緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

切っちゃダメです。(2)貼付剤

2007年10月23日 | 医療

「えっ・・切って貼ったんですよね?
 本当にどろっと皮膚につきませんでした?」
(かなりシツコイ・・)

「つきませんでした。
 ふきとりましたから」

ふ・・ふきとったぁ~?
ついてんじゃん

ロキソプロフェンを何故半錠しか飲まないのですかって
聞いたところ、
患者さん曰く・・・
「呼吸が苦しくなるから」って
答えていました。

ちなみに、フェンタネストって麻薬です。
大量に皮膚について
広範囲な皮膚面からの吸収になると
急に血中濃度があがり
意識しないと呼吸をやすんでしまうようなことがあります。

「ゼリーみたいなのをふき取ったときに
 苦しくなったのではないですか?」

「そんなことはないです」と
この一連の受け答えは奥さん。

ご本人、ただ、下を向いていらっしゃいました。

当院の救急外来に呼吸困難感で
受診歴がありました。

これと、貼付剤との因果関係はなさそうでしたが・・

フェンタニル貼付剤は切ると中から
どろっとしたフェンタニルの薬液が出てきます。
ここには、高容量のフェンタニルが
含まれていますから
これをふき取ったりしたときに
広く皮膚に伸ばすように拭いてしまうと
皮膚からフェンタニルが
大量に吸収されてしまうことがあり
ふき取った後、熱い風呂に入ったりしたら
若干皮膚に残った薬剤が湯に溶けて
全身から吸収などということにもなりかねません。

他院からの処方とはいえ
本当に、何事もなく、よかった・・・

「捨てちゃったほうがいいですね」
と、奥さん。

うわっ、ゴミ収集の人や子供達の皮膚に
フェンタニルがついたらどうするの~
いみじくも、麻薬よ~

「いえいえ、ゴミで出さないでください。
 医療機関に持っていって処分してもらってください。
 その時に、中身が指に触れてはいけないので
 十分注意してください・・」

ふう・・他院の処方なんですけど・・
こんな話を聞き出すまで凄く時間がかかって
それから調整して、服薬指導して
1時間以上かかりました。

主治医と話し合う安定した時間のためにステロイド
肺炎予防の口腔ケアにハチアズレうがい薬
気管支拡張剤の貼付剤
いざというときのキシロカインゼリー
少量の抗生剤を処方して
鎮痛剤は
結局、ロキソプロフェンを
3回キチンと内服するよう説明しただけで
処方は手持ち薬が大量にあるようなので
それを使ってもらうこととしました。


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8 コメント

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Unknown (May)
2007-10-24 05:12:34
フェンタニルパッチを切ってしまう事ってあるのですね。

今もけっこう使う方が多いのですが、確かに切れ目?が見にくいかもしれませんね?
私も一瞬迷いますから。

こうやって聞くと、自分が分かっていても他の人もそうだとは限らない、気をつけようと思いました。
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同じ経験あります (hirakata)
2007-10-24 13:31:36
私も同じ経験があります。患者さんはほとんど動けなかったので、割としっかりしていそうな奥さんに説明をして、外来で貼る練習もしてもらって、説明の紙も手書きで書いて、フェンタニルパッチを持って帰ってもらいました。しかし次に往診した日には、切ったフェンタニルパッチが貼ってありました。うぎゃ~っ
でもなぜか、ちょうど良く効いていました。よっぽど切り方が上手だったんでしょうか。奥さんに聞いたら「間違っても切ってはいけませんよ」というのが頭に残ってたのかねえ、なんか切っちゃったんだよねえ、と言ってました。
それ以後半面貼付(私のところはビニールテープを使っています)の際は、デジカメで撮った写真に解説を書き込んだものを渡しています。
早くマトリクスタイプ(切って貼れる)が出るといいですね。
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薬剤師として (0708sy)
2007-10-24 18:15:45
同じ薬剤師として、この患者さんと奥様に大変申し訳なく思いました。第一に、処方されている薬剤についての説明すらきちんとされていない、それどころかパッチを切ってしまうなんてこと絶対にあってはなりません。これは全てお薬を患者さんに渡す際に最低限度薬剤師がしなければならない仕事だと思います。
それを怠ったために医師が大切な診察の時間に1時間以上も服薬指導に時間を割いてしまわなければならなかったなんて、こんなことでは本当に薬剤師の存在意味がなくなってしまうと感じました。
こんなことが起こらないよう薬剤師がもっと自分から医療スタッフや患者さんに自らアピールして、相談してもらえる環境をつくらないといけないと思います。
忙しいのはみんな一緒です。それが薬剤師の仕事だと思います。
この患者さんが痛みが少しでも開放されることを願っています。
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コメントありがとうございました (aruga)
2007-10-24 22:25:05
Mayさん
確かに後ろのレイヤーは分かり辛いです・・

hirakata先生
何だか、患者さんの奥さんホノボノしてます。やはり、リアルな写真などを使うのはよい方法なんですね。
でもでも、先生マトリックスタイプも基本的には切ってはだめですよね。(切れますけど・・)切った段端は薬剤が露出するので、入浴とか・・ちょっといやです・・

0708syさん
いやいや・・恐縮です。頼もしい言葉とてもありがたいです。集学的治療チームとして、どうぞ、よろしくお願いいたします!
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そんなのがあるんですね~ (マーボー)
2007-10-26 19:32:55
私の同居人は飲み薬だけでしたが、結構マイペースに飲んでいたので、こんなのだったら、やっぱり切ってしまいそうでした。



良かった~…飲み薬だけで……。
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マーボーさん、やっぱりそう感じますよね (aruga)
2007-10-26 22:59:22
このブログにお訪ねくださる中にはメーカーの方もいらっしゃるのではないかと思いますが・・・これから発売されるマトリックスタイプ、本当に、本当に、啓蒙活動しっかりとなさってくださいね。
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アスピリン喘息の可能性は? (camper)
2020-06-28 13:19:16
奈良県で内科開業医をしております。在宅で緩和医療にも手を染めております。10年以上前の記事に反応してしまいました。フェンタニルパッチを切ってドロッとした液が・・・・ありましたねぇそんな事。薬を出来るだけ減らして使いたいと言う方はおられますよね。それで、そういう時は、サランラップなどで、貼付面積を減らして調整するようにと説明していても決して切ってはいけませんと言っていても、切るひと、おられました。
所で、ロキソプロフェン1T服用すると息苦しくなるので半錠服用していた・・・・って・・・アスピリン喘息ではなかったのかなぁ??と、思ってしまいました。
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camperさん (aruga)
2020-06-28 16:31:24
こんにちは!奈良でいらっしゃるのですね。
もう発売されなくなった剤型の古い記事にコメントいただけるとは、
キャリア長くていらっしゃるのだなあと思いつつ、拝読させていただきました。

この出来事の後、ロキソプロフェン3錠/日内服して、調子はとてもよかったことを思い出します。
(気管支拡張剤開始の前の出来事として)
フェンタニルの皮膚吸収の急な増加による一時的な過量を疑っていました。

コメント、ありがとうございました!
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