緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

患者さんの疑問(3)

2012年11月24日 | 医療

あらためて、
死ぬ・・ということだけを考えると・・
いずれ、私たちは死にます。

上智大学のアルフォンス デーケン先生は、
よく、「日本人もドイツ人も
死亡率は100%です」とおっしゃいました。

一瞬、沈黙・・に続き、笑いが起こります。
そうなんだ、その通りだ、忘れていたと。





その中にあって、
私たちは、ただ、ただ、
コツコツ今日を生きていきます。

今を自分の足取りで生きていく・・





死亡率100%なら、
今、生きていることは無駄か・・

そうは思いません。

ピーターフランクルの「夜と霧」は衝撃でした。
私達に、生きている甲斐や生きている意味などは
天から受動的に与えられているわけではなく、
自分自身が”甲斐”があると感じられる生き方をするまでである・・



そもそも、私が今、ここにいるのは、
人類の歴史からすれば、
ホンの点に過ぎず、
縦にみれば親から受け取り子にバトンをわたし
横にみれば社会の束の要素にすぎず
大それた使命を背負っているわけでもなく
今、生きていることで
役割は果たしているといえましょう・・

そんな生物的な役割に
生きた意味を彩らせるのは、
私自身に他ならないのだと思います。






先の見通しにためというより、
今をひたむきに生きる・・・

自分自身で生きる意味を持たせようと
探索し続ける姿は、
回りの人々の心を揺らし、
自然な形で手を差し伸べたいと思う・・





疾病に揺れる心から湧き出た
難しい問いかけに、
考える機会をもらいました。

Nさん、ありがとう・・
次の手術も、がんばろうね。 

(おわり)

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4 コメント

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心が穏やかになるお話をありがとうございました。 (KAYAU)
2012-11-25 00:00:40
先生の記事は、言葉がお優しいなぁ…と、改めて感じながら拝見しました。
毎日のお仕事で、自然に、患者さんにそっと寄り添い、患者さんの生きるお手伝いをするお立場のお医者様だからかなぁ…。

「生きる」ということを考える作業を始めようかと思った途端に、昨年の3月11日が来ました。
5歳になる直前の娘と、ずっと一緒にテレビを観ました。

そして今月、キリスト教プロテスタントの小学校に御縁を頂いた娘は、今、ガザの停戦に関して、小さな心で懸命に考えております。「生きること」は当たり前ではない。
ということを6歳なりに感じている娘を観ながら、私も「生きる」ことを勉強しなければ、と思う昨今です。
先生、ご多忙の中、記事をありがとうございました。
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生きること (みえママ)
2012-11-26 00:13:26
先生のお話は、いつも心にくるものがあります。すごいなぁ~と思いながら、拝見しています。

患者さんは、この人なら、と選んでお話するのだと思います。先生に出会えた患者さんは、先生だからこそ、心の底から本音をぶつけてきてくれるんだと思います。痛みをわかってくれるから、痛みの話をするし、聴いてくれるから、何でも話せる。そんな先生に出会えた患者さんがうらやましいです。
私も、患者さんとの一期一会の出会い、大切にしながら、仕事をしよう、と思う今日この頃。それと、私も、先生に出会えて、いつ患者になっても安心!
返信する
KAYAUさん (aruga)
2012-12-02 21:46:23
娘さんとのこの1年半、私たちの困難な時間を大切に感じながら歩まれる様子に、心が熱くなりました。
それにとどまらず、ガザにも心を馳せられる様子は、私も学ぶものがあります。
コメント、ありがとうございました。
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みえママさん (aruga)
2012-12-02 21:50:07
みえママさんほどのキャリアのある方から、暖かな励ましの言葉を頂くと、また、格別の喜びがあります。
本当にありがとうございました。
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