薬の乱用は、
飲み薬を非経口投与して死亡に至ったり、
肝臓を最初に通さないようにして
全身循環させる方法をとったり・・などといった、
使い方をする人々が出始めました。

そこで、オピオイドとナロキソンの合剤ができあがったのです。

つまり、オピオイド・ナロキソンを内服すると、
肝臓でナロキソンは代謝されてしまうので、
きちんと鎮痛薬として効いてくれます。

ところが、内服以外の方法で吸収させようとしても
ナロキソンが一緒に全身循環し、脳に到達して、
打ち消してしまうわけです。

すごいですよね。
この仕組みを知った時、薬理学って、
ホント、すごいと思いました。



こんな風にして世の中に出てきた、
オピオイド・ナロキソンの合剤ですが、
この薬剤を使うと、実は便秘が少ないことがわかってきたのです。




このオピオイド・ナロキソンとオピオイド単剤とで、
便秘を見た比較試験が何本も実施されてきました。

それらを取りまとめて、
果たして、本当にナロキソンが
便秘に効果があるだろうかと
システマティックレビューの
論文が昨年掲載されていて、中々面白かったので、
次回、その一部をご紹介してみたいと思います。

ちょうど、今週、大分で講演を依頼されているので、
そのスライドにも入れてみようと思っています。

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