まず、一般的な嘔気・嘔吐を招くものを大別すると・・
1)中枢性:脳転移など
2)代謝性:高Ca血症、Na異常、高アンモニア血症、腎・肝障害など
3)薬剤性:抗がん剤、オピオイド投与初期など
4)トキシンによるもの:敗血症、感染症の全身反応など
5)前庭系:放射線宿酔、車酔い、オピオイド投与初期のめまいを伴うものなど
6)末梢性:脳より下の迷走神経からの刺激
(イレウス、便秘、下痢、胃腸障害、心虚血性変化、尿路結石、縦隔リンパ節や頚部リンパ節が迷走神経へ刺激を誘発している場合、など)
7)高次機能によるもの:かつて嘔吐で苦しい思いをした記憶、不安
8)原因がはっきりしないもの:ホルモンに関与する腫瘍で難治性の嘔吐を経験することがあります。何かを産生している可能性があり、4)に近い印象です。
9)悪液質:これも4)、8)に近い印象です。
個々の患者さんの状態、画像、採血データからひとつ、ひとつ消去していきます。
嘔気というと、6)を思い描いてしまいますが
実に、奥が深く
逆に、ここで病態評価ができると投与する薬剤が選択できます。
1)ステロイドや高浸透圧性のグリセオールなど
2)~4)D2受容体遮断作用を中心とした中枢性薬剤
3)5HT、ステロイド、D2遮断
5)抗ヒスタミン剤
6)プリンぺランやナウゼリンなど
完全狭窄ーイレウスには、サンドスタチン
7)抗不安薬
8)D2遮断の中枢性やステロイド
9)ステロイド、ウオッシュアウト(難しいことが大半)
一般的に分類しましたので
患者さんの個別性をもっと検討しなくてはなりませんが
ひとつの目安になります。
どんな制吐剤も効きません・・と受けた依頼。
病態として、肺がんの縦隔リンパ節の縦隔を通る迷走神経刺激と推論
アタPを投与したら、著効!
吐き続けていらした方が、
パクパク食事が取れた時には
皆で感激でした。
論文にはなりませんが、
こうした一人一人の方が教えてくれたことを
多くの方に還元できたときは
空に向かってにありがとう==って伝えています。
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頂いたコメント読ませて頂き、ああshinoさんは同じ方向を向いている方なんだ・・って感じました。
楽になったと聞くと、本当に、本当に嬉しいですよね。
ただ、私が空に向かって・・というくだりは、看取った方へのメッセージなので、元気になって退院されたのですから、さらにもっと嬉しいことですね!!
先日、後輩の消化器内科の患者さんで、難治性の嘔吐が続いている方がいて相談をうけました。
Chemoやオピオイドも使っていましたが、どうやらそれらの影響ではなさそう・・・
脳転移やイレウス・便秘、電解質異常もなし。
後輩と緩和ケアの教科書を読んで試しに抗不安薬は?と提案してみました。
後輩も『ためしに先生に相談してみます・・・』と。
実際私はカルテや看護記録しか読んでいなかったのですが、女性で年齢も比較的お若かったのも気になりました。(はっきりとした不安の訴えは聞かれていないようでしたが)
後日、後輩がソラナックスで吐き気がすっかりおさまって、退院することになったと笑顔で報告してくれました。『抗不安薬が吐き気に効くこともあるんですね!』と。
まさに空に向かってありがとう~って先生のお気持ちで、二人で喜びました!!
長くなってすみません。後輩にも先生の今回のレビューを読んでもらって、もっと勉強していこうと思います!
そのエネルギーに、感動を覚えます。
一生懸命心を砕いて、考えながら、傍らにいらっしゃることに本当に大きな意味を感じます。無力ではないと思います。Yes we can!
hirakataさん
ベリチームですか。消化が促進されて胃の動きが正常化したのでしょうか。「太田胃酸、命!」と言われた方がいらっしゃいましたが、共通するものを感じます。貴重な情報ありがとうございました。励みになります!
missyさん
繋がっていますよね。教えてもらって、支えてもらって、息づいているってこんな感じですね。日々の姿勢に同じことを感じていらっしゃるmissyさんとも、あっ繋がっているって嬉しくなりました。
分かります~。患者さんから学ぶことって大きいですよね。学ばせてもらって次の患者さんに生かす。それの繰り返し!っていつも思います。
ここに上がっていないもので経験したのは、オピオイド(大した量ではない)やH2ブロッカーなどを飲んでいる人の悪心嘔吐で、制吐剤はさまざま使っているのにしょっちゅう吐いていて、あれやこれやと考えたり調べたりして消化酵素剤(ベリチーム)を処方したところ全く吐かなくなった、吐き気もなくなったという方がいました。この方の時も嬉しかったです。それ以来頭の片隅に置いておくようにしています。