ナルデメジンは、
末梢性μ受容体遮断薬で、
腸管のμ受容体をブロックすることで
オピオイドの便秘を改善させます。
実は、これよりずっと古い薬剤で、
中枢性μ受容体遮断薬の
ナロキソンという薬剤がありました。
いわゆるオピオイドが効きすぎた時、
それを打ち消す効果があり、
呼吸抑制などを生じた時に
投与します。
かなり以前のことになりますが、
海外で、医療用麻薬の乱用が生じた国で、
このナロキソンとオピオイドを合剤にしたものが発売されました。
すごいなあ・・と思ったことを思い出します。
内服すると薬剤は、まず肝臓に運ばれ、
最初に代謝を受けてから
心臓に到達し、全身を回ります。
これを初回通過効果といいます。
このナロキソンは、初回通過効果が2%と大変低く、
つまり、内服すると、肝臓でほとんどが代謝されるので、
血中にはナロキソンはでなくなります。
ですから、ナロキソンを効かせたい時は、
基本的には注射薬でした。
海外での麻薬の乱用は、
飲み薬を非経口投与して死亡に至ったり、
肝臓を最初に通さないようにして
全身循環させる方法をとったり・・などといった、
使い方をする人々が出始めました。
そこで、オピオイドとナロキソンの合剤ができあがったのです。
つまり、オピオイド・ナロキソンを内服すると、
肝臓でナロキソンは代謝されてしまうので、
きちんと鎮痛薬として効いてくれます。
ところが、内服以外の方法で吸収させようとしても
ナロキソンが一緒に全身循環し、脳に到達して、
打ち消してしまうわけです。
すごいですよね。
この仕組みを知った時、薬理学って、
ホント、すごいと思いました。
こんな風にして世の中に出てきた、
オピオイド・ナロキソンの合剤ですが、
この薬剤を使うと、実は便秘が少ないことがわかってきたのです。
このオピオイド・ナロキソンとオピオイド単剤とで、
便秘を見た比較試験が何本も実施されてきました。
それらを取りまとめて、
果たして、本当にナロキソンが
便秘に効果があるだろうかと
システマティックレビューの
論文が昨年掲載されていて、中々面白かったので、
次回、その一部をご紹介してみたいと思います。
ちょうど、今週、大分で講演を依頼されているので、
そのスライドにも入れてみようと思っています。
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